(このページは、2004.03に書き下ろしたものです)

16.乗り心地について(その3)

 ゴルフ4GTI(01)の具体的な乗り心地については、1項「足まわりについて」の中で簡単に触れましたが、私の第一印象はあまり良くありませんでした。まず、車輪が重くてブルルンと収まり悪く振動する感じで、加えて、低速ではゴツゴツとした当たりの硬さがあり、その割に速度を上げていくとフワフワと締まりが足りない感じです。私の好みから言えば、明らかにダンピング不足。バネが硬めの割にはショックが柔らか過ぎるという感じです。また、ショックの初期作動性も良くないと見えて、フリクション(摩擦)のためにゴワゴワとした感じの細かな振動を伝えてしまっている感じです。

 前後左右の揺れについて見れば、ピッチング方向の揺れはホイールベースが短い割にそれを感じさせない落ち着いた乗り心地で、ほぼ文句なしです。しかし横揺れについては、例のステアリングを切った途端にグラリとくるロール感が強く感じられ、乗り心地としてみても不快です。また、通常走行時にも路面からの入力でドライバーの頭が左右に振られる感覚があり、私は不快に感じました。これは低速から中高速まで、路面の良くないところでは常に感じられます。しかも、その横揺れはゆっくりのリズムでユサユサと揺れるのではなく、速めのリズムでグイグイと揺すられる感じです。その上、振動の収まりも悪く、オーバーシュートしてからお釣りがくるような揺れであるため、余計にイヤな感じです。

 そうした乗り心地から推察されるのは、スタビライザーがノーマル状態でも既にやたらと固めてあるということです。ロールセンターの解析と合わせれば、ロールセンターを低めてロールモーメントが増えた分を、スタビで抑えこもうという意図が感じられます。おそらく、市販車のノーマル状態としては異例なほどにスタビを固めてあるのだろうと感じました。ロール方向の動きに対する反発力は、バネの硬さにスタビの硬さが加算されるので、バネとのバランスだけでも軟弱過ぎるショックは、この強烈なスタビの効果までを考えるとまるっきり役不足という感じです。その結果が、ロールモーションのオーバーシュートとお釣りになって現れているものと思われます。

 乗り心地面からの推察を総合すると、バネはやや硬めな感があるものの、まあ丁度良いかなあという感じ。スタビはバネに対しても硬すぎてバランスが悪く、ショックに対しては完全に勝ちすぎている感じです。ショックはバネに対して軟らかすぎで、スタビまでを考えたらまるっきり役不足です。乗り心地全体としては、ズシンとくる突き上げ感はこんなもんで限界。バネはこれ以上硬いと不快になるだろうという感じ。一方、脳天にカツーンと突き抜けるような突き上げ感はほとんどなく、ガサガサとした粗ささえなければ、ショックはもっと引き締めても問題なさそうです。

 そこから導き出されるセッティングの方向は、バネはほんのチョットだけ硬くする程度、スタビはそのまま、ショックは大幅に固める、という方向です。縦揺れに対してはバネよりもショックが勝っているくらいにセッティングしてやらないと、不快な横揺れのお釣りが納まらないだろうという感じです。しかも、ショックはできるだけフリクションが少なく、初期作動性の良好なものが好ましいと思われます。この方向性は、サスペンションの解析から導き出される結果や、ハンドリングから推察できることと良く一致します。っというわけで、私は確信を持って硬めのショックを選ぶことになったのですが、その詳細は本編で...。

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