判 決 文


平成17年3月14日判決言い渡し同日原本領収 裁判所書記官 高崎雅典

平成14年(ワ)第8797号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成16年12月20日

主文

1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事案及び理由

第1 原告らの請求

省略

第2 事案の概要

 本件は,動悸や頻脈を主訴として大学病院に通院していた患者が,その後に肺高血圧症により死亡したことによつき,その相続人が,担当医師が肺高血圧症を発見するのが遅れた,肺高血圧症に伴う右心不全に禁忌の薬剤を投与した,肺高血圧症であることが判明した後に説明義務違反や転院勧告義務違反があったと主張して,病院設置者者と担当医師に対し,診療契約上の債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。

母は動くと息切れがすると言ったのです。私は陳述書に母の言ったとおり書いたのですが、裁判官は、の書面の「動悸や頻脈を主訴」を採用しています。私の陳述書は無視されています。

1 前提となる事実(争いがない)

「争いがない」なんてとんでもない。「当事者」は争いがない―動悸と頻脈を主訴としては除く―としても、「診療の経過の概要」はS医師の陳述書の丸写しです。争いがないのではなく争いがあるのです。最初からこれなのですから、後は推して知るべしです。
「診療の経過の概要」の内容は、「第3争点に対する判断 診療に関する事実経過」と同じなので、コメントは後者の方に書きます。

(1) 当事者

 被告学校法人は,東京都文京区にJ大学医学部附属J医院(以下「被告病院」という)を設置している。
 被告Sは,被告病院の循環器内科に勤務する医師である。
 岡田悦子(昭和7年9月生まれ)は平成10年12月15日から動悸と頻脈を主訴として被告病院の循環器内科に通院し,平成11年7月29日からは肺高血圧症の検査目的で入院していたが,平成11年8月31日に死亡した(当時66歳)。
 原告岡田統夫は悦子の夫,原告岡田啓子は悦子の子である。

(2) 診療経過の概要

 平成10年12月15日,悦子は,通院していた被告病院の脳神経外科からの紹介により,動悸と頻脈を主訴として,被告病院の循環器内科を受診した。担当した被告Sは,脳神経外科で検査をした心電図と胸部X線写真を見たうえ,高血圧に対して処方されているカルシウム拮抗薬のエマベリンLが動悸や頻脈の原因ではないかと判断して,降圧薬をβ遮断薬のアーチストに変更した。
 
 12月26日,悦子は,下肢の脱力感を主訴として脳神経外科の救急外来を受診し,その後,循環器内科も受診した。当直医のT医師は,心電図検査と心エコー検査,血液検査を行い,血液検査の結果からは薬剤による肝機能障害の可能性が考えられたので,降圧薬をアーチストから同じβ遮断薬のテノーミンに変更した。
 平成11年1月5日,悦子は、循環器内科を受診して,被告Sの診察を受けた。被告Sは,降圧薬をβ遮断薬に変更したことにより動悸は改善していると考えたが,薬剤による肝機能障害が否定できないため,テノーミンの服用を中止し,降圧薬は以前に処方されているエマベリンLを服用するように指示した。
 1月19日,悦子は,被告Sの診察を受けた。被告Sは,頻脈を認めたため,降圧薬をエマベリンLから再びテノーミンに変更した。
 1月26日,悦子は,全身の倦怠感などを主訴として,被告Sの診察を受けた。被告Sは,降圧薬をテノーミンから脈拍低下作用をもつカルシウム拮抗薬のヘルベッサーRに変更した。
 
 4月20日,悦子は、下肢のむくみの増強などを主訴として,被告Sの診察を受けた。被告Sは,胸部X線撮影を行ったうえ、ヘルベッサーRと利尿薬のラシックスを処方した。
 6月29日,脳神経外科から,下肢だけでなく顔面にも浮腫が目立っているとのことで診察依頼があり,被告Sが悦子を診察した。被告Sは,心エコー検査と心電図検査を行ったところ,右心系の拡大が認められ,肺高血圧症の疑いと診断した。
 7月29日,悦子は,検査目的で被告病院の循環器内科に入院し,8月4日からは呼吸器内科の兼科入院となって各種の検査や治療を受けたが,肺高血圧症の原因は不明で,病状は次第に悪化した。
 8月31日,悦子は呼吸停止に至り,午前10時21分に死亡が確認された。直接の死亡原因は肺高血圧症,その原因は不祥と診断された。
 同日に行われた病理解剖の結果,死因は慢性肺動脈血栓塞栓症と肺炎に伴う呼吸不全であり,肺高血圧症の原因は慢性肺血栓塞栓症と考えられるとの診断がされた。

2 本件の争点

 (1) 肺高血圧とこれに伴う右心不全を発見できなかった過失

 (2) β遮断薬を投与した過失

 (3) 説明義務違反,転院勧告義務違反

 (4) 原告らの損害

3 当事者の主張

 (1) 争点(1)〜(3)についての当事者の主張は,別紙「主張対比表」に記載のとおりである。

 (2) 争点(4)についての原告らの主張

   省略


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