ローフリクション グリスレスプーリー


< 能書き >

ノーマルプーリーをグリス封入式プーリーに仕様変更した後、
そのレスポンスの良さに惚れ込み、使い続けていたのですが、
時折行うWRの設定変更等の作業で手がグリスでベトベトになる等の
悩みを抱えていました。

また、長期間のグリス効果を持続できるのですが、ベルトの粉塵等の
クラッチカバー内のゴミがプーリー内のグリスと混ざり合ったり、熱による
グリスの劣化があり、定期的にグリスの総換えが必要で、
もう少し使い勝手が良くならないものか?
と考える日々が続いていました。

そんな中、車関係の仲間との集まりでこの話をしたところ、
仲間の一人から「何とかできるかも?」と一つの提案が出てきました。

その正体はなんと、今までの理屈をひっくり返す「グリスレス」。
思わぬ所から、思わぬ技術が転がり込んで来ました。


< 目 的 >

グリスレスながら、グリス封入式に負けないローフリクションのレスポンスと
そのレスポンスを長期間持続することを狙います。


< チョイス >

     <   チョイス   >

今回、私がチョイスしたのはコレ。

・・・・ノーマルプーリーです。(笑)

が、、なんか違うと思いません?
表面の色とか・・・・。

コレが今回の重要なカギです。


< 内 容 >

     <   比較 1   >

上の写真がノーマル。
写真のを撮る為、ベトベトなグリスを洗い流しました。

下の写真がノーマル+α。





コレが何かというと、WPC加工と言います。
マイクロディンプルとも呼ばれる様で、
金属の表面加工の一つです。

最近ではメジャーになってきた様ですが、
主にはエンジンのピストンやピストンリング等の
摺動部に施されます。

最近は、4輪のHONDAのTYPE−R系のエンジンや
ハイブリッドカー、F1等のエンジンにも実用されている様です。

WPCとは40〜200ミクロンの非常に小さなショットを、
処理される材料に対して100m/sec以上という非常に高速で
噴射する処理で、一つの表面熱処理技術です。

金属の疲労強度向上と摺動性向上を主目的としています。

通常、ピストン等には二硫化モリブデンと言うメディアを
ショットするのですが、摩擦する相手が対金属であれば
有効だそうなのですが、今回は摩擦する相手が
WRのアウター(樹脂)と言うことで、樹脂への効果が期待される
二硫化モリブデンとは違うメディアをショットしてもらいました。

残念ながら、今回使用するメディア、公の場では公表禁止を
命じられているので「内緒」となってしまうのですが、
ヨーロッパの某メーカーでも実験されているという噂です。

     <   比較 2   >

勿論、ランププレートにもWPC加工を施します。



一部のマニア?の人は気付くかも知れないですが、
初期型のランププレートです。

レスポンス重視の9640号が何故?
と思う方も多いと思いますが、それには色々と理由があり、
初期型のランププレート採用となりました。

まあ、その辺のウンチクは別口でレポートしたいと思います。


     <   チョイス   >

そして、今回のプロジェクトはもう一つ組み合わせる物があります。

KUREの「ドライファストルブ」。

弊HPの掲示板や各諸サイト様の掲示板で噂になっている
ケミカルです。

「フッ素樹脂」配合の「速乾性潤滑材」だそうです。

速乾性と言うだけあり、塗布後は乾燥してベタベタが残りません。


     <   加工 1   >

ドライファストルブは、WRのアウター、
スライドピース(ランプレのダンパ)に塗布します。
速乾性の文字通り塗布後は数秒で乾燥してしまいました。



後は、普通に組み込んで完了です。

WR、プーリーの分解、組み立て方法がわからない方は
コチラ↓↓↓

  WRの交換


     <   効果 1   >

今回のコンテンツの主旨は、性能UPではなく
消耗への耐久性や状態維持です。

そんな訳で、1000km程走行し、効果測定をすることにしました。

上の写真が約1000走行後のプーリーです。

予想より遥かに綺麗でビックリしました。
そしてなんと言ってもドライ!


     <   効果 2   >

グリスレスだけあって、汚れが少ないです。


     <   効果 3   >

プーリー、ランププレート共に、WRの移動した痕がある程度で
全然磨耗していません。
表面強度が上がった結果でしょうか・・・。

まあ、ノーマルのランププレートも1000km程度では
殆ど磨耗などしないですが・・。

WRを手でプーリーやランププレートに擦りつけてみても
驚くほどスベスベしていて、抵抗感がありません。

     <   効果 4   >

コチラはWRの様子。
プーリーとランププレートの接地面は擦れた痕がありますが、
特に偏磨耗などは発生していません。




コチラはグリス封入プーリーで約800km使用したWR。
グリス封入式とはいえ、若干の磨耗が有ります。

コレを比べるだけでも、WPC加工とドライファストルブの
効果があったと伺え、グリス封入と同等、もしくはそれ以上の
性能を発揮していると思えます。



< 注意事項 >

ウェイトローラーには、装着方向があります。ご注意下さい。
また、クラッチケースを外す際に、インパクトドライバー等を使用される場合は
くれぐれも手を叩いてしまわない様にご注意下さい。


< 使用する材料 >

・SUZUKI純正ウェイトローラー(SK-1用)
 品名:ローラ、ムーバブルドライブ
 品番:21650-16F00
 値段:390円/個

・SUZUKI純正スライドピース
 品名:ダンパ、ムーバブルドライブプレート
 品番:21481-41D10
 値段:失念・・・(150〜200円くらい?)


< 使用する工具 >

・インパクトドライバー(クラッチケース)
・プラスドライバー
・プーリーロックレンチ(スズキ車用)
・17mmソケットレンチ
・WPC処理装置


< 使用するケミカル >

・KURE(呉工業)製 ドライファストルブ
・WPC処理用メディア材


< 参考文献 >

特になし。


< インプレ >

インプレ・・・かどうか微妙な所ですが、
とにかく、ドライなのでWRの交換が容易になりました。

その他、注目されると思われる変速レスポンスもグリス封入式と変わりなく、
常に安定した変速を実現しています。

今後も、2000km、3000kmとウォッチングを続けいて行きたいと思います。