変貌する通市場を探る

3)新システムによる新流通体制

 

 前回にも触れたように受発注情報を載せるネットワークが受発注のインフラストラクチャーであり、そのために汎用VANを使用する。インフラの部分は協調していくことが前提条件になるが、企業としては何処に戦略を絞り込むか、IT(情報技術)を企業戦略のなかにどこまで取り込めるかによって、その戦略価値は大きく異なってくる。いま産業界は流通業界に限らずITによって大きく変わろうとしており、経営資源の集中化、他社とは

違った戦略の構築が重要になっている。それはニーズにもとづくバリューチェーンの新機能開発であり、企業者精神の発揮を具現化するチャンスでもある。

 しかも、21世紀は、「知識、情報」が「モノ」よりもはるかに大きな価値を生む時代になるといわれているが、現状の卸企業経営を見る限り、受発注先獲得のため端末導入競争は依然として繰り広げられているものの、合理化に対するビジョンが明確に伝わってこない。 

 また、流通再編を視野に入れた場合、新ネット体制の構築は大きな課題である。すでに目の前に迫ってきているWebcomputing時代にネット体制をどうするか、これは情報通信を有効活用するための技術的な課題と同時に、これを推進する医薬品流通業のビジョンをどうするかといった視点からみると、流通再編の動向をも見据えた戦略展開が必要である。流通再編により企業規模が大きくなることで企業体質の強化が図れて、より強力な商社機

能が実現できる。現在の流通再編の動向からみると、トップ2社によりそれが実現、達成できる可能性もある。それほど、戦後50年の医薬品産業が披行成長してきた歴史は重く、真の商社機能を持つ流通業の確立は大事業といえるのである。

 こうした大事業を達成するためには、まずこれまでに構築してきたインフラ・システムをもっと有効に推進すことに加えて、ユーザーニーズに直結している流通業の強みを生かしながら、コスト削減を図る時期にきている。

 そのためには、投資効果を具体的に数値化することがポイントになる。物流経費率、EDP比率(電子情報処理)などの時系列推移による評価、また同業他社との比較により自社の位置付けを把握することが重要なのと、同時に目標とする経営改善への寄与度を測ることである。これは「卸企業は、得意先と受発注のコンピュータ化を図りながら、一方ではその得意先に毎日、というよりも1日に数回も訪問するといった非効率的な営業活動なり

配送業務がいまだに行われている。こうした非効率的な慣習から抜け出せない限り卸企業の将来はない」と漏らす業界幹部の言葉には傾聴すべきである。

 確かに、熾烈を極める販売競争が、無駄なサービス競争にまで発展させていることは事実である。しかし、先の業界幹部としては、こうした卸企業間競争、医療費抑制など医療環境の激変、それに伴う医療機関のパイイングパワー発揮などを乗り越えて、卸企業として生き残るためへの叱咤激励とも受け取れる。当然、そのためには国際標準、WebEDPなどと格好よくアドバルーンを上げてみても、新システム構築のための資金調達やネット

ワーク拡大のためのフットワークなどが求められ、掛け声だけでは実現できない。しかし、いずれは乗り越えなければならない現実だけに早急な対応が必要である。

 医療用医薬品の在庫月数が、流通改善による新流通時代に移行してからすでに7年を経過しており、7年前と比較して03カ月短縮され、1カ月以上あった在摩月数が0508カ月になっている。しかも、決算期直前などは瞬間風速的に更に下回っており、在庫月数は大幅に短縮されたが、一方では競争激化と医療機関の時を待たないニーズに対応するための緊急配送などで、物流経費率、EDP率は高負担となり収益を圧迫している。

 ここで重要性を増しているのが効率的な物流システムの構築である。物流は卸企業として重要な機能で(1)で触れたが、医薬品のユーザーへの製品供給(仕入れ、品揃え、保管、荷役、包装、輸送)をシステム化するこで、より効率的な業務を行うことが新物流情報システムに求められる機能である。物流はユーザーと直結している企業最前線のため、マーケティングの中心に物流を位置付けなければ、21世紀を目指したユーザーオリエンテッ

ドの経営戦略にはなり得ないのである。

19991227 国際医薬品情報

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