変貌する流通市場を探る
(4)物流システムの現状と将来
卸企業としての重要な機能である医薬品のユーザーへの供給をシステム化により効率的な処理を行うのが物流情報システムであることは前回でも触れた。当然、ユーザーサイドにも医薬品の管理システムがあるが、その実態がどうなっているのか探ってみた。
[SPD一院内物流]
病院内の物品物流は、SPD(Supply Processing&Distribution)といわれ、物流を管理することである。また、「院内物流」とは、病院内の物品管理機能を一元化させ、購買、在摩、現場への供給などを総合的に管理することで効率化を図るものである。
医薬品の物流には、卸と病院間における医薬品の受発注を中心にしたもの、病院内での「医薬品倉庫」までが第一段階。そして、医薬品は倉庫を経由して、病院内の病棟、医局など関連施設に流れる第二段階がある。
各病院にはこれらを総合的に管理調整する機能として「院内物流管理システム」があり、医薬品をはじめとした物品(医療機器、医療材料なども含む)の需給を把握しつつ、無駄のない効率的な発注、入荷を調整するシステムをSPDと称している。
[物品管理の探題]
病院の物品管理は、もともと医薬品などの購入・供給による在庫管理からスタートしているが、現在では定数管理、オンラインによる物品請求、さらには部門別、ドクター別の経営管理を取り入れたものから、診療行為とリンクしたシステムに変遷してきている。とくに、医業経営の悪化を背景に、部門別、ドクター別の経営管理により原価管理を主眼としたデータ管理と分析、さらには請求漏れ防止の対策などにも活用されている。
それに、これから予測される医療環境の変化、例えば医療施設機能の体系化、介護保険の導入、DRG/PPS(定額払い制)、さらに電子カルテのシステム化など、病院経営管理手法として院内物流の管理システムが扱う範囲はさらに広がり、大きな役割を担うようになる。
[lT進展と新たな応用]
コンピュータシステムには、大きく分けて二つのシステムから成り立っている。その一つがデータウェアハウスで、意志決定支援システム(DDS)専用のデーターベースであり、二つ目はマザーサーバシステムで、複数のコンピュータを有機的に連携させ、効果的に情報管理を行うシステムである。また、システムを構成するコンピュータのうち情報や資源を一元的に管理、提供する役割のコンピュータを「サーバ」、このサーバに要求をだして情報や資源を利用するコンピュータを「クライアント」といい、データ管理の中枢機能・システムである。
これを医薬品の共同購入に当てはめれば、複数の病院や調剤薬局の注文をまとめることも可能になる。さらにその応用範囲は限定された地域だけでなく全国に広げることもできる。また、他産業との連携、卸企業同志の連携などがこれからの研究テーマにもなっているが、物流ITに焦点を当てたマーケティングや経営管理が大きなテーマになっている。物流ITのシステム化が持魅力は、バリューチェーンを踏まえて文字通り「超物流」であり、魔力にも似たイノベーションの夢が無限に広がる。
〔今後の動向〕
現在、各卸企業が病院SPDのシステム提供に凌ぎを削っているが、他産業からの競合も多く蛾烈な戦いといわれている。しかも、技術は日進月歩であり3年も経てば陳腐化するため、システム提供者の投資額は労務提供も含めて相当な負担になってきている。当然、病院サイドもシステムの更新など再投資は、経営上大きな負担となってきているが、病院サイドからのインフラ整備のコンセンサスも重要になっており、病院は経営管理の原点に立って主体的に推進すべきであろう。
いままで医薬品を中心にした「院内物流」は、医薬品需要の特殊性という背景から病院個々でシステムが構築されてきたため、社会的な共通資産としてのインフラストラクチャーには馴染まないとされてきた。しかし、医療供給体制の変革、それによる医業収入の標準化が意図されているなかで、新たなインフラ整備が必要になっている。そのため、卸企業にも医薬品情報の電子標準化を睨んだマーケティング戦略が展開できれば、新たな道が
拓けてくる筈である。
2000.2.28 国際医薬品情報