先日、人の車を運転した。 私の車は軽なので、軽じゃないのを運転したのは結構久しぶりだ。 で、驚いたのだが、普通車(軽じゃないのをこう呼ぶことにします)って、 軽に比べて「走っている」って感覚が薄い。 つまり、静かで振動が少なくて快適ってことなのだが、 これは車を運転する上でどうなのだろう?
「よく『軽自動車は危険』って言う人がいるけど、逆なんじゃないの?」 という疑問が浮かんだ。
大きい車ほど運転してて快適だ。 しかしこれは、
「走っている」感覚が薄い → 「運転している」感覚が薄い → 安全意識がおろそか
ということなのではないか?
ここで、1999年のデータを以下に示す。
車両相互事故 | 車両単独事故 | |
---|---|---|
軽 (〜660cc) | 2.43 | 26.19 |
セダンA(〜1500cc) | 1.35 | 42.12 |
セダンB(〜2000cc) | 1.03 | 50.42 |
セダンC(2000cc〜) | 1.26 | 61.96 |
スポーツ | 1.59 | 59.77 |
ワゴン | 0.95 | 43.58 |
ミニバン | 1.48 | 43.60 |
RV | 0.92 | 48.63 |
さて、「軽は危ない」とよく言われるが、 まあ、その通り。 車両対車両だと軽自動車の死亡率は高い。 いくら衝突安全性が高まったといえ、 他の車種と比べると装甲の薄い(!?)軽自動車の死者数が多くなるのは当然といえる。 しかし、これは単に運転者1000人当たり何人が事故で死んだかというデータであり、 事故を起こしたのが誰かということとは関係ない。
そこで、車両単独事故のデータを見てみる。 これによると軽自動車の死者数は圧倒的に少ない。 また、全体的に見て、 車両単独事故による死者は車両相互事故による死者に比べて非常に多い。 そして、車両単独事故というのはほぼ完全に運転者のミスであり、 事故を起こした運転者自身の責任といえる。
不思議なことにセダンA・B・Cを見てみると、 排気量の大きな車(一般的により静か)ほど単独事故が多いことがわかる。
これはまさに、 「快適であるがゆえの緊張感のなさ」なのではないだろうか。 地面の振動すら感じることなく、 滑るように走るということの弊害なのではないだろうか。
さて、通常「車の安全性」というと、 車の中にいる人のみについて考えることが多いが、 事故を起こせば当然その相手がいる。 あたりまえなのだが、その「相手」に対する被害はどの程度なのだろう?
ここで2000年のデータを示す
対交通弱者 | 対四輪車等 | 合計 | |
---|---|---|---|
軽自動車(〜660cc) | 0.27 | 0.05 | 0.33 |
小型自動車(〜2500cc) | 0.51 | 0.15 | 0.66 |
普通自動車(2500cc〜) | 0.60 | 0.31 | 0.91 |
まあ、当然といえば当然だが、 大きな車ほど相手が死亡する確率が高い。 しかし、 軽自動車とはいえ、最近のものは800kg以上ある。 また、小型自動車の中でも最近多く走っている 1000cc〜1300ccの車は1000kg程度だ。 そして、速度が等しい場合、 重量が倍になると運動エネルギーが倍になるということを考えると、 対交通弱者での死亡率が軽と小型で比較して倍近いというのは疑問が残る。 やはりこの差は快適さを原因とする緊張感のなさの産物なのではないだろうか。
これらのデータのみで結論を出すのは早計であるということはわかっているが、 このへんで強引にまとめさせていただく。
軽自動車は普通車と比較して、走行中の快適さは低いが、 その分緊張感を保つことが出来、事故が少ないのではないか。 たぶん、 軽自動車を選ぶという人に性格の共通点もあるのだろう。 例えば、あまりスピードを出すことを好まないとか。 また、事故を起こした場合、相手に与える被害が少ない。
軽自動車を危険たらしめているのは軽自動車それ自体ではなく、 必要以上に硬い装甲をもった大きな車たちと、 その快適さにあぐらをかいて緊張感を失ってしまう運転者たちなのではないだろうか?
さてさて、軽自動車は安全といえるか、危険といえるか…。
必要なのは装甲の厚い安全な車なのではなく、 どのような車に乗っていても変わらぬ緊張感を持てることだろう。
甚だつまらない結論ではあるが。