月光〜SONATA for Sanzo×Hakkai〜 Op145
◆第2楽章◆
目を覚ますと、そこに三蔵がいた。
……とても心配そうな顔をして。
「三蔵……」
「八戒、気が付いたのか……」
そう言い三蔵は深く溜息を吐く。
それは……安堵の溜息……?
体中が痛くて、意識もはっきりとしなかったけど、僕は何かとても幸せだった。
あの日から二日程の時が流れていた、
敵の攻撃は僕の急所をほんの少しずれただけの所に直撃していた。
もしかしたらもう目覚めないかもしれないと医者に言われていたらしい。
でも僕はそんな事どうでもよかった。
その事で三蔵が心配してくれた事が嬉しかった。
ほとんど寝ずに僕についてくれていたと知った時がもう死んでもいいと思うぐらいに……。
僕は怪我のせいで何かおかしくなってしまったのかもしれない。
今まであれだけ悲壮しか無かったのに……。
今でもは何もかも幸せに感じられる、
三蔵が側に居てくれる。
ずっと……。
「八戒」
「なんですか?三蔵」
自然に顔が綻んでしまう。
三蔵が声をかけてくれる、それだけで。
「お前何か悩みでもあるのか?」
僕の怪我をいたわるようにそっと触れられる三蔵の手……。
「何ですか?」
その手が悩みなんてすべて吹き飛ばしてしまう。
もう何も怖くなんてない。
「お前、あの日朝から様子がおかしかったからな。
それに普通ならあんな雑魚程度にこんな怪我負わされる事もないだろう」
「そうですね……」
あの日までの僕は今とは違う。
不安が溢れて……いつも何かに怯えて。
……そんなちっぽけな僕だった。
でも今は違う。
ここに貴方がいるから。
「何か俺にできる事があるなら……」
「三蔵は優しいですね」
今までは気づかなかった。
この優しさに。
今までは気づかなかった。
この距離に。
……この近さに。
「八戒……」
少し辛そうに言う三蔵の頬にそっと手を伸ばす。
傷が引きつって激痛が走ったけれど……不思議と痛みは遠くに感じられた。
近くにあるのは貴方の暖かさだけ。
「三蔵……。
もう少ししたら話しますよ、すべて……」
この怪我が治ったら……。
僕の気持ち……すべて貴方に伝えます……。