(このページは、2002.5 HP開設にあたって書いたものです)
1.足まわりについて
足まわりのセッティングは、操縦性と乗り心地が相反すると言われます。でも、自分なりのイメージが明確なら、この折り合いをつけるのは、それほど難しくないように思います。むしろ相反しているのは、機能面とスタイリングです。足まわりについて真面目に考えれば考えるほど、この折り合いをつけるのは大変な作業です。例えば、スタイリングを重視する場合、ホイールを18インチくらいの大口径にしたり、オフセットもツライチにしたくなってきます。タイヤも太い方がいいでしょう。当然、車高も下げて、例えばゴルフGTIの場合なら30〜40mmくらい下げたくなるかもしれません。あるいは、リム幅を8.5Jとか太めにして、215サイズくらいのタイヤを引っ張り気味に入れるとよりワイド感が協調されるかもしれません。しかし、このようなセッティングは、操縦性とか乗り心地などの機能面から考えると、最適の値ではないようです。
雑誌の記事で、「COXは、ロードクリアランスを確保するために、車高をあまり落とさないセッティングにしている」という表現を目にしました。COXは確かにロードクリアランスのことも気にしたかも知れませんが、主たる理由は別にあるようです。COX自身のコマーシャル資料によれば、その理由は、サスペンションの機能を重視するために、ジオメトリを適正な範囲内に留めたかったからだそうです。ジオメトリとは、サスペンションがストロークする際に、ボディに対してホイールがどのような奇跡を辿って動くか、という機構学的な要素です。路面側を基準に考えれば、ボディが路面に対して、上下左右やひねり(ロール、ヨー)方向にどのように動くかということになります。車高やオフセットを変えるとジオメトリが変化し、ボディの動き方が変わってきます。もちろん、ノーマルのジオメトリこそが最高だというわけではありませんが、機能面を追求すれば、スタイリングとは相容れないこともあるわけです。
また、機能優先で足まわりをイジると言っても、ノーマルで乗って不満がなければ、そのままで良いわけです。トヨタのクラウンに乗って「フワついている」と感じる人もいれば、「最高の乗り心地」と感じる人もいるでしょう。GTIの乗り心地についての私の感想は、当初バネ下が重く感じられ、前輪がバタバタ、ブルルン、と収まり悪く振動する感じがしました。しかしこれはタイヤが新品のせいも大きかったようで、千キロくらいでだいぶ良くなりました。あとは、ゴツゴツとした当たりの硬さ。空気圧をやや高めにしていた関係もあり、このゴツゴツ感は距離を走っても納得がいくほどには改善されませんでした。また、低速でゴツゴツする割には速度を上げていくとフワフワと締まりが足りない感じもあります。
操縦性についても、ちょっと閉口する場面がありました。とくに首都高速など(法定速度以内)で、ステアリングの切り始めに車体がグラリと傾く感覚は、慣れるまで恐怖でした。実際にはその先できちんと踏ん張るのですが、それを知るまではそのままズッコケるんじゃないかと思ったほどです。また、曲がりくねった道を走る場合には、1500mmもある幅広トレッドに205/55サイズのタイヤを履いているとは思えず、運転者の感覚としてはタイヤがもっと車体の内側にあって、タイヤの幅も狭いように錯覚します。私は運転技術が高くはないですし、この感想はグリップ限界がどうのというレベルの話ではなくて、普通に走った範囲で感じられた内容です。雑誌などでは「爪先立った」とか「ロールセンターが低い」等と表現されているようですが、この感覚は実際に所有してみて「ははん、このことを言ってるのか」とやっとわかった次第です。ゴルフの場合、全体としてはよく考えられたバランスに感心し、またほだされてしまうのですが、だからこそ、そうした微妙な違和感を取り除きたいと思ったわけです。
こうした不満を持った場合、どこかの有名チューナーがセットした足まわりキットをそのまま入れる方法が一般的かもしれません。でも、あえて自分で考えたり、オリジナリティを出してイジってみるのも、私はアリだと思います。自分の不満点が何に起因するのか、どこをどうイジったら良くなるのかを推測して、セッティングを詰めていく作業は、難しくもあり、何とも楽しい作業なわけです。私の場合、不満がわりと具体的だったので、求めるイメージも明確で、イジり甲斐もあったと言えます。詳細は本編に譲りますが、私がイジってみた範囲での極めて個人的な結論をまとめれば、以下のようになります。
まず、ホイールは操縦性優先なら17インチまでは許容範囲と思われます。トレッドはGTIのノーマルよりも8〜10mm広げたところが最適値のようです。オフセットで言えば4〜5mm外に出すということです。GTIはもともと前輪より後輪のトレッドが25mmほど狭く、後輪が内側に引っ込んでいますが、その外観を嫌って後輪だけを太くしたり外側に出した場合は操縦性が悪化します。オフセットを外に出す場合は前後ほぼ同じだけ出すのが良いようです。また、前輪の車高は、下げれば下げるほどロールセンターが下がって操縦性が悪くなるため、機能面を優先すれば車高ダウンは少な目が良いと言えます。一方後輪は車高を落としてもロールセンターが下がることはなく、下げた方がバネレートもプログレッシブに作用するため安定感が増すように感じます。20mmくらいは下げる余地がありそうです。
これらに従えば、前が広く後ろが狭い、前上がりで後ろ下がり、というスタイルになるわけです。実際に、例えばCOXのセットなどはそのような傾向にあると見受けます。しかし、やはりカッコ良くしたい気持もありますから、機能を優先しながらスタイリングの要素をどう取り入れていくかが課題になります。その辺の折り合いのつけ方が最も悩ましく、腕の見せ所(?)にもなり得るわけです。本編には、その辺りをごにょごにょとイジった経緯を紹介しています。動力系、外装、オーディオなどイジる対象は多いですが、私としては足まわりをイジるのが最も楽しく、イジる醍醐味を感じます。紆余曲折が多いながらも、自分なりには満足のいくセットに近づいきていると思っています。でも、やっぱりまだまだ紆余曲折中という感じではありますが...。
(このページに記載の内容は、個人的な所感に過ぎませんので、あらかじめご了承お願いいたします)