音楽の話題で「おじいさん」と「時計」とくれば、 多くの方は 「大きなのっぽの古時計〜おじいさんの時計〜♪」 という歌い出しの「大きな古時計」を思い浮かべるのではないだろうか?
もちろん、私もその中のひとりであり、 この曲は昔から大好きであった。 なんとも寂しげな歌詞ではあるが、 この切なさがたまらない。
しかし、今回の話題はこの歌ではない。 みなさんは「かえらなかった時計屋さん」という歌をご存知だろうか?
昔、「ひらけポンキッキ」でかかっていた歌なのだが…
「かえらなかった時計屋さん」
町のはずれの時計屋さんは とってもやさしいおじいさん 町一番の働き者で 朝から晩まで時計の修理 ついでにおもちゃもなおしてくれる パパがぼくらに教えてくれた おじいさん むかしは強くって 高いビルでもひとっ飛び 正義の味方だったのさ だけど今ではノラ犬と かけっこしても負けちゃうよ ある朝 大きなロボットが おじいさん探しにやってきて むかしの勝負をつけようと お店の中で大暴れ おじいさん ペコペコあやまった とくいになった大きなロボット なかまをいっぱい呼んできて わがもの顔で大騒ぎ おまわりさんも手が出ない 町のみんなの大ピンチ そこへおじいさん飛び出した 納屋から小さなカバンを出して メガネをはずしてマントをつけて 悪いロボットやっつけた 最後に大きなロボットと 一対一の大決闘だ おじいさん 力をふり絞り あいての胸にしがみつき そのまま遠くへ飛んでって 2度と帰ってこなかった 町に平和は戻ったけれど ぼくらのおもちゃは壊れたままさ |
という歌。 この歌が大好きだったという記憶はあるのだが、 覚えてたのは大まかなストーリーと3番の歌詞 「おじいさん力をふり絞り〜♪」からのみだった。 これがずっと気になってたので、 歌詞やMIDIなどが落ちていないかなぁ〜、などと探していたらなんとMP3で公開されていた (→)。
で、そこから歌詞を書き起こし、 ここで紹介して話を終わらせてもよいのだが、 せっかくなのでもう少し話を続けてみる。
たぶん、当時は意味なんか考えずに曲の勢いが好きだったのではないかと思う。 しかし、 今、改めて聴いてみると歌詞もなかなか良い。 ストーリー全体の流れと寂しいエンディングが何ともいえない。 最初にとりあげた「大きな古時計」といい、 「おじいさん」と「時計」を絡めた歌はどうしてこうもの悲しいのだろう。 そして全体的にもの悲しい割には要所要所がコミカルだ。 このコミカルさが歌を悲しいだけではない、素晴らしいものとしていると思う。
ところでこの歌だが、 正義の味方の老後という設定からして斬新なのに、 なんと職業が時計屋さん。 正義の味方を引退してから時計屋として独立するまでには紆余曲折があったことと思う。
例えば、、彼が住んでいるのは「町のはずれ」である。 元正義の味方であれば、名誉市民として町の一等地を与えられていてもおかしくないのに、である。 この辺からも、彼の引退後の苦労が想像される。 そして、時計屋となることを決め、 時計屋の修行をはじめてもさまざまな苦労があったことだろう。 元正義の味方というプライドが邪魔をすることもあったかもしれない。 まあ、それでも、今ではりっぱな時計屋のおじいさんとして第2の人生を歩んでいるわけだ。
そこへ昔やっつけたロボットが来るわけだが、 このロボットのなんと賢いことか。 執念深いだけでなく、 人間は年をとって自分は年をとらないことを知っていたのであろう。 そのときは負けたふりをしておいても数十年後ならば勝てると想像したわけだ。 幸いにも正義の味方の跡継ぎがいなかったようなので、 このロボットの目論見はうまくいくかと思われたわけだ。
なにしろおじいさん、 ロボットが現われた途端、「ペコペコとあやま」りはじめるのだ。 もう、元正義の味方のプライドも意地も感じられない。 まあそこで「とくいになっ」て「大騒ぎ」するという人間味溢れたロボットが相手なので、 力の衰えた今のおじいさんがロボットを鎮めるためには優れた戦略だったのかもしれない。 まあ、おじいさんの謀略は裏目に出てしまったわけだが。
結局おじいさんが変身セットをひっぱり出してロボットをやっつけてしまうわけだが、 なんと変身セットをしまってあった場所は納屋。 都会のお子様たちはこんな言葉を知っているのか心配になってしまう。 まあ、田舎者の私は当時から知っていたが…。 そして、おじいさんが変身した途端、 瞬殺されてしまうザコロボットたちがとても哀れになってしまう。
さて、一騎打ちの末、おじいさんはボスロボットとともにどこかに飛び去ってしまったわけだが、 2人(?)であまり人のいないところに行ったのではないだろうか?
なにしろ、 おじいさんにはもう昔のような力はない。 「力をふり絞」ったのに 「そのまま遠くへ飛んでっ」ただけということから、 おじいさんが昔のようにこのロボットを倒せないことは明らかである。 しかし、このままでは町のみんなに迷惑がかかってしまう。 ボスロボットの目的は彼一人なのだから、 おじいさんが場所を移動すれば問題は解決するのだ。
そして、誰もいない場所でゆっくり決着をつけるのだ。 おじいさんがボスロボットをかかえて飛ぶことができるのだから、 おじいさんとボスロボットとの戦力はほぼ互角と想像できる。 また、何十年も前のロボットなのだから、 耐久年数ももうギリギリ。 ここでおじいさんが少しダメージを与えるだけで、 もう、このロボットは他の人に迷惑をかけることができなくなるだろう。
ようするに「どちらが先に動けなくなるか」かつ 「勝った方もただではすまない」勝負をしに行ったのだ。
はたして、決着はどうなったのか…?
もしかするとまだ決着がつかずに今日も勝負を続けているかもしれない。 おじいさんの長寿を祈りたい。