12月12日 ホムス(アラブ文化センター)
パレスチナ難民の為のジョイントコンサート
本公演は青年海外協力隊員が赴任するUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業
機関)との連携の下、行われた。シリア各地(ホムス、ハマ、ラタキア)のパレスチナ
学校生徒を招待して行う大規模な演奏会であったため、事前の準備には莫大な時
間を要したが、これら準備段階で、シリアの方々と足並みをそろえながら一つのも
のを作っていく過程も、貴重な市民交流である。
演奏会はホムス市長や多くのメディアを含む満員の800人の観客の熱気の中、
行われた。プログラムは仁のメンバーによる演奏と、各地のパレスチナ学校の子供
たちによる演奏が交互に行われ、最後に出演者全員での合奏で幕を閉じるという
内容だった。仁による演奏は、日本文化の紹介を意識した、日本音楽中心のプログ
ラムであった。多くの子供たちにとって初めて耳にする日本の音楽ではあったが、
子供たちにはむしろ好意的に受け入れられたようだった。特にリズム感のある「村
祭り」や、クラベスを使った「打楽器のための小品」は評判が良かった。
各地パレスチナ学校生徒による演奏には、日本から寄付された鍵盤ハーモニカ
の合奏も含まれていた。当初生徒たちは初めて触れる楽器に目を輝かせていたが
彼らの好奇心が3ヶ月ほどの短い練習期間で、驚くほどの成果を見せた(もちろん、
各地協力隊員の血のにじむような毎日の指導がその背景にはある)。さらに、日頃
接する機会のほとんどない各地のパレスチナ学校の生徒にとって、演奏会が交流
の場にもなった。
また、前回同様、アラブの民族楽器カーヌーン奏者のアイマード氏と尺八、さらに
ピアノも加えた「砂山」などの合奏は、聴衆にとって非常に興味深かったようだ。ア
ラブと日本の古楽器に、ピアノの音が溶け合う、、、。洋の東西を越えたコラボレー
ションは、まさに仁の目指すところであり、今回も現地の奏者と共に一つの音楽を
奏でることが出来たのは、有意義な経験であった。
カーヌーンと尺八、ピアノによる合奏
プログラム終盤はこの日のために結成されたJICAメンバーを中心とした40人
の合唱団(JKSA)による混声4部合唱のステージであった。アラブ音楽の歌はハ
ーモニーの要素は少なく、全員のユニゾン(同じ旋律を歌う方法)によって歌われ
る曲が大部分を占める。日本では毎年末になると当たり前のように流れてくるベ
ートーヴェンの第九交響曲の合唱も、ここシリアでは滅多に聞こえてこない(シリ
アの国立オーケストラが数年前に1度だけ、「第九」を演奏したことがあるという)。
そのような環境の下、混声による立体的な音楽は驚きをもって迎えられた。さらに
最後には100名の生徒も合流し、「さくらさくら」の大合唱でステージを終えた。
両者の歌声が一つに溶け合った時、互いが異なった民族であり、異なった言語を
使い、異なった習慣・文化の下に生活しているという意識は全く感じることはなかっ
た。−世界は音楽でつながる−今回のために生徒たちにプレゼントされたトレーナ
ーにはそう記されている。きっと我々以上に、彼ら子供たちは直感的にこのことを
理解しているのではないか。澄んだ彼らの歌声が、それを物語っていた。
争いの無い平和な世界を、彼らと私たちとで手を取り合って創ってゆきたい。
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