経営姿勢が問われる新仕切価設定

      仕切設定にも透明性が求められる時代に

 

 今回の薬価改正は、薬価調査で平均帝離率が95%と算出され、これを基準にR幅を一律2%、それに最低薬価の引上げとGE薬の薬価算定分を合わせた05%を差し引いた「70%」が、平均薬価引下率と決まった。

 ただ、個々品目の引下率については、厳しい緘口令で一切表に出ていない。本誌では内示薬価の緘口令についての不透明さについて指摘してきたが、官報告示が310日と従来にくらべかなり遅れそうだ。このスケジュールの遅れは診療報酬改定の最終結論がまとまらないことにもあるが、薬価引下げについてもヒアリング後かなりゴタゴタがあったといわれており、その不透明さに対する疑惑が業界内部でも深まっている。それも、前号の

「行政関連情報」で指摘した再算定問題は議論されないまま対象品目が指定され、その対象企業の一部がかなり強硬に反対したため、最終決定が遅れたともいわれている。従来の再算定ルールで対象になる品目が5品目ほどあるが、さてこれら品目がどうなったのか、不透明な「ネゴ」の実態は告示ではっきりしそうだ。

 しかし、告示が遅れても41日から新薬価が適用されるため、すでにメーカーも仕切価の設定を模索している筈である。R2%を基準にバラツキを抑えようとすれば、これまでのようなスライド率での仕切価設定では、卸企業の価格交渉がこれまでになく難航するのは必至である。そのため、ここでは納入価に対するスライド率の影響をみてみた。まず、納入価の薬価乖離率は95%のため、平均納入価率は905%だったことになる。これを

薬価に置き換えてみると、薬価が100円の品目は納入価が905円になる。この納入価905円に対)して、納入価へのスライド対応率別に、7%の薬価引下げによる新薬価を93円として、その納入価率を計算してみた。

 ケース1は、これまでの納入価905円に対して、7%の薬価引下げ分を100%スライドダウンさせた場合、新納入価は842円(905円×93%)、この納入価の対薬価率は905%(842円÷93円)になる。当然のことだが100%スライドダウンすることで、新納入価は薬価引下げ前と同じ対薬価率になる0そのため、ケース1以外の対応率では、いずれも率では値上がりすることになる。これは平均値のため絶対額では上回っていないが、小包装単位など納入価率が平均値を上回る場合は、価格では逆ザヤ現象が起きる可能性が高いのである。

 

納入価()

対応率(%)

新納入価()

対薬価率(%)

ケース1

90.5

100

84.2

90.5

ケース2

90.5

50

87.3

93.8

ケース3

90.5

30

88.6

95.2

ケース4

90.5

25

88.9

95.5

ケース5

90.5

0

90.5

97.3

 

 この納入価率は、実際に卸企業と医療機関との価格交渉の基準になるものだけに、メーカーはこれを勘案した仕切価を設定しなければならない。卸企業にしてみれば、粗利益率を最低でも8%〜9%は確保しなければやっていけないため、表中のケース1から5までのうちいずれのケースに決めるとしても、それから逆算した仕切価の設定が必要になる。当然、第一次差益マージンのほかに、リベート、アローアンスといわれる第二次差益があり、

メーカーのリベート政策如何では流通改善が逆戻りする可能性も出てきた。

 これまでR幅は薬価差益として扱われていたが、今回から「必要最小限の調整費比率」として位置付けられ、すでに薬価差としての経済的な側面はなくなっている。

そのため、メーカー各社とも独自の仕切価政策を打ち出さざるを得なくなっている。これまでのようにR幅が5%、10%とあった時は、薬価引下げ分のスライド率を最小限に抑え高仕切価を堅持することもできたが、上記の表にみられるようにケース1以外では医療機関との価格交渉が難航するのは必至で、卸企業は立ち行かなくなる。そのため、高仕切価を設定するメーカーは、第二次差益による補填を多くしなければならなくなり、それだけ価格政策が不透明になり疑惑を招くことになりかねない。

 そのため、これまでの高仕切価堅持から適正な仕切価設定、しかも目先の対応ではなく2年〜3年先を読んだ仕切価の設定、またそれをオープンに出来るような発想の転換が必要になっているため、今回の仕切価設定でメーカー各社の経営姿勢が問われることになりそうだ。

 

                                                                                   

2000228 国際医薬品情報

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