SONATA 第一楽章(一話) Op1−1
旅の途中のいつものような夕暮れだった。
その日は次の街に着く事が出来ず、野宿する事になった。
「じゃあ、水を汲みに行って来ますね」
八戒はそう言ってジープを離れた。
別にいつもの事だった…。
だから皆、何気なく八戒を見送った。
………でも八戒はそのまま戻らなかった。
日が暮れ…夜になり…そして夜が明けても……。
それでも八戒は戻らなかった。
八戒が目を覚ますと、そこは見知らぬ実験室であった。
…身体が重い……。
手を動かそうとしたがうまく動かない。
何かに繋がれてる…?
自分の身体を見れば、そこには無数のコード。
なぜ自分はこんな所でコードに繋がれているのだろう。
記憶を探るが何も思い出せない。
そして頭痛によって思考までもが遮られる。
……一体自分はどうしたのだろう。
「………」
目の前に椅子に座り、自分に背を向けている人物がいるのに気が付く。
白衣を着ているのだろうその人物は、おそらくこの部屋の者なのだろう。
「ああ、気が付いた?」
男が八戒の様子に気付き、立ち上がる。
そして八戒に寄ると身体に付けられたコードをはずしていく。
「…ここは……一体………」
この男は一体何者なのだろうか。
そして自分は何故こんな所にいるのだろうか………。
「ここは僕の実験室だよ。ちょっと君の事が調べたかったから連れてきちゃった」
「…僕の身体を……?」
「そう…人間から妖怪になった君のその身体をね、猪悟能クン。…いや、今は猪八戒だっけ?」
「………ッ!」
何故この男は自分の過去の名を知っているのだろう…。
体中の毛が逆立つのを感じる。
男は睨みあげてくる八戒を季にもせず話を進める。
「ボクは研究をし終わったモノには興味は無いんだけど…」
男はコードを全て外すと、その手を八戒の白い頬に持っていく。
「…君はカワイイから特別にボクのペットにしてあげるよ」
その瞬間、八戒は男の手をはね除ける。
そして先程とは比べモノにならないほど鋭い目で睨みあげる。
「フ…やっぱり野性の動物を飼うには、ちゃんと調教しないとダメだね…」
男は白衣のポケットに手を入れる。
何かがポケットの中でチャリ…と音を立てた。
そしてそれを取り出すと八戒の首に巻き付けた。
…それは金の鍵を付けた首輪だった。
「これは……」
八戒はその首輪を外そうとするが、うまく力が入らない。
それどころか、どんどんと身体から力が抜けていく。
もう腕を上げることすら出来ない。
…視界が……霞む。
八戒は膝から崩れ落ちる。
薄れていく意識の中、男の声だけが妙にはっきりと響いた。
「ボクはニイ健一。今から君の御主人様だよ」
「…いや……やめて……」
ニイの手が八戒の中心をジワジワと高めていく。
着ていた服は全て脱がされ、薄暗い部屋に八戒の裸体が白く浮かび上がる。
「嫌…じゃないよね。…もっと、でしょ」
先程とは比べものにならない程八戒のモノを強く扱く。
びくん、と八戒の身体が跳ね上がる。
勃ちきった八戒自身の先端からは先走りの液体が流れ始めていた。
「ね。嫌じゃないでしょ。ああ、それとも……」
ニイはその指に先走りの液体をからめると八戒の後ろの穴にその指を差し込む。
八戒のそこは?の指を易々と飲み込んでいく。
「こっちの方が良かったのかな」
八戒の内壁は?の指を絡めつくように締め付ける。
ニイはその指を2本に増やし、内部を探るように動かす。
「や…あぁ……もう…」
八戒の腰が物欲しげに揺れる。
「『もう』…何なのかな。随分と慣れているようだけど…どうして欲しいのか言ってごらん…」
上目遣いに?を見上げる八戒に、サディスティックな笑みを向ける。
恥ずかしさのあまり八戒の瞳に涙が溜まっていく。
ニイはそんな八戒の顎を掴み、視線を外せないようにする。
「ほら、言ってごらん。『ご主人様の太くて硬いモノをボクのおしりに入れて下さい』って……」
「………」
躊躇う八戒を促すように八戒のモノを根元から一度強く扱く。
まだ一度もイかせてもらえていない八戒のモノはもう限界なぐらいに張りつめ、快楽を求めて涙を流していた。
もう精神的にも限界だった…。
八戒の口が恐る恐る、といった感じに開かれる。
「…ご主人様の……ふ…太くて…硬いモノを……ボクの…お……おしりに…いれて…下さい……」
あまりの羞恥に、八戒の瞳から大粒の涙がこぼれ頬を伝う。
「良く出来ました。ご褒美だよ」
「や……」
ニイは八戒の涙を舌で舐めあげると、その身体を裏返し、床に押しつける。
空いている右手を前に忍ばせ、八戒のモノを扱き高めていく。
「あああ……はぁ…や…もう……」
前と後ろの同時の刺激によって、八戒の嬌声が一層激しくなる。
「『ご主人様』って呼んでごらん」
そう言って、ニイは腰の動きをより速める。
もう何も考えられなくなる。
「…はぁ……ご…ごしゅじんさまぁ…」
そう言うと同時に八戒はニイの手の中に放った。
ニイは苦しそうに息をする八戒の目の前に汚れた右手を出す。
「あーあ、汚れちゃったよ。自分で舐めてキレイにしてね」
「………」
逆らうことは許されないのだ…。
八戒は震えながら自分の吐き出したものを舐めとる。
全て舐め終えるのを見届けたニイは、八戒を部屋の隅に置かれたゲージに移す。
冷たい金属の音がして鍵がかけられる。
「じゃあね。バイバイ〜」
ニイは軽く手を振ると部屋を後にした。
あっという間に部屋は静寂に包まれる。
汗をかいた身体からはどんどんと体温が奪われていく。
寒い……凍えそうなくらいに………。
でも本当に寒いのは…身体だろうか……それとも心なのだろうか……。
「悟浄…」
八戒の小さく漏らした呟きは、誰の耳にも届くことなく闇に飲み込まれていく…。
その部屋から、夜遅くまですすり泣く声が響き渡った。
「紅孩児様…ニイ博士がお呼びです」
呼び出しを受け、ニイの実験室の前まで来た紅孩児の足が止まる。
……中からわずかに漏れる嬌声。
またか……用事もないくせに………。
ニイはたびたび紅孩児を呼びつけ、くだらない話をする。
……女を抱きながら。
……その姿を紅孩児に見せながら。
一体何がしたいんだ。
半分呆れながら軽くノックをしてドアを開ける。
「…いらっしゃい……王子サマ……」
その姿を見た紅孩児は固まる。
ニイの膝の上に座るような型で抱かれている人物…。
紅孩児は自分の目を疑う。
…あれは
───
「…ああ……この子はボクの新しい子犬だよ。茶色い毛と緑の瞳がカワイイでしょう?」
そう言ってニイは茶色い髪をなで上げる。
…それはよく知っている人物。
でもこんな姿は知らない。
……いつも笑顔でそれでいて強い瞳をしている人物。
それが今…ニイの膝の上で、真っ白な顔を紅く染め…透き通るような瞳を涙でぬらし…いつも優しそうな声を発している喉から…あられもない嬌声を発している……。
こんな姿は知らない
───
その後、ニイが何を話したかなど、紅孩児の耳には全く入らなかった。
ニイの部屋を出るとすぐに飛竜で城を後にした。
……三蔵一行の元に行く為に………
紅孩児が三蔵たちの元に着く頃には、もう夜が明けていた。
息も整わぬまま三蔵達の前に立つ。
「……あいつを助けてやってくれ………。あいつを…八戒を助けてやってくれ……」
「…どういう事だ」
何故、敵である紅孩児は突然やってきてこんな事を言うのだろうか。
八戒がいなくなってからもう一週間ほど経っていた。
紅孩児の所に攫われたかもしれない、という事ももちろん考えた。
それなのにこの目の前にいるその男は、八戒を助けろと言う…。
それも随分と慌てている様子だ。
「…頼むから、あいつを……」
自分でも何故そんな行動に出たかわからなかった。
八戒が自分達の敵だということはわかっている。
八戒一人が抜けただけでも一行にとって大ダメージとなる事もわかっている。
……しかし、それよりも八戒のあのような姿を見たくない……という気持ちの方が上回っていた。
「八戒はどこにいる」
「吠登城の…ニイの所だ……」
「わかった。飛竜を借りるぞ」
紅孩児は黙って頷く。
ジープで行くよりも飛竜の方が確実に早い。
出来るだけ早く八戒を助けて欲しかった。
「行くぞ。悟浄」
「俺も行く!」
出発しようとする三蔵と悟浄に悟空がそう言う。
「ダメだ。お前はここに残っていろ」
「でも……」
何かを言おうとして悟空は途中で止める。
「わかった。でも絶対に八戒を連れて帰ってこいよ」
「八戒はどこだ」
カチャリとニイの後頭部に銃が押し当てられる。
ニイはおびえた様子もなく、両手を挙げて振り返った。
「王子様に聞いたのかい?」
「八戒はどこだと聞いている」
ニイは小さく笑い白いポケットの鍵を取り出す。
そしてそれを三蔵に向かって投げる。
「お姫様は隣の実験室だよ」
三蔵と悟浄は鍵を持つと、実験室へと走っていく。
ニイはそんな二人の姿を口の端を少しあげて見送った。
「八戒……」
真っ暗な実験室の隅に置かれているゲージの中に八戒が全裸で倒れていた。
慌てて鍵を開ける。
「八戒、しっかりしろ」
八戒の身体を揺するが少し身じろぎをするだけで意識は戻らない。
もともと白かった八戒の顔は今では青ざめているような色になっていた。
肌には、八戒が何をされていたか明確に連想させる跡がいくつも残されていた。
「……あのヤロー」
悟浄が立ち上がりニイの元に向かおうといるが三蔵がそれを止める。
「一旦戻るぞ」
「…ああ」
今の状態では八戒の身体の事の方が心配だ。
悟浄は怒りで震える拳をぎゅっと押さえる。
「…八戒……」
まだ意識の戻らない八戒の身体をそっと抱きしめる。
たった一週間で八戒の身体はかなりやせ衰えていた。
体中にみられる陵辱の跡。
八戒のされていた事を考えると胸が痛い……。
「…八戒……」
「ニイ博士……そんなに簡単にかえしてしまってよろしかったのですか?」
そんな言葉にニイは余裕の表情のまま、ゆっくりと口を開く。
「これは全てシナリオのうちだよ」
─── 楽しみはこれから……
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