スターターギアの軽量化
< 能書き >
クランク軸に直接アクセスしている皿型の物体。
一見、セルスタート用のギアだけに見えるが、それにしてはゴッツ過ぎ。
どう見ても、ギアだけの役割では無さそう。 そう、コレははずみ車に違いない!
はずみ車⇒車で言うなればフライホイールであるが、役割としては
・エンジン低回転時の安定性の維持(エンジン回転のバラツキ防止)
・ラフなスロットル操作に対するエンジン回転の安定性向上。
・巡航時のトルク維持、燃費向上。
等が主に上げられます。
が、そのために犠牲になっているものもあります。
・回転慣性による、エンジン回転上昇・降下への抵抗。
です。
コレにより、エンジン本来の加速力、アクセルレスポンス
等がスポイルされています。
本当のフライホイールはこの部品のクランク軸に対して反対側、
そう、クーリングファン側についているアウターローターです。
しかし、アウターローターを外すには、エンジンを下ろさなければ
ならないので、ちと面倒。
そんな訳で、ちと簡単なほうから手がけてみます。
ジェントルなエンジン特性のアド、もう少し
スポーツライクなエンジンにしてみたいです。
< 目 的 >
スターターギアに穴を開け、軽量化して
回転慣性を低くすることにより、
・加速力の向上
・アクセルレスポンスの向上
・加速時の燃費向上
・エンジンブレーキの強化
を狙います。
< チョイス >
< チョイス >
ドライブフェイスの手前についているこの部品です。
< 内 容 >
< 工程 @ >
まずは、クラッチカバーを外し、プーリーロックレンチで
センターナットを外して、ギア歯の付いたフライホイール?
を外します。
クラッチカバーの外し方が判らない方は↓↓↓コチラ。
クラッチカバーの外し方
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ボタンで戻ってきて下さい。
センターナットを外す際、数点のワッシャが出るので、向きや
順番を覚えておいてください。
< 工程 A >
コレが外したフライホイール。
外したては、ベルトの削れ粉塵等で汚いです。
パーツクリーナーで洗浄します。
重量を計量すると332.5gありました。
コレに穴を開けるわけですが、何処でも良いって訳でもありません。
趣旨は遠心力を低下させ回転慣性を低減させることにあるので、
なるべく外周に近い位置に穴を開けます。
歯車付近の色が違いますね。
コレは強度を上げるため「焼き」が入っているのです。
当然、硬度が上がっているので、硬い分、割れ易くなっています。
ですので、あまりスレスレには穴を開ける事は出来ません。
FW 8個穴 総重量 中身 外身 中身
外形中身
高さ中身
体積比重 開ける穴 -体積 減重量 材料
重量332.5 332.5 0 120 4 45.216 7.35 0 0 0 332.5 331.3 331.3 0 120 4 45.216 7.35 2.5 0.0196 -1.2 332.5 327.9 327.9 0 120 4 45.216 7.35 5 0.0785 -4.6 332.5 322.1 322.1 0 120 4 45.216 7.35 7.5 0.1766 -10.4 332.5 314 314 0 120 4 45.216 7.35 10 0.314 -18.5 332.5 303.6 303.6 0 120 4 45.216 7.35 12.5 0.4906 -28.9 332.5 290.9 290.9 0 120 4 45.216 7.35 15 0.7065 -41.6 332.5 275.9 275.9 0 120 4 45.216 7.35 17.5 0.9616 -56.6 332.5 258.6 258.6 0 120 4 45.216 7.35 20 1.256 -73.9 332.5 239 239 0 120 4 45.216 7.35 22.5 1.5896 -93.5 332.5 217 217 0 120 4 45.216 7.35 25 1.9625 -115.5 332.5 192.8 192.8 0 120 4 45.216 7.35 27.5 2.3746 -139.7 332.5 166.3 166.3 0 120 4 45.216 7.35 30 2.826 -166.3 332.5 137.4 137.4 0 120 4 45.216 7.35 32.5 3.3166 -195.1 332.5 106.2 106.2 0 120 4 45.216 7.35 35 3.8465 -226.3 332.5 72.7 72.7 0 120 4 45.216 7.35 37.5 4.4156 -259.8 332.5 36.9 36.9 0 120 4 45.216 7.35 40 5.024 -295.6 332.5
コレは、フライホイールに穴を開ける為に
計算したデーターです。
試料が円錐状のため、正確な比重や体積が
計算できていませんが大体の目安になります。
強度的に残した方が良い面積を検討して、
約15Φの穴を開けることに決定しました。
表で言うと、完成後は約291gになります。
< 工程 B >
加工後の完成品です。
作業は、円錐状になっているため、
ボール版(ドリル)では芯が逃げてしまい、穴が開けられません。
また、回転するものなので、中心や、
隣の穴との距離を均等に開けなければ変芯してしまいます。
今回は、フライスで座標計算しながら穴を開けました。
完成品を計量したところ285.5gと、まあ、
もくろみ通りの重さになりました。
ノーマル比、約15%の軽量化です。
あとは組むだけです。
< 注意事項 >
特殊工具を使用します。 工夫次第では、ドリルでも可能かと思いますが、
精度が出にくいため、お勧めできません。
また、金属部品ですのでバリがあります。
切り傷などにご注意ください。
また、穴を開けすぎますと、強度不足になり破損、分解の可能性が上昇します。
< 使用する材料 >
・ノーマルのスターターギア
・クラッチカバーのガスケット(私は剥がしたままですが・・・)
< 使用する工具 >
・M4 プラスドライバー
・インパクトドライバー
・分解能1/6000 目量0.1g デジタルスケール
・NC
< 使用するケミカル >
・パーツクリーナー
< 参考文献 >
特になし。
< インプレ >
装着後、早速走行してみました。
まずは、エンジンの始動&アイドリング。
心配した、ばらつき等はなく、安定しています。
少し、空ぶかし(クラッチが繋がらない程度)をすると
すぐに違いが体感できます。 アクセルにリニアになっています。
このレスポンスはチャンバーなどの高回転型になったエンジンに
有効かもしれません。(アイドル時のエンストの危険性は高まりますが・・。)
いざ、走り出してみました。
クラッチが繋がると、レスポンスの良さが半減します。
がっかりさせる様で悪いのですが、あまり体感できません。
良くはなっているのですが・・・。(気だけ??)
駆動系は色々な物が回転しており、特にクラッチが繋がった状態では、
クランクシャフト⇒ホイールシャフトまでが繋がった事になり、
かなりの数の重量物が回転している事になります。
スターターギアのみでは15%の軽量化ですが、全体からみれば
数%しか軽量化したことにしかならないようです。
が、この後、軽量クラッチキット等を導入し、他の回転物を
軽量化した際に、このチューニングが生きて来る様な気もいたします。
チリも積もれば・・・のチリですね。