清水義範さんの本・その内容・および感想などを。
ここでご紹介しているのは、全て講談社文庫です。


ビビンパ(解説:関川夏央)

ビビンパ/ご両家/謹賀新年/シンさん/猿取佐助/リモコン・ドラマ/
波瀾の人生/平成元年の十大ニュース/三劫無勝負/瞼のチャット


猿取佐助
はからずも、これを読むことで(ほんの少し)哲学者について詳しくなれます(笑)。
「爺・保留・猿取」で「じゃん・ぽーる・さるとる」。「灰出蛾」は「はいでっがー」。
ふりがながきっちりとふってあるので、パッと見は真っ黒ですが……。

それにしても、昔の人の読解力、おそるべし。

シンさん
清水夫妻の海外旅行記……でしょうか。それにしても、はじめの旅行先に
インドという国を選ぶなんて。斬新というか、大胆というか……(笑)。
と、いいますのも、別の本で清水先生ご本人が「インドは玄人向き」みたいなことを
書いていらしたのです。たしか。

シンさん、実在するのかどうかは判りません。
日本語が達者で、冗談がうまくて、いざというときにはとても頼りになる通訳さん。
これを読んで、私までインドに行きたくなりました。
なんか、パワーを分けてもらえそうじゃないですか(笑)。

お金物語(解説:岸本重陳)

四十五年/事の初め/貧乏な彼/他人の懐/百億万円/金色夜叉
安住の地/黄金狂い/勿体ない/命の値段/愛と希望/被相続人


事の初め
原始人が出てくる、なんとも斬新な切り口からのお話です。
『お金物語』と銘打った作品集だけあって、清水流解釈は貨幣の成り立ちにまで
行き届いています。

主人公の「ヨシンバ」さん、口ぐせがお茶目でいいです。こういうの、大好き。
「ガハハ。みんなの幸せ、オレのせい。食えば玉散る氷のやいば」
……あなたはいったい、いつ生まれなの(苦笑)。

百億万円
これは……清水さんご自身と、ご兄弟がモデルなのかな。
お金について描かれた話ではあるのですが、ついついここで出てくる幼い兄弟の
仲のよさに目が行ってしまいます。

お金ごっこ。どうでしょうね〜、これ……はじめはお買い物ごっこで、ちゃんと
お金と商品をとりかえっこしていたのが、なぜかひたすら兄弟で紙幣を作る遊びに。
将来、自分の子供がこんな遊びをしていたら私はなんて言ったらいいのかな。
……などと、少し真剣に考えてしまいました。

単位物語(解説:村上陽一郎)

小間切れ五十匁/マイナス二七三度の恋/耐え難い圧力/エネルギー下さい/円は異なもの
遥か彼方に/数えられますか/放射能がいっぱい/ほんの小手調べ/ワン・リトル・インディアン
何を基準に/ビリッとくる/1の惑星

ほんの小手調べ
本の大きさの単位についての物語です。
と同時に、俳句を少したしなむお年寄りと『歳時記』の話なんてのも絡んでいます。

……困った……。こんな本の使い方したこと、ないです(苦笑)。
この本を棚においておけば、威光で持ち主がインテリに見えますよ……か……。

ただ、年配の方への本は「活字が大きいこと」だけではなくて「軽く、持ちやすいこと」も
同じぐらい重要なのだという指摘には、はっとしました。
ラストの3行。笑えます。おすすめです(笑)。

何を基準に
偏差値やモース硬度など、厳密な意味では「単位ではないもの」について描かれています。

たとえば、映画などの評価で

 ★・・・・・・・・・・損するぞ。
 ★★・・・・・・・・お暇なら。
 ★★★・・・・・・楽しめます。
 ★★★★・・・・一食抜いてもゼヒ。


とあった場合、この「★」が正しい単位ならば「★のついた映画4本=★★★★のついた映画1本」
でなければいけないとありまして……これを読むまでこんなこと、思ったことすらありませんでした。
清水さん、なんて賢い方なんだろう。って、感動したものです。

もうひとつ、これ。人間の感情っていう測定できないものを対象にしてるところもまた
厳密にできない原因なんですよね。「★★★★」と「★」の意味が逆転した感想を持つ人も
いないとは言い切れないわけだし。

数字で表されていれば信頼できるとは限らないのだなあ、と考えさせてくれたお話です。



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