軽量ウェイトローラーへの交換


< 能書き >

プーリーの動きを制する影の仕事人。
この重さの選択一つで加速重視にも最高速重視にも
変速タイミングが無限に広がります。


< 目 的 >

私の感覚ですと、なんとも出だしがかったるいアドレス110。
私の用途上、市街地走行が多く、ゆったり巡航が得意そうな
この車体ではちょっと不満。

そんな訳でちょっと中低速での加速をよくしようと思います。
今回はウェイトローラーを軽くして、高回転で変速するようにします。



< チョイス >

     <  チョイス  >

今回私がチョイスしたのはコレ。
デイトナ製 スーパースプリントウェイトローラー

スズキ車用 外形 17mm の14.0gです。



< 内 容 >

     <  マメ知識  >

ココで少しWRの重量と変速のバランスについて考えましょう。

WRは、文字通り重りです。
遠心力でかかる力を変速に利用しています。

それでは、遠心力について考えましょう。
遠心力は、回転する回転半径(R)、
毎分の回転数(rpm)から決まります。

アドレス110のプーリーの直径は約8.2cm。
半径4.1cmです。

その中でWRは中心より2.0cm〜4.0cmぐらいの範囲で
移動しながら回転しています。

それでは、次にこのWRにかかる遠心力を求めます。
では、一体何回転の遠心力を求めるか?

今回の計算の主旨は変速の回転数ですので、
ノーマルが変速している回転を知る必要があります。
しかしながらタコメーターなんて便利なものは
付いていないので、憶測で物事を考えるしかありません。

アドレス110の最大トルクは
5500rpmで発生します。(カタログ値)

スズキが計算尽くして、
この最大トルクで変速していると仮定しましょう。

遠心力を求める式は・・
(既に数値がある部分は決まった乗数です)

遠心力(G)=
0.0000112×回転半径(r)×回転数(rpm)の2乗
-@
です。

WRの回転半径は走行速度によって
中心からの距離が変化します。
とりあえずこの場では、2.0cm〜4.0m
の間を取って3.0cmとします。

コレを先ほどの−@式にあてはめると・・・

遠心力(G)=
0.0000112×3×5500の2乗
   
となり、
遠心力=1016.4 
となります。

この遠心力にWRの重量を乗算した値が
実際にWRにかかる力になるのです。

当然ながらWRの重量が軽くなるとWRにかかる力も少なくなります。
少なくなった力を補うには、遠心力を上げなければなりません。
遠心力を上げる=回転を上げると言うことになります。

遠心力より回転数を求めるには

回転数の2乗=
遠心力/0.0000112×回転半径
-A 
になります。
ここで解るのは、回転半径が同じならば、
乗数0.0000112と回転半径の数値は変わらないので

回転数の2乗=遠心力-B

という式が成り立ちます。

いままで説明した内容で、
WRの重量による遠心力の値が求められるので
ノーマルのWRの遠心力と軽量化した時の
WRの遠心力の差割が計算できます。

軽くしたWRでノーマルWR並みの遠心力を得るには、
ノーマルの回転数5500rpmより
回転数を上げなければいけないのですが、
その為には、上げなければならない回転数を
計算する必要があります。

まず、先ほど計算したノーマルWRと軽量化した
WRの遠心力の遠心力変化率の逆数を求めます。

これはWRの重量変化率の逆数とまったく一緒の数値になります。

計算式は
ノーマルWR遠心力/軽量化WR遠心力-C です。

回転数の2乗=遠心力−B
ですので
回転数=遠心力の平方根−D
となります。

新しい回転数を求めるには、

新回転数=ノーマル回転数×遠心力変化率の逆数の平方根

と言う事になります。

下の表は、計算が面倒臭いという人の為に作成しました。
現状、考えられるWRのセッティングでの計算です。
(ゴテゴテ言わずコレを早く出せって?? 汗)

WR設定 遠心力計算式 遠心力 遠心力
変化率
の逆数
変化率の
平方根
新回転数
WR1 WR2 合計 軽量化
乗数 (R×
(回転数2))
回転
半径
遠心力
(G)
遠心力
×質量
20 20 120 0.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 121968 1.00 1.00 5500
20 17.5 112.5 6.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 114345 1.07 1.03 5680
20 17.1 111.3 7.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 113125.32 1.08 1.04 5711
20 15 105 12.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 106722 1.14 1.07 5880
17.5 17.5 105 12.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 106722 1.14 1.07 5880
17.5 17.1 103.8 13.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 105502.32 1.16 1.08 5914
17.1 17.1 102.6 14.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 104282.64 1.17 1.08 5948
20 14 102 15.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 103672.8 1.18 1.08 5966
20 12.5 97.5 18.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 99099 1.23 1.11 6102
17.5 15 97.5 18.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 99099 1.23 1.11 6102
17.1 15 96.3 19.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 97879.32 1.25 1.12 6140
17.5 14 94.5 21.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 96049.8 1.27 1.13 6198
17.1 14 93.3 22.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 94830.12 1.29 1.13 6238
20 11 93 22.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 94525.2 1.29 1.14 6248
20 10 90 25.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 91476 1.33 1.15 6351
17.5 12.5 90 25.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 91476 1.33 1.15 6351
15 15 90 25.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 91476 1.33 1.15 6351
17.1 12.5 88.8 26.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 90256.32 1.35 1.16 6394
15 14 87 27.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 88426.8 1.38 1.17 6459
17.5 11 85.5 28.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 86902.2 1.40 1.18 6516
17.1 11 84.3 29.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 85682.52 1.42 1.19 6562
14 14 84 30.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 85377.6 1.43 1.20 6574
17.5 10 82.5 31.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 83853 1.45 1.21 6633
15 12.5 82.5 31.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 83853 1.45 1.21 6633
17.1 10 81.3 32.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 82633.32 1.48 1.21 6682
14 12.5 79.5 33.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 80803.8 1.51 1.23 6757
15 11 78 35.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 79279.2 1.54 1.24 6822
15 10 75 37.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 76230 1.60 1.26 6957
14 11 75 37.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 76230 1.60 1.26 6957
12.5 12.5 75 37.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 76230 1.60 1.26 6957
14 10 72 40.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 73180.8 1.67 1.29 7100
12.5 11 70.5 41.25% 0.0000112 90750000 3 1016.4 71656.2 1.70 1.30 7176
12.5 10 67.5 43.75% 0.0000112 90750000 3 1016.4 68607 1.78 1.33 7333
11 11 66 45.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 67082.4 1.82 1.35 7416
11 10 63 47.50% 0.0000112 90750000 3 1016.4 64033.2 1.90 1.38 7591
10 10 60 50.00% 0.0000112 90750000 3 1016.4 60984 2.00 1.41 7778


     < マメ知識A >

ココで気になるのが、WRが回転半径3.0cm以外での
遠心力。

大体ですが、計算済みです。
WRの回転半径の移動量は≒2.0cm〜4.0cmです。

回転半径2.0cmの時には、先ほどの計算表の1.5倍の回転数、
回転半径4.0cmの時には、先ほどの計算表の0.75倍の回転数

で、3.0cmの時と同じだけの遠心力を得ることが出来ます。


     <  工程 @  >

まず、クラッチカバーを外し プライマリープーリーを外します。

プライマリープーリーの外し方の解らない方はコチラ
           ↓↓↓
   ウェイトローラーの交換

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初歩チューンと言われるWR交換も理論的に考えると
頭が痛くなりますね。

皆さんも、ベストなWRセッティングを見出してください。



< 注意事項 >
・変速回転数が、エンジン回転の上限より上になってしまうと
 当然ながらWRの遠心力は、変速に必要な力を発生できないので
 変速しないバイクになってしまいます。

・自然の遠心力の他に、セカンダリープーリー側でセンタースプリングが
 抵抗要素としてあります。
 遠心力がこのスプリングの力に負けた時点で、変速はしなくなります。
 当然、WRを軽くすることにより遠心力は低下するので、
 最大変速前にセンタースプリングにまけることになると、最高速の低下が
 発生します。


< 使用する材料 >
・ デイトナ製 スーパースプリント ウェイトローラー
・ クラッチカバーのガスケット(無くても一応可)


< 使用する工具 >
・ M5 +ドライバー (クラッチカバー)
・ インパクトドライバー(クラッチカバー)
・ プーリーロックレンチ (プライマリープーリー)
・ 17mm ソケットorメガネレンチ(プライマリープーリー)
・ M4 +ドライバー (ランププレートストッパー)


< 使用するケミカル >

・ パーツクリーナー


< 参考文献 >
・ 特になし


< インプレ >

今回の設定で、WRが約15%ほど軽くなりました。
回転数的には約6000rpmとノーマル時の500rpmほど高回転で
変速するようになりました。

エンジンは多少、唸る感じを出しますが、パワーバンド付近での
変速になったのか、ノーマルの時と違い、ぐいぐい車体を前に
持って行きます。
待ち乗りにはとてもいい感じです。

今後、チューニングレベルにより、もっと設定を煮詰めて行く予定です。