あ と が き

 一冊目の『馬耳東風』を出したのが今から七年前、それで終りにするつもりだったが、また原稿がたまって二冊目 を出したくなり、『続馬耳東風』としたのが四年前、またまた原稿がたまって三冊目を出そうとしたが『続々馬耳東風』 では恰好悪いし、だいいちまた四年もしたら『続々々馬耳東風』というわけにもいかず、そこで今回はとりあえず 『馬の耳に念仏』として副題を「百面相人生」にした。
 そうしておけば、もし仏様によってこれから先も生かして頂き、原稿がたまったとしても、『続馬の耳に念仏』 とすればよいわけで、「馬の耳に風」というのも東海道中膝栗毛の中に出てくるから、あと二十年くらいは本の題名に困る ことはない。しかし仮りに命があっても自費出版ではあまりに道楽がすぎると山の神の反対に遭いそうな気がする。 まして、相手が女房ではまさか「馬の耳に念仏」というわけにはいかず、それを思うと夜もおちおち眠れないでいる。