BLACK and WHITE

〜 序章 〜





「最近さ、おチビって手塚ばっかり見てるよにゃ」

「そうだなぁ、前は手塚が越前の様子ばかりを気にしていたのに今じゃまるで逆だね。何かあったのかな?」

「まぁ、あの2日間が関係しているのは確かだな」

菊丸と河村、そして乾の会話。

練習中のリョーマの視線の先には、常に手塚がいた。

まるで手塚に穴でも開きそうなほど見つめている。

数日前に起こった出来事はテニス部内では数々の噂になっていた。

部長である手塚とリョーマ、そして副部長の大石までもが揃って部活を休んだ。

次の日には手塚とリョーマの2人が休んだ。

何があったのか知らない。

だが、知っている人物もいる。

それは顧問の竜崎と親友の大石の2人だけだ。

手塚とリョーマが休んだ日に、大石は他のメンバーから問い詰められていたが、最後まで口を開く事は無かった。

青学テニス部では部員同士の試合を原則として禁止している。

手塚は顧問の竜崎に、その規則を破ってリョーマと試合をさせて欲しいと申し込んだ。

理由を訊ねられた手塚は、己の胸の内を明かした。

そして2人は校内では無く、別の場所で試合を行った。

その結果がこれだった。どことなく察した人物もいたが、あえてそれを言葉にはしない。

「あれれ?不二、何かすっごく楽しそうだにゃ」

会話に入って来ない不二の元へ菊丸は歩み寄った。

とても楽しそうな表情を浮かべながら、皆の注目の的になっている二人を見ていたから、気になってしまっていた。

「そう?ああ、でも僕にとっては願いが叶うかもしれないから、嬉しいかもね」

「願い?不二のお願いって何?」

「ふふ、それは内緒だよ。でも、ずっとこの日が来るのを待っていたんだ」

「ふーん」

内緒にするくらいだから、余程待ち遠しい事なんだろう。

「不二が笑ってると天使みたいだよにゃ〜。ちょっと悪魔の尻尾が生えてるけど」

「面白い事を言うね、英二」

「いや、その…にゃはは〜」

冷や汗をタラリと流すと、菊丸は不二から急いで逃げた。

怖いくらいの笑みを浮かべ、不二は少し離れていながらもお互いを意識している二人を眺めていた。

「……今度こそ……僕が…」

低い声で呟いた不二の望みは、菊丸の耳には届かなかった。

綺麗な微笑みの裏に隠された不二の願い。


長い間、心の奥深い場所で眠っていた思いが頭を擡げた。



シリアスというのか痛い系というのか。
でも、最後はハッピーエンドになりますよ。