経営姿勢が問われる新仕切価設定

     仕切価に現れる市場での実態

 

 前号では納入価を基準にして薬価引下げの対応についてみてみたが、新薬価の告示後に発表されるメーカーの仕切価が何を物語るのかを検証するため、3つのモデルを使って問題点を整理してみた。

 [モデル1

 

新P

新Y

決定される諸要因

競合度

寡占度

成長度

上市歴

ケース1

100

90.5

84.2

90.5

ケース2

50

90.5

87.3

93.5

ケース3

30

90.5

88.6

95.3

その前提条件は全て税込価格で、改正前の薬価を100、薬価引下率70%、新薬価93、対応率=TP=納入価、Y=対薬価率として表示、計算方式は前号を参照。

 対応率は「決定される諸要因」を基準にして算定される。例えば、競合が激しく寡占も低く、成長性も中程度、上市して78年以上の品目はケース1に該当する。

これと同様に、品目毎の対応率は市場性と企業による品目の位置付けよって異なってくることになる。

 [モデル2

 企業毎のシミュレーションをモデルに、プロダクトミックスの観点からみてみる。

 

ウエイト

改正前

ケース1

ケース2

ケース3

 

(%)

対Y率

▲Y率

新P価

新P価

新P価

品目群A

10

85

13

100

85

100

85

50

91.6

品目群A

60

90

8

100

90.6

50

93.9

30

95.5

品目群A

30

95

3

100

95

33

97

20

97.4

合計

100

90.5

7

100

90.5

50

93.9

30

95.7

プロダクトミックス、企業なりのトータルの対応率を品目群毎に分配した状況では、この市場価格が2年間継続するとしても、次回薬価改正でRゼロとしてみた場合、ケース1では品目A群は15%、B群は94%、C群は5%、平均では95%の薬価引下げになる。同様にケース2では平均61%、ケース3では43%の薬価ダウンとなる。市場価格は経年低下しているため、経験値としてはいずれもさらに2%ほど薬価がダウンする可能性がある。

 [モデル3

 先のモデル2について仕切価(C)に対してオンマージンを5%として試算すると次の通りになる。

 

 

ウエイト

改正前

ケース1

ケース2

ケース3

 

(%)

現C率

▲Y率

新C価

新C価

新C価

品目群A

10

81

13

100

81

100

81

50

87.0

品目群A

60

85.7

8

100

85.7

50

89.4

30

91.0

品目群A

30

90.5

3

100

90.5

33

92.4

20

92.8

合計

100

86.7

7

100

86.7

50

89.5

30

91.1

これはオンマージンを5%とした場合の仕切価であり、品目A群で現行仕切価を81%としているが、実態面では3%とか2%、あるいは納入価=仕切価としたゼロの場合もありうる。その点からみると新仕切価の読み方もかなり難しくなる。

企業がどういう選択をして仕切価を設定するかという図式は、概ね以上のモデルから推測できるはずである。

要するに対応率とは、企業が仕切価ダウンに転嫁する財源をどうするか、品目毎にそれを振り分けているのである。高仕切価が維持できるような製品構成、あるいは敢えて高仕切価を得策とするジャブ政策、それにトップ企業に右習えとする考え方など、企業の色合いが分かるのが仕切価である。また、仕切価の設定によってはアローアンスやリベートの具合を暗示させるものでもある。当然、本来はアローアンスやリベートを考慮した最終仕切価が戦略上の起点となるべきことは論を待つまでもない。

そして、告示後に卸企業に提示される仕切価が、どのような企業姿勢で決められたか明らかになる。

 卸企業にしても市場価格を睨み、他社がどう動くかをみながらユーザーへの価格提示をしていくことになる。

本来は診療報酬改定の加算状況も試算しながら、価格提示を行わなければ、価格交渉が難航することは目にみえているが、現状ではそこまでの余裕はなさそうだ。

 しかし、流通再編成が加速している現状をよく踏まえ、流通業としての自主性と機能確立の好機でもあり、慎重な対応が必要である。

それこそ、一度提示した価格は元に戻せないことを肝に銘じておくべきである。

(国際医薬品情報 2000313 )    

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