〜応用編〜
スロットルワイヤーの加工


< 能書き >

一昔前では、ヘビーチューンの領域であったBIGキャブも、
最近では当たり前?のチューニングメニューとなりました。

各チューニングメーカーなどから、ボルトオンキットなる
いわば、「ポン付け」でBIGキャブ化できる物が数多く顔をそろえて
いるのも、この状況を支えている要因の一つでは無いでしょうか?

しかしながら、このボルトオンの領域を越えて、
更に大きなキャブを求めるユーザーも少なくは無く、
ココに待ち受けるのは「インテークマニホールド」や「スロットルワイヤー」
等の、流用やワンオフ加工品のオンパレードです。

特に、スロットルワイヤーは、車輌やキャブレターによってかなり
仕様が変ってしまうので、流用がすんなり利かない類の部品です。

皆さん、一度、純正ワイヤーのタイコを切り落として芯線を抜き、
アウターを加工後に、自転車用の補修部品として
ホームセンター等で販売されている変速機ワイヤー用の
カシメタイプのスリーブを圧着して使用しているの大半の様ですが
一番の悩みの種が、「スリーブの抜け」だそうです。

弊HPへの質問のメールも例外ではなく、このワイヤーの処理に
ついての質問が後を絶ちません。

これまで、個別に対応してきましたが、
他にもお悩みの方が居らっしゃるかもしれない・・・・・?
と思い、このコンテンツを企画する事にしました。


< 目 的 >

突然やってくる「スリーブ抜け」の恐怖に毎日怯える皆さんが、
もう少し安心できると思われる方法をご紹介したいと思います。


< チョイス >

     <   チョイス   >



今回、私がチョイスしたのはコレ。

真鍮製のパイプと、ステンレス半田&フラックスです。


< 内 容 >

     <   詳細 1   >

購入したのは直径3mmのパイプです。

ホームセンターの資材コーナー等でかなりの確立で
入手する事が出来ると思います。
(ウチの近所のホームセンターでは3店舗中2店舗にありました)



このように、穴が開いています。(パイプだから当たり前だ)

ちなみに、今回の目的、圧着スリーブの変わりに溶着して
しまおうと言うのが目論見ですが、
何故に真鍮?と言うのがポイントです。

ワイヤーがステンレスの為、ステンレス半田を使用しますが、
圧着スリーブ等に使用されているアルミでは
半田が溶着しない為、ステンレス半田でも溶着可能な
材質を選定すると、手っ取り早いのが真鍮だった訳です。

その他、銅や鉄も溶着可能です。

     <   観察 1   >

今回、加工の例題になるのは、アドレス110用の
純正ワイヤーですが、
ポイント的には写真の場所になります。

上はキャブ蓋側。

下はオイルポンプ。



オイルポンプとキャブの分岐部等が該当します。



     <   観察 2   >

例えば、ノーマルキャブからPE24にする場合は
ノーマルが18φに対しPEは24φなのですから、
単純にワイヤーのストローク量は6mm増加になります。

ちなみに、PWK28ですと約10mm増という訳です。



純正品を加工する場合、インナー(ワイヤー)の長さは
長くする事は不可能なので、ストロークを増やすには、
アウターを短くする事になります。

アウターを短くした数値=インナーのストローク増 という訳です。



スロットルバルブのタイコを引っ掛ける部分の構造により
若干のズレがあるので、その辺も考慮して採寸します。


     <   工程 1   >

それでは、キャブワイヤーの分岐側を加工して見ましょう。
先ずは、どのくらいワイヤーのストローク量が増えるのか
計測してメモ等をしておきます。



採寸が完了したら、
タイコの部分をニッパーで切り落とします。



そのまま、反対側からインナー(芯線)を抜いてしまいます。


     <   工程 2   >

アウターのエンドの部分ですが、
短くする為に切り落としてしまうと無くなってしまいます。

そのままでも良いのですが、気持ち的にスッキリしません。



そこで、再利用出来るように、ライター等でエンドの部分を熱して、
ペンチなどで取り外しておきます。


     <   工程 3   >

最初に採寸した、ワイヤーのストロークを伸ばしたい分だけ
アウターを切り落とします。



その後、先ほど外したエンドの金具を再びライター等で熱して、
切り口の上に被せてしまいます。


     <   工程 4   >

エンドが付いたら、抜いたインナーをアウターに通します。

この際、エンドを溶着する際に、インナーを通す部分まで
溶かしてしまう事があるので、インナーが通り難い場合には
千枚通しのような鋭利な物で、穴を通しておくと良いでしょう。

     <   工程 5   >

ココでようやく、真鍮パイプの登場です。
真鍮パイプを約2mm鉄ノコ等でカットします。
(ニッパ−でもカット出来なくも無いですが、切り口が潰れてしまい
 インナーが通せなくなります。)



そして、インナーに通し、フラックスを含ませます。

半田付けに自信のある人は、先にお互いの部品(インナーとパイプ)
にフラックスを塗布して、薄く予備半田しておくと、効果的です。


     <   工程 6   >

フラックスを浸透させたら、半田コテでステンレス半田を
半田付けします。

この時のコツは、半田コテを当てるのと、ステンレス半田を入れる
タイミングを同時にするのではなく、
先にコテをあて、該当部を少し熱してから半田を入れると
スムーズに溶着できます。



最後に余分な部分をニッパで切り落として完成です。



< 注意事項 >

・半田付けは高温になった工具を使用します。
 火傷等には十分注意しましょう。

・半田に使用するフラックスは余計な部分等に不着させたままにしておきますと
 腐食の原因になりますので、水等で十分に洗い流しましょう。

・半田付けの温度が低く、きちんと溶着出来ていないと、
 スリーブ抜けの原因になりますので、注意しましょう。


< 使用する材料 >

・アドレス110 純正スロットルワイヤー
 ケーブルアッシ、スロットル  58300−16F00 ¥2,000-位(失念)

・HAKKO FLUX(フラックス)
・HAKKO ステンレス用はんだ 両方合わせて¥1,000-位(失念)

・真鍮パイプ3φ  1m350円


< 使用する工具 >

・ニッパ
・鉄ノコ
・半田コテ
・ラジオペンチ


< 使用するケミカル >

・特になし


< 参考文献 >

・特になし


< インプレ >

ワイヤーのタイコに関しては、ほぼ何処のメーカーも溶着を採用しており
信頼性で言えば最高峰に当たる物と思います。

実際、私もワイヤー加工においては全てこの手法を用いていますが
未だかつて、スリーブが抜けたという事は一度もありません。