私の通っていた某大学のサークル会館(ようするに各サークルの寄り合い用の建物)への道は 原生林の中を何百メートルも続いていた(いや、本当に…)。
大学内使用専用の自転車を1台置いていて、 その自転車でもって原生林を突っ走る程忙しくオーケストラ活動をしていたが、 その道をゆっくり歩くのも好きだった。 寒いときとか暑いときとかはつらいけど。
キャンパスの喧騒を離れ、 だんだん静かなのに耳が慣れてくると、 まず聞こえるのが鳥の声。 あっちで鳴き、それに応えるようにこっちで鳴き、 それに応えるように今度はそっちで…、そしてまたあっちで…。 低い声、高い声、小刻みな声、長い声…。 1匹1匹の鳥の声が違うことに気付く。 それはもう歌の中にいるようだ。
次は自転車。 本当にキャンパス内は自転車が多い。 キャンパスが広すぎるのだ。 みな忙しく走り回る。 そんな自転車が前から、後ろから…。 微妙なドップラー効果を生み出しながら走り去っていく。 前、後ろから同時に来たときのステレオ効果も楽しい。
そして、足音。 自分は周りの音を乱さないように、 なるべく足音はたてていない。 後ろから早足が近づいてくる。 前からはゆっくりな音。
カツカツカツカツ…
コッツ、コッツ、コッツ、コッツ…
私のとすれ違うゆっくりな足音、 私の少し後ろですれ違う足音、 私を追い越す急いだ足音。
2人とは限らず、 いくつもの異なった音色の足音が、 微妙なリズムを作り出し、 私をその中に誘う。
そして私も足音をたてて歩いてみる。
遠くから聴こえるトランペットの音。 サークル会館はもうすぐ。 私の足音が少し早くなる。
…と、こんな感じ(一部誇張表現あり)。 まあ、自転車はともかく、 鳥の声や足音なんていうのは結構音楽の原点なんじゃないかな、 なんて思ったりもした。 今はあんなところは近くになかなかないなぁ。 懐かしい思い出でした。