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 吉岡 弥生   明治4年(1871.4.29)3月10日〜昭和34年(1959) 5月22日
 医師。東京女医学校(東京女子医科大学)の創立者。

《生い立ち》
 吉岡弥生は、医師・鷲山養斉と後妻のみせを親として静岡県城東群土方村に生まれた。
 鷲山養斉は、磐田郡鎌田村の江塚玄節の相続人として生まれた。玄節は、医者兼寺子屋開業をしていた。そこから鷲山家に養子縁組をした。鷲山家は代々造り酒屋であったが、のちに川を挟んで分家した新家が醤油屋を開業した。弥生の父が養子となった鷲山家は、醤油屋であったが、医者の養斉を迎えるにあたり、醤油家業を廃止し、医業を営むことになった。以後、鷲山家といえば医者の代名詞となった。養斉の結婚相手の鷲山ひさも鷲山家の養女であった。しかも、養斉が結婚するときには既に娘・つねがいた。ひさは、肺を患って、明治2年3月に25歳で亡くなった。

 弥生の母・みせは、榛原郡萩間村の庄屋・松村の出であった。当時は丙午生まれの嫁は夫を若死させるという迷信のために、みせの婚期が遅れ、3人の幼い子持ちの後妻となった。父・養斉28歳、母・みせ24歳の見合い結婚だった。弥生を含めて7人の娘が生まれた。

 3人の幼児とは、弥生と異母兄弟の長兄・謙作(元治元年・1864年生まれ)と次兄・秋太郎(慶應3年・1867年生まれ)、そして両親とも異なる姉のつねである。下は、千年世、松枝、との、さじ、教、八末の妹である。

《医師を目指す》
 明治22年(1889)地元の小学校卒業後、医師を志して上京。本郷湯島の済生学舎に入学した。
 その済生学舎の学友に中原篷(なかはらとま)がいた。彼女は、弥生と同じく同25年、医術開業試験に合格して、医師免許証を授与され、郷里山口県三隅村に戻り、内科、小児科、産婦人科を開業して気軽に往診し婦人会や青年会の世話をこなし、村医や学校医などもつとめた。山口県女性医師第一号として紹介され、三隅町名誉町民となっている。

《結婚》
 さて、弥生は同28年(1895)、東京至誠学院でドイツ語を学び、院長吉岡荒太と結婚。30年には東京至誠医院を開設したが、荒太が病気になり、至誠学院を閉鎖、至誠医院の経営に専念。

《登校女医学校創立》
 翌年女医のため唯一門戸を開いてきた母校済生学舎が、風紀問題と専門学校への昇格のため、女子の入学を拒否することになった。そこで、弥生は、33年(1900)、恩師長谷川泰の勧めと学業途中で済生学舎を締め出された女子学生の前途を思い、至誠医院の一室に東京女医学校を創立した。41年(1908)には第一回卒業生を女医として世に送り出した。45年には専門学校に昇格し東京女子医学専門学校となった。

 弥生はたんなる学校経営者に留まらず、すぐれた人材を見抜く能力が高かったといえよう。羽仁もと子が吉岡弥生宅で女中をしていたとき、弥生に潜在能力を認められたように、富山から上京した佐藤やいも、そうだった。羽仁もと子が吉岡弥生の使用人になっていたことは、羽仁もと子自身が自伝を書くにあたって公表したことであって、弥生自身は公言することはなかった。

 大正4年(1915)、佐藤やいは富山から上京して、弥生の創設した東京女子医学専門学校の事務所の書生となった。やいを弥生は見込んで夜学に通わせた。やいは、母校となった東京女子医学専門学校の助手から教授へと昇任。65歳で死去するまでに女医のリーダー格的存在だった。

《夫の死》
 大正11年(1922)夫・荒太を失った。
 昭和2年(1927)東京連合婦人会委員長、6年東京女医学会会長、12年教育審議会委員、14年には女性唯一の国民精神総動員中央連盟理事、17年大日本婦人会顧問、愛国婦人会評議員、大日本連合女子青年団理事長などを歴任、幅広い社会的活動に尽力した。戦後の22年教職追放処分を受け、東京女子医学専門学校校長を辞任したが、26年追放を解除され、翌年東京女子医科大学学頭に就任した。

 弥生は自ら女性にふさわしい職業としての女医の道を選び、全国から集まる入学者に医者を作るのではなくて、女医を養成するという明確な目的意識を持って教育にあたった。

 著書に『女性の出発』『婦人一般の心得』『安産と育児』などがある。

 88歳で死没。勲二等瑞宝章を受章。
出 典 『吉岡弥生傳』 『羽仁もと子14』 『女性人名』
http://www.library.pref.yamaguchi.jp/usr/siryou/tenji-old001.htm
http://www.shiseikai.or.jp/yayoi/yayoi_keireki.htm
http://www.shimashin.co.jp/13town/meisho/daitou/kinenkan/kinenkan.htm
http://www.twmu.ac.jp/TWMU/index.html