vs.アドレスV125
< 能書き >
それまで、あまりメジャーでなかった原付2種の人気の火付け役となり
通勤快速という異名まで名づけられたアドレスV100。
その登場は、1991年。
度重なるマイナーチェンジはあったものの、
その人気と、完成度の高さから、他のスクーターでは類を見ない、
14年にも渡る長い期間、販売された車種でした。
そして2005年2月。 正常進化。
アドレスV100の正式後継機として
新型4ストロークエンジンを搭載したアドレスV125が発売開始となりました。
今までのトロくてパワーがないという4ストのイメージを一新、
軽量な車体とFI搭載のパワフルな新型エンジン、
スズキ特有の出来の良い駆動形で2代目通勤快速として
立派な後継機として誕生しました。
その走行性能たるや、軽量コンパクト故のボディ剛性や安定性を除いては、
ノーマルでは国産2種スクーター最強?の動力性能と謳われた
アドレス110をも超えたと言われています。
Web上でもアドレス110とV125の性能はどちらが上?という
話題はオーナー同士の間で盛んで、若干V125の方が上か?
という意見が多いようです。
実際、私も何度か遭遇し、シグナルGPになった事がありますが、
ドノーマルの時には、あっさりやられた経験をもっています。
ここでは、アドレス110とV125を、エンジン出力特性と駆動系のデーターから
どちらの動力特性が優れているかを理論的?に検証したいと思います。
< 目 的 >
アドレス110、V125の動力性能を理論的に徹底検証。
そして、宿敵?V125に勝つことは出来るのか?を考えたいと思います。
*あくまで私の主観的な見解となっていますので、
その辺をご理解して閲覧いただければと思います。
<加速に影響しそうな基本性能比較>
110 | V125 | |
最大馬力 | 10PS/6000rpm | 11.4PS/7500rpm |
最大トルク | 1.3kg・m/5500rpm | 1.2kg・m/6000rpm |
車輌重量 | 97kg | 88kg(G) |
パワーウェイトレシオ | 9.7kg/ps | 7.72kg/ps |
トルクウェイトレシオ | 74.6kg/kg・m | 73.3kg/kg・m |
エンジン性能では2ストロークの110がトルク数値こそ上ですが
それ以外は全てV125に軍配が上がります。、
パワーウェイトレシオ、トルクウェイトレシオを見てしまうと、
エンジン自体の動力性能はV125の方が上と判断するしかないでしょう。
< ノーマルの駆動系性能 >
駆動系での特性の違いを見てみましょう。
最終減速比 : | カタログ上の1次、2次減速比から割り出した、最終の減速比です。 ギアの歯数の組み合わせによって決定されます。 ハイギアを入れる等して変更することが出来ます。 |
変速比 : | プライマリー、セカンダリー、ベルト長からくる変速比です。 LOは発進時、HIは最大変速している時の変速比です。 変速比はベルトの外側基準の長さ、太さで計算し、 プーリーやフェイスが開き閉じした隙間も考慮しています。 社外プーリーや社外ベルトにより変速領域を変えることにより 変更する事ができます。 |
減速+変速 : | 上記の減速比と変速比を合わせ、LO(発進)時、HI(最大変速)時の 夫々を割り出した数値です。 LOは数値が高いほど発進時の加速が良く、 HIは数値が低いほど速度が伸びる(ハイギア)の特性になります。 |
エンジン回転数/速度 : | エンジン回転数に上記の、減速+変速のHI時を合わせ、 両車種のタイヤ外径から割り出した理論的な速度です。 走行抵抗は無視しています。 |
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 2.719 | 0.778 | 21.54 | 6.16 | 108 | 115.2 | 122.4 | 129.6 |
V125 | 8.29 | 2.681 | 0.808 | 22.24 | 6.70 | 91.5 | 97.6 | 103.7 | 109.8 |
主に、「減速+変速」での数値で駆動系の特性を測り知ることができますが、
低速側はV125に軍配、高速側では110に軍配が上がります。
一見、発進加速では負けているけれども、高速側で巻き返せるか?と見えますが
そんなに甘くありません。
エンジンの最大回転数の問題です。
ノーマルのアドレス110では、エンジンを命一杯回しても、7300〜7500rpmがやっとで、
コレは、サービスマニュアル上での走行性能曲線図をみても
私のアドレス110で実走してもほぼ同じデーターとなります。
上の表で見ると、7500rpm時の速度は理論上108km/h。
走行抵抗等を考慮すると、100〜103km/h辺りではないでしょうか。
対してV125。
私の知人がV125を購入後、データー取りの為にタコメーターを装着して走行したのですが、
その際の上限回転数は9000rpm。
走行抵抗にエンジンパワーが負けて、これ以上回らないというよりは、
レブリミッターが効いた感じだったそうです。
そのレブリミッター効く9000rpm時、V125の理論速度は109.8km/h。
若干ですが、最高速も110より速いという結果になります。
データー上での結論としてしまうと、その他に車重も考慮すると、
同じ体重、環境下で勝負した場合、加速から、最高速に至るまで、
完全にV125が速いという結果になります。完敗です、ハイ。
最高速は殆ど差がないので、小径タイヤの効果も相乗し、
スタートからジリジリ離されて、お互い伸びきりの最終段階では
差が縮まらないままといった感じになると思います。
まあ、実際に私もシグナルバトルで同じようなパターンでやられているので、
改めて納得の出来る数字になっていると感じます。
余談となりますが、110の回転数にも8000〜9000rpm時の
速度を入れておきました。
社外のスポーツマフラー、チャンバーなどを入れて上限回転が上がった場合、
ノーマルのシリンダーポートだと、8500〜9000rpmあたりまで回ります。
その際に出る最高速も参考になるので、載せておきました。
< V125に勝つには? >
これもまた、Web上でのどっちが上?論争で良く出ている内容なのですが、
「110の駆動系改だけで、十分に勝てる」と。
これは、駆動系の改造を行う、改造主のスキルや
部品によって影響する所が多いのですが、
駆動系を改造した私のアドレス110、V125がノーマルであれば、
似たような体格の人が乗っている限りでは、確かに負けることはありません。
確かに、駆動系だけ手を加えれば、体重の条件が揃うと
V125に一矢報いる事が出来るのです。
では、何を、どうすることによって、ノーマル対決で開いていた差を逆転させるのか
考えてみましょう。
< ポイントは変速比とウェイトローラー!? >
まったりとしたアドレス110。
駆動系の入門でもある、ウェイトローラーを交換した事がある人なら判ると思いますが、
アドレス110の場合、ウェイトローラーをTOTALで100g前後にすると、
加速が見違えるように良くなります。
コレだけでもV125を抜けないまでも、かなり食い下がれる様になる筈です。
後は、重い車重を更に押し出す低速の加速力と、最後の一伸びで引き離す
変速比を作るだけです。
まずはおさらいで、V125のデーターを。
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
V125 | 8.29 | 2.681 | 0.808 | 22.24 | 6.70 | 91.5 | 97.6 | 103.7 | 109.8 |
ここからは110の駆動系の部品を組み合わせて試算しています。
セカンダリー(トルクカム)は、溝の延長加工を施し、
開き側、閉じ側共に余裕のある事を前提とします。
試算@
まずはノーマルプーリー+カメのベルトで試算
カメのベルトは少し太いので、0.7mmほどボスにワッシャーを追加します。
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 3.19 | 0.807 | 25.27 | 6.39 | 104.11 | 111.1 | 118.0 | - |
ベルトが長くワッシャーで落とし込みが増えることにより、低速は良くなりますが、
ノーマルプーリーでは最大変速時に長いベルトを引っ張りきれないので、
高速側が思うように伸びて行きません。
これでは、出足でついていっても高速域で引き離されてしまいます。
試算A
次にカメベルト+カメプーリー
同じようにシムでベルトの落とし込みを調整します。
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 3.19 | 0.789 | 25.27 | 6.25 | 106.5 | 113.6 | 120.7 | - |
プーリーの移動量が増え変速域が多くなった分ハイギア効果が生まれますが
最高回転対決ではまだV125の方が3km/hほど速いです。
試算B
今度はカメより短いノーマルベルト+カメプーリー
当然、ベルトがギリギリまで落ちるようにシムの調整は行います。
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 3.05 | 0.731 | 24.19 | 5.79 | 114.9 | 122.6 | 130.26 | - |
ベルトが短い分、低速側でのギア比が甘くなりますが、高速側で引っ張りが強く
ハイギア効果が強くなるので、最高速ではV125を凌げる様になります。
LOギアでも若干110に歩がありそうですが、車重差を考えると、
互角に加速していき、高速勝負で若干前に出れる程度ではないでしょうか。
試算C
今度は、カメプーリー+カメベルト+カメZZフェイス+タイヤ100/90-12
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 3.19 | 0.736 | 25.27 | 5.83 | 117.8 | 125.6 | 133.49 | - |
ベルトが長い分、低速が試算Bに近づき、良くなります。そして、カメのZZフェイス
を使う事によって、長いベルトでも引っ張れるようになるので、
変速によるハイギア効果も得られます。
最後は、1サイズ外径アップしたタイヤで一伸びを追加です。
実際、この仕様で、V125には下から上まで負けなくなりました。
試算D
最後にモトチャンプの2008年2月号に掲載された仕様です。
カメプーリー+デイトナZZベルト+カメZZフェイス+タイヤ100/90-12
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | |||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | ||
110 | 7.92 | 3.256 | 0.68 | 25.79 | 5.39 | 127.5 | 136.0 | 144.5 | - |
特別編
SS1/32mile 参加車輌
ちょっと参考に・・・?
車種 | 最終減速比 | 変速比 | 減速+変速 | エンジン回転数/速度 | ||||||
LO | HI | LO時 | HI時 | 7500 | 8000 | 8500 | 9000 | 11000 | ||
110 | 謎 | 3.427 | 0.703 | 31.49 | 6.45 | 109 | 116.9 | 124.3 | 131.6 | 160.8 |
< インプレ >
と、まあ、私も110オーナーだけに熱く記述してしまいましたが、
やはり、駆動系だけで勝負を挑むには、それなりの手間がかかるかもしれません。
そして、対象としているV125はノーマルなのです・・・。
爆発的な人気のV125はアフターパーツの開発も各社活発で、
156ccにボアアップされ、制御系まで手を入れたV125は
それはもう相当な速さです。
コレを見た110オーナーの皆さん。
最終的に110はV125に勝てないのか・・・・
と、落胆してしまうような内容かもしれませんが、
この場では、あくまで動力性能だけでのお話で、その他にも
110には110独特の魅力があり、V125には無い別のオーナー満足感が
あると私は思います。
通勤時で遭遇して、我が物顔で前に出られたとしても、熱くならずに
時代の先端を行く2種スクーターの動力性能を称えてあげようではありませんか・・・。
(勿論、カリッカリに速い110の人は、獲物になってしまう110オーナーの為に
一矢報いて下さい・・)