− Volkswagen Maniacs 2003 Winter −

<第一作ステッカー制作記>

1.何故ステッカー制作に関わることになったかと申しますと...

 VW個人サイト「プチチューニング」さんが中心となり、VW好きの友好促進のために、「VW好き」を示すステッカーを作ろう、ということになりました。そしてその制作にあたって、光栄にも私がステッカーのデザインを引き受けることになったのですが...。私個人としては車にステッカーなどベタベタ貼るのはあまり好まない方なので、実は初めのうちは頼まれ仕事的に(失礼)気持半分でスタートしました(笑)。でも、やっているうちに発起人の皆様に上手くおだてられ、乗せられて、気がつけばステッカーの製作まで私が担当することになっていたのでした(笑)。

 経緯はともあれ、こだわりで定評の「小技プロデュース」で(笑)デザインから製作まで一環で請け負うとなれば、ハンパなものを作るわけにはいきません(笑)。どうせやるなら、自分でも貼りたいと思うくらいのものを作ろう、ということで、「MANIACS」のステッカーにふさわしい、超マニアックな仕様のステッカーを作っちゃいました。こんな贅沢なステッカー、作っちゃって良いのでしょうか?一瞬迷いましたが、そこは「小技」の心意気で、最高級仕様での発注に踏み切ったのでした。(いいのかなあ、本当に)

2.まずは、デザイン作業から...

 デザインは、感性のもの。ちょっと考えてすんなり出てきたアイディアの方が往々にして優れたデザインで、さんざん時間を掛けて練り練ったデザインとうのはどこかムリのある、見飽きるデザインになりがちです。今回は、運良くパッとアイディアが出てきたので、初めの30分くらいでデザインの90%以上は決まってしまいました。それから、更に良くするアイディアはないかと色々考えたのですが、結局初めに出てきたデザインを超えることはなく、述べ十時間くらい掛けて残りの10%を詰めただけでした(笑)。下は、途中で出没したダメなデザインです(爆)。

 デザイン作業に使ったソフトは、何とMicrosoftパワーポイント。どこにでもある道具です。私はこの手のことは専門ではないので、イラストレータなどのデザイン用ソフトは持ってません(笑)。持ってるソフトと言えばあとは筆まめくらい。筆まめは、細かい編集作業が可能なので、どっちにしようか迷ったのですが、結局使い慣れたパワーポイントにしちゃいました。かなり安易な選択です。そのせいで、あとで版下を起こす際に、メーカーさんでデータの直接読み込みができず、版下用ソフトで再入力していただくことになってしまいました(汗)。

 大ざっぱに書いてから、色の配置や細かな寸法関係を整えるのには、かなりの時間がかかります。それが、先程言った最後の10%です。でも、ここで妥協しては行けません。べた塗り部分の大きさ、線の太さ、フォントの大きさなど、時間を掛けて色々と試しながら最適なバランスを探っていきます。途中、ボツになった案で、なかなか良かったと思うのは、艶消し黒と、艶有り黒のツートーンです。でも、最低枚数の受注が確保できそうにないので、ボツにしました。

3.次は英文チェエク、これがなかなか...

 VOLKSWAGENの文字は必ず入れるとして、その後に何と続けるかです。実は、MANIACSというのは最初から決まっていたわけではないのです。初めの候補は、某有名グループのパクリで「オタッキーズ」。でも、どうせならパクリじゃなくてオリジナリティのあるものが良かろうということで、これはパス。次は、「Enthusiasts」(エンスージアスツ)。でも、これはモロすぎて気恥ずかしいし、それにVWのような実用車に「エンスー」の言葉を使うと、テリー伊藤に怒られそうなので(笑)、これもパス。

 「マニア」はどうかと思ったのですが、これも響きが日本語的なのでボツ。・・・なんて考えているうちに、ああ、「マニアック」という言葉は確か名詞としても使えるなあ、と。辞書で調べたら、ありました。対象を示す名詞の後ろに直接つなげて使えます。意味もピッタリ。カウンタブルだから、複数形にしちゃえ、と。それで「MANIACS」となりました。あとは、カリフォルニアに住むネイティブの知人にお願いしてチェックです。・・・英語的にも大丈夫で、ステッカーの意味はちゃんと通じるようなのでなので、一安心です。

 それから、その下に書く英文です。これには手こずりました。いくつか案を作って、こんなことが言いたい、という説明をつけて、カリフォルニアに送って英英訳してもらいました。ボツにした案の中で、面白そうなのをいくつかご紹介します。

Don't feel bad, there are others like you. Normal, non-ovsessed VW drivers.
「心配要りません、ここにはあなたのように正常な人もいますから」

I have title to this VW, But, the car owns my soul.
「このVWの権利書は私が持ってるんだけど、私の魂はこの車が持ってる」

We are nuts about VW. (nuts aboutは、熱狂的なこと。それとボルトとナットのnutを掛けている)
「VWに夢中です」

Great minds think alike. I see you drive a VW too.
「類は友を呼ぶ。・・・あっ、あなたもVWですね」

I would rather be tuning my VW. (I would rather be fishing.は、典型的なアメリカのバンパーステッカーのせりふ)
「こんな所で渋滞に巻き込まれているくらいなら、家でこのVWをイジってる方がずっとマシ」 家族連れで旅行に行ったりしているときも、むしろイジってるほうがいいのに・・・という感じがにじみでて、後ろの車から笑いがとれる。・・・とのコメントでしたが、それは後ろの人がネイティブの場合だけですね。

Mechanics sold seperately. (Battery sold separately.は、電池は別売りですというときの決まり文句)
「整備士は別売りです」

 で、結局ステッカーに書いたのは、Not Obsessed with your VW? That's OK, you are still welcome. 「えっ? あなた、VWにとりつかれてないの?・・・でも、大丈夫だよ。それでも歓迎するから」という感じ。VWが大好きという感じと、それが当然のことと思っているお間抜けさが表現されていて、イイ感じ。それに、VWならみんな歓迎、という明るさが気に入り、これに決定。文字数も、ステッカーの横幅に上手くピッタリとハマりました。

4.それから材料選び、メーカーさんに相談しながら...

 一口に、ステッカーの材料と言っても、用途に応じて様々な材質があり、カラーバリエーションも豊富、グレードもピンからキリまであります。これらの中から、使用する材料を選定しないといけません。

    

 こういうことは、専門家い相談するのが一番、こちらの目的や所望のグレードを伝えて、メーカーさんに技術的なアドバイスを貰いながら、選定を進めていきます。今回は、仕事関係のメーカーさんに、全面的にご協力頂いちゃいました。まずは材質とグレードの選定。左は今回Type1,2用に選んだ、3M社製のスコッチカル・フィルムの見本帳、右はType3用に選んだ、リンテック社製のスーパーステック・フィルムの見本帳です。この中から、更に厚みやタイプを選んでいきます。

 それから、実際の材料を手で触ったりして、素材感も確認します。さらに、印刷方法、仕上げのラミネート処理など、メーカーさんのアドバイスをもらいながら、細かな仕様を決定していきました。通常、仕事ででラベル類を設計するときでも、ここまで丹念に打ち合わせはしません(笑)。今回は、いつになく念入りです。贅沢を言い放題で、決定した仕様は、考えられる限りの最高のものになってしまいました。

【VOLKSWAGEN MANIACS ステッカーの詳細仕様】

1).Type 1と 2では、ベース素材には、高級フィルム材、3M社製スコッチカル(60ミクロン)を使用します。自動車メーカーが生産時に貼るデーカールなどの素材としても、最上級のものです。リアウィンドウやボディなど、湾曲面への張り付けにも柔軟に追従し、しかも、3M社公称で、屋外使用×8年耐久のハイスペックです。

2).Type 3は、リンテック社製のフィルム材、スーパーステックを使用します。アルミ蒸着のミラー地とするため、ハリのあるポリエステル系の素材を適用します。また、曲面への追従性を確保するため、素材厚は25ミクロンを選定しました。

3).印刷は、機械印刷ではなくシルクスクリーン印刷を行います。通常のラベル用インキ(7ミクロン)の約3倍の膜厚(20ミクロン)があり、発色性、耐候性に優れています。黄色や赤などの色は紫外線で飛び易いのですが、シルクスクリ−ン印刷により色あせを最小限に抑えられます。

4).Type 1は、黒の素材に赤、黄を印刷するのではなく、白の素材に黒を含めて全ての色を印刷(3色刷り)します。それによって、それぞれの色にくすみがなく、完全な発色が得られます。また、Type 2はグレイ部分ののメタリック感を最大限に引き出すため、素材自体にメタリック色のスコッチカルを使用しました。

5).印刷後の表面は、ラミネート処理します。Type 1と2のラミネート材は、基材と同じく3M社製スコッチカル・クリアー(60ミクロン)を使用します。また、Type 3のラミネート材は、基材と同じリンテック社製スーパーステック・クリアー(16ミクロン)を使用します。

6).外形の四隅は、ピン角だと洗車時にスポンジが引っ掛かるなど、剥がれの原因になります。引っ掛かりを未然に防ぐため、四隅には角Rを設けました。Rの大きさは、デザインをスポイルしないように、R0.5mmとしています。また、裏面台紙には、貼り付け時の剥離用にスリット(1本)を入れてあります。

7).製作は、プロフェッショナルユース向けラベルを専門に扱うメーカーで行います。印刷品質、多色の色位置精度、カット精度などが高く、まさにプロフェッショナルクオリティです。


 これを普通に作ると、とんでもない値段になってしまい、誰も買ってくれない独りよがりな物になっちゃいます。今回はメーカーさんのご厚意で、破格のお値段でやっていただくことができました。感謝×100です。・・・ん?どなたか「職権乱用」っておっしゃいました?いえいえ、ご厚意に感謝×1000でございます。でも、もう頼めません、悪くて(まじ)。今回のロットが完売したら、増刷の予定はナシ。もしやるなら、どなたか他のメンバーに発注担当を替わってもわなきゃ(笑)・・・どっちにしろ、この仕様での増刷はムリと思われます。

 11/21追記: たくさんのお申し込みをいただき、ありがとうございます。製品の完成を待たずして、初版分の予約完売がほぼ確実となりました。このままでは、協賛サイトの皆様に申し訳ないことになってしまうし、完成写真を見てからと思っていた方もいらっしゃると思い、メーカーさんに再度お願いして増刷していただけることになりました。再びメーカーさんのご厚意によりまして、初版分と同じ仕様、同じ価格でのご提供が可能です。増刷は、今回限り・・・いかに私が厚顔でも、もう無理です(笑)。

5.次に色決めです、これまた大変で...

 印刷色は、インクのカラーサンプルの中から選定しますが、これがまた苦労しました。例えば、黄色ならレモンイエローから黄土色に近いものまで何十種類もあり、その中でオレンジがかった濃い黄色と言っても、まだ10種類くらいあります。赤も同様。濃いめのチョット渋めの赤といっても、10種類くらいの候補が出てきます。

 写真の上の方はPANTONE(パントーン)というインクメーカーのカラーサンプル、黒地に並べてあるのが、DICと呼ばれている大日本印刷のカラーサンプルです。例えばType1なら、サンプルの中から、ドイツ国旗の色に近い色を選んで、その中から赤と黄のバランスや、黒に対して浮かないかを確認していき、ハデすぎず沈まない、丁度良いバランスの色を探していきます。微妙すぎて、じっと見ていると「どれでも良いかな」という気さえしてきますが、そこは妥協せず、最も良いバランスをみつけ出しました。ご参考までに、赤はDICの196番、黄色はDICの206番です。

 色を選んだら、その番号をメーカーに伝えれば基本的にOKなのですが、カラーサンプルは、サンプル自体の印刷版数によってほんの微妙に色が違ってくることがあります。今回、たまたまメーカーさんが所有していたサンプル帳の中に、私の使ったのと同じ版数の物がなかったので、サンプルチップの現物を送って、色合わせをしてもらうことにしました。せっかく最善のバランスを選んだのですから、ここは面倒でも万全を期します。

6.そんでもってサイズ決めです...

 サイズは、かなり重要な要素です。例えばType1の場合、全体の幅を小さくし過ぎると、国旗に似せた部分が貧弱になって、安っぽい印象になってしまいます。逆に大きすぎると、どこに貼るんだ?という感じで、車に対して不釣り合いになってきます。

    

 そのあたりの最適値を探るため、実際に紙をいろいろな大きさに切って、車のいろんな場所にあてがってみて、大きさを決めていきます。Type1,2は同じ大きさに作ろうと決めていましたが、それを16.6cmにするか、17.4cmにするか、最後まで迷いました。大きい方が立派に見えて良いのですが、ちょっと主張しすぎの感じ。結局、車に貼った状態でのバランスという点で、16.6cmを採用しました。

 Type3は、ミラー地なので、ステッカー全体が目立つはずです。大きく作りすぎると、かえって安っぽいものになってしまいます。適度に引き締まって見える大きさということで、12.86cmにしました。小数点2桁のハンパ数字がついているのは、縦横比の割り算の関係です。ひとつの狙いは、GOLFのロゴの下に貼った際に、ロゴと同じ横幅に見えるようになっています。