9.サイドスカート装着 (1/5ページ)

 ゴルフ4の外装は、付け加えたようなプレスラインがほとんどなく、シンプルな面で構成されています。また、理詰めで均整が取れていて、面やラインの繋がりに不自然なところがありません。その中で、唯一不自然だと私が感じたのは、ボディ下端のラインが前から後ろまで綺麗につながっていないことです。概略は、7項のリアスカートのところで説明してありますが、前から後ろにかけての下端ラインがタイヤハウスを境に段差になってしまっています(VWは、もともとこの辺りをあまり気にしない傾向にあります)。

 じつは、ゴルフ4の外装デザインの中で、珍しく明確なプレスラインを使った表現があります。それはドアの下部です。これは、ボディサイドの下端にハイライトを入れることで視覚的な重心を下げる効果をもたらしており、同時にドア面を下に向かって絞り込んで面に張りを持たせることとロッカーパネル部分を張り出させて踏ん張り感を表現することを両立させるための辻褄合わせでもあります。

 このデザイン手法はゴルフ3にはなかったものですが、ゴルフ4以降のVW車には共通的に取り入れられています。このプレスラインのハイライトは直線的かつ強烈で、見ようによってはややわざとらしい感じもあります。R32では、このキャラクターラインとの繋がりを意識して前後バンパー下部にも出っ張りを設けてあるし、ゴルフ5ではこのラインはもう少し緩やかな面構成に改められてボディ全体とのバランスをより高めているようです。

 ゴルフ4のドア下部のプレスラインは、ある種の誤魔化しというか、毒をもって毒を征するようなデザインテクニックであり、下端のラインをあえて綺麗につなげない代わりにこのキャラクターラインで視覚的なバランスを取っています。その辺りを考慮して、尚かつノーマルのリップをそのまま使う前提でサイドスカートの選定するとなると、サイドスカートはできるだけシンプルなものが欲しくなります。余計なキャラクターラインがなく、張り出し感もないものということで、候補は、純正オプションのボーラ用に(最近はゴルフ用にも)指定されているVOTEX製のもの(上写真)か、RBG製のものくらいに絞られてきます。

 両者を雑誌の写真などで見比べると、VOTEX製のものは下方向への厚み感はほどほどで良い感じですが、横方向への張り出しが僅かにあり、かつ微妙なキャラクターラインが入っています。一方RBG製は余計なラインが皆無で、横への張り出しもほとんどない理想的な形状なのですが、下方向への厚みは僅かに過ぎる感もあります。下端のラインは、VOTEX製のものは直線的でマジメ風ですが、RBGのものは微妙にセンター付近が絞られて弓なりになっており、色気を感じさせます。4モーションリップと合わせるならVOTEX、ノーマルリップと合わせるならRBGという感じでしょうか。私はノーマルリップを前提にしていますし、シンプルさと色気を買って、RBGを選択してみました。

 っで、決心を固めて、部品を横浜のオートブレインで注文したのですが、注文の際に社長からひとこと、「RBGはフィッティングに苦労するかもしれないけど、文句言わないでね」と釘を刺されました。・・・のっけから、かなり不安に。でも、そこは気合いで注文を入れて、待つことおよそ2週間。受け取って家に帰って出してみると、成形は良くできており、表面も綺麗で、製造品質はなかなかのものです。この時点では、まさかその先あれほどの苦労をするとは全く思いませんでした(笑)。

    

 っで、早速あてがってみると、ボディへのフィッティングはパーフェクトではありませんが、まあ何とかなるでしょうというレベル。75点はあげられそうです。形状は、やはり下方向への厚みが過ぎる感じがありますが、これは色が白いせいもあるので、塗装すればそこそこのバランスになるはず。さらに、取り付け角度を調整して、横方向に張り出さないようにすれば、下方向への厚みも丁度良く見えてくるといった感じです。ところが、細かく見ていくと、形状にどうもおかしなところがあります。それに左右をじっくり見比べると、対称形状ではありません。

    

 真ん中付近の絞りから、前後にかけてフレアーしていく部分の形状に、おかしなムクミがあり、わたしとしてはチョット気に入りません。これが左右対称ならそういう形だという理解もできますが、左は右よりもムクミが大きく三次元的に歪んでいるという状況。黄色でマーキングした部分が無用なムクミです。これはチョット看過できないレベルです。購入したパーツをいきなり削り込むのは勇気が要りますが、かといってこのままでは装着したくないという感じ。やはりここは修正するしかありません。しかし、削り量はおそらく1mmや2mmでは済まないので、そのまま削ったら求める形状になる前に穴が開いてしまいそうです。

    

 穴を開けないために、まずはFRPキットを購入。FRPキットはネットオークション等でもいろいろなタイプが出ていますが、お奨めはイソシアネートとパラフィンが別々になっているタイプです。パラフィン有りをインパラ、パラフィン無しをノンパラと言いますが、その両方を作ることができるからです。調合は、ポリエステル樹脂を重量で量って、イソシアネートとパラフィンはスポイトで体積で測って入れます。

 完全硬化に必要なのはイソシアネート1%以上ですが、慣れないうちはギリギリの1.1〜1.2%くらいを狙って混合するのがお奨めです。だいたい、100グラムに対して、1.1cc〜1.2ccくらいの感じです。この調合比率は非常に微妙で、2%も入れたら、驚くほどの速さで硬化してしまいます。硬化が遅い分には作業時間がかかるだけで、急ぎたければ熱を掛けるなどの対処がありますが、硬化が早すぎると全てがパーになる可能性があるので、要注意です。

 FRPを貼り付けるヶ所は、あらかじめ下地を削って、粗面作っておきます。これは物理的な食い付きを確保するためだけでなく、表面に浮いているパラフィンを除去する必要があるからです。樹脂を何回かに分けて調合する場合は、初めノンパラで調合して積層して、最後の1回だけをインパラで調合するのが良いようです。私自身も、本格的なFRPは初めてでしたので、本当の作業中は写真を撮る余裕がありませんでした。

    

 っで、表側から削る部分を、FRPで裏打ちしておきます。それが完全に硬化したら、表からグラインダーやらヤスリを使って削っていきます。写真で見ると、チョット削ったという感じに見えますが、実際には面積も広くて、削り深さも一番深いところでは3〜4mmにもなるので、かなりのものです。しかも、削った面が最終的に外観面になるので、余計な歪みをつくらないように、滑らかに面をつなげないといけないので、かなり大変でした。

    

 上の写真は、ほぼ気に入る形状にまで削って修正した状態です。前側、後ろ側ともにフレアーしていく部分を削っており、とくに左の後ろ側は相当の量を削りました。削って表面のゲルコート層がなくなってしまった部分は、塗装前の下地処理に若干手間を掛ける必要があります。でも、これで形状修正が済んで一段落、とこの時点では思ったのですが、大間違いでした。まだまだ、これからが果てしない戦いに...。

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