2) 細胞シートの臨床応用へ セルシード
東京女子医大の岡野光夫教授らの開発した細胞シート工学の実用化、臨床応用への道筋をつけるべく設立されたベンチャーだが、ようやく臨床応用まであと一歩のところまでこぎつけた。私は、雑誌の取材でかつておうかがいしたことがある。それからでも、10年以上になる。新しい技術が医学の分野で認められるには、いかに時間がかかるのか、痛感せざるを得ない。
・細胞シート工学とは
ポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)というポリマーは、32℃近辺で表面が疎水性から親水性に可逆的に変化する温度応答性ポリマーである。温度応答性ポリマーを培養基材にナノメートルレベルで固定化した表面(ナノバイオインターフェイス)を作製できる技術が岡野教授らの開発した細胞シート工学のキーテクノロジーである。
温度応答性ポリマーは、32℃付近以上で疎水性に、それ以下の温度では親水性となたるため、細胞培養時(37℃)では細胞が接着可能な疎水表面を維持することができ、培養後に温度を室温程度(20〜25℃)に下げることで酵素(トリプシン等)処理を行うことなく細胞を回収することができる。培養した細胞は細胞外マトリクス(ECM)を保持したまま(細胞シートとして)回収することができる。
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