明治・大正期の看護教育者。
　日本基督教婦人矯風会の活動家としても知られている。

＜生い立ち＞
　黒羽藩家老・大関増虎の二女として、下野の国黒羽村（現在：栃木県那須郡黒羽町）に生まれる。慶応３年（１８６７）、藩主の死去により家老職を辞した父に伴い東京に移り住んだ。

　明治９年（１８７６）、同藩次席家老であった渡辺家と縁組みし、二児（六郎、しん）をもうける。しかし、一夫一妻の約束が履行されないことに立腹し、二児を連れて離婚して実家に戻った。

　明治１８年（１８８５）２７歳で牧師・植村正久の弟・正度（ﾏｻﾉﾘ）の経営する正美英学塾に学び、男女平等を説くキリスト教の教義に感銘した。同時に植村正久から看護婦になるように勧められた。植村正久の母・植村テイは上総国の漢方医・中村の娘であったことなども看護婦に関心が強かったのかもしれない。

＜受洗＞
　和は、同１９年１２月、桜井女学校付属看護婦養成所に入学した。ここで、看護邦、英学、生理解剖学、そして聖書の講義を矢嶋楫子から受けた。宣教師・ツルーから多大な影響を受け、翌２０年、東京一番町教会で植村正久から受洗した。桜井女学校付属看護婦養成所には実習のための付属病院がなかったために看護婦養成の後期一年を東京帝国大学病院に委託生としてはいり、明治２１年（１８８８）１１月に卒業し、看護婦の資格を取得した。時に３１歳であった。

　委託生時代の明治２１年４月６日、三宮八重野夫人が乳がんの手術のために入院したが、その付き添い看護婦として和が選ばれた。６日から１５日まで午前６時から午後１０時までのつとめだった。和は、大学の看護婦を代表する思い責任を省みて、和は毎朝三時に中央教会堂まで行って、天職を全うできるように祈った。薄暗い道を女の一人歩きは気味が悪いので一緒に行ってくれた友がいた。その人が広瀬（佐野）うめ子だった。
　
　和は、帝国大学付属病院外科看護婦取締となって２年間勤務した。その後、女子学院の姉妹校である新潟県の高田女学校に舎監兼伝道師として赴任し、女子教育にあたっていた。

　そのころ高田に瀬尾玄弘がいて「知命堂病院」を創設した。彼の養子・原始にその病院長になるように勧めていた。瀬尾原始は養父の勧めにしたがって、明治２４年（１８９１）高田に戻り院長に就任した。ある日、人力車に乗って往診に出かける途中で見慣れた人物に出会った。それは、大関和であった。瀬尾原始は、東京帝国大学付属第一医院で大関和を指導した医師であった。

　和がいた高田女学校は知命堂病院から３００メートルも離れていない距離にあったので、二人は、奇遇に驚きかつ喜んだ。原始は和に知命堂病院の初代看護婦長就任を懇望し、和はそれを受け入れ明治２９年（１８９６）高田を去るまで、当病院で産婆看護婦の養成所を作り、多くの看護婦産婆を養成した。

　その間、社会主義者木下尚江との結婚を断念し、女子学院時代の恩師ツルーの病気をきっかけに東京に戻り、２９年には東京看護婦会講習所の責任者となった。のち同会の会頭となる。

＜大関看護婦会の設立＞
　明治４２年１１月、神田猿楽町にキリスト教の精神に基づく愛と奉仕の心をもつ看護婦の育成をねらいとした大関看護婦会を設立した。同会は、のち神田錦町、飯田町、本郷弓町へと移転した。

　磯村春子が麹町区飯田町５町目にあった看護婦会を訪問インタビューした。ちか子が看護婦会を立ち上げた心意気が感じられる内容だ。
　当時、ちか子は４５名の看護婦を抱えていた。看護婦の立場は常に医者と進退を共にせねばならないので、病家で医者を取り替える場合に看護婦だけはそのままとの要望が出ることがある。しかし、医者の意見を伺って「貴女の御随意に」とあれば、必ず身を引くべきだ。また、看護婦同士が名誉心のためにつまらぬ争いをすることは病人に対する職務に熱心が不足しているから生じるのだと、どのような環境であれ、誠実に職務に当たることを看護婦たちに指導している。

　７４歳で死没。東京青山墓地に葬られた。　著書に『看護婦派出心得』『実地看護法』がある。