デルタクラッチの装着


< 能書き >

ノーマルのクラッチから、シュー面積の大きいV100クラッチに変更したものの、
更にエンジンパワーが上がるにつれて、またもや滑りによるロスを体感する様に
なって来ました。
国内の社外メーカーは各社、V100や110用の軽量強化クラッチなる物が
幾つかラインナップに存在していますが、軽量故の高回転ミートと
重量不足からくる圧着力の低下など、どれもイマイチ「コレだ!」と言うものが
ありません。
そんな中、マロッシのカタログを見ていると、ヤマハ用デルタクラッチの品番が
ZZ、ストマジ用と同じ事に気がつき・・・・。


< 目 的 >

V100クラッチでは対応出来なくなった、エンジンパワーに対応する為、
世界最高峰?と呼ばれるクラッチで、ベストなクラッチセッティングを目指します。


< チョイス >

      <   チョイス   >

今回、私がチョイスしたのはコレ。

MALOSSI社製のデルタクラッチ。
品番527879

市場実戦価格は17,000〜18,000円位の様です。

ヤマハのグランドアクシス、Bw’s100用として
名高い品番ですが、じつは、ZZやストマジにも
対応となっています。


< 内 容 >

      <   チョイス2  >

今回は、デルタクラッチのオプションパーツである
クラッチスプリングのセットも購入しました。

品番は、298746です。

3種類のレートがセットとなっていて、
白、緑、黄色の順でレートが上がっていきます。
(白は、デルタクラッチに標準で装着されています。)


      <   比較 1   >

早速ノーマルと比較です。



左がデルタクラッチ、右がノーマルです。



シューASSYその物の厚さが全く違います。

重量ですが、
ノーマルASSY 885g
ノーマルシュー 212g

に対して

デルタASSY 663g
デルタシュー 139g(ウェイト付き)

と強烈に軽いです。

ちなみに参考ですが、カメの軽量強化クラッチは
カメASSY 705g
カメシュー 152g

と、カメ製よりも軽いです。

シュー自体の重量は、重量配分、支柱の位置や、
スプリングによりミート特性が大きく変るので、
軽い=高回転という訳ではありません。



      <   観察 1   >

アドレス用とは異なり、中央部が膨らんでいます。



裏側です。
バックプレートはアドレス同様、Eリングで固定されています。


      <   分解 1   >

バックプレートを外した所です。
バネの掛かっている、黒いパーツを移動させる事により
引きの強弱が3段階の調整が可能で、
ミートタイミングを変更する事ができます。



反対側はウェイトです。
同じくウェイトも3段階の調整が可能で、
外側(支柱と反対側)にすれば、重く、
内側にすれば軽くなるという仕組みです。

これらにより、バネ一つ当たり、9通りのセッティングが可能です。


      <   問題 1   >

前項でも記述したのですが、取り付けには少々問題が発生します。

ZZ対応とあるので、そのまま付かなくもないのですが、
クラッチのオフセットの関係で、そのままデルタクラッチを装着すると
クラッチハウジングの外側にシューの接触面が来てしまいます。

ココで懸念されるのが、ハウジングの「開き」です。
この懸案事項を解消する為に、都合の良いハウジングを
用意しました。

V100のクラッチシューを採用する際に、少し触れた部分ですが、
V100クラッチはオフセット「有り」と「無し」の2タイプ存在し、
オフセット「有り」はアドと共通、
「無し」はV100の一部の型となっており、
今回は、そのオフセット「無し」用のハウジングを用意しました。



左が、オフセット「無し」用のV100クラッチハウジング。
右が、オフセット「有り」用のアドレスのハウジングです。



見比べても判ると思いますが、中央のスプライン部分が
膨らんでいて、ハウジングとクラッチの位置関係が
若干違う事が伺えます。


      <   問題 2   >

次の懸案事項は、クラッチハウジングの内径の問題です。
コチラもZZ対応となっているので、
気にする程で無いのかもしれませんが、

ヤマハ車(Gアク)のクラッチハウジングの内径は112〜113mm
対するアドレスは110mmです。

基がどちらを主体に開発されたかは不明ですが、
仮にヤマハベースで開発されていたとすると、
シューのあたりが、全面にならない可能性が出て来ます。

そこで今回も、お約束の如く、弊HPの技術主幹、山ちゃんの
協力を頂き、内径を切削加工してもらいました。

しかし、110mmの内径を112mmにするには、
1mmも薄くしなければ、ならなく、
3.3mmしかないハウジングをソコまで薄くしてしまうと
強度的に不安が過ぎります。

そこで、今回は、0.6〜0.65程度削って様子を見る事にしました。




こちらは、約1000km走行後の写真です。

△部分が残ってしまっていますが、ほぼ全体が当たっているので、
これ以上内径を広げなくても良さそうです。

なお、装着方法は、今までのコンテンツで、まかなえる為に
割愛させて頂きます。

取り付け方法が判らない方
  ↓↓↓
  クラッチスプリングの交換



< 注意事項 >

・非常に高回転で回転する部品です。
 作業漏れの無い様に慎重に作業を行って下さい。

・エンジン稼動停止直後は、非常に高温です。
 火傷等の危険がありますので作業はお避けください。

・クラッチのユニットを分解するに当たり、
 コンプレッションツールを使用せず、センターナットを外す場合は
 くれぐれも、センタースプリングの張力で飛びそうになる
 クラッチのインナーにご注意下さい。


< 使用する材料 >

・マロッシ社製 デルタクラッチ 品番:527879
                 某オークションにて、新品 ¥12,900−

・マロッシ社製 デルタクラッチ用スプリング「スポーツ」 品番:298746 
                                  ¥3,300−

・アドレスV100純正クラッチアウター 品番:21220-41D02
                 CA11A−144213〜216596用 品番・値段不明


< 使用する工具 >

・プラスドライバー
・インパクトドライバー(クラッチカバー)
・シザースホルダー
・プーリーロックレンチ
・14-17mmメガネレンチ
・34mmソケットレンチ
・ラジオペンチ
・ヘキサゴレンチ 3mm


< 使用するケミカル >

・パーツクリーナー


< 参考文献 >

・デルタクラッチ取り扱い説明書


< インプレ >

取り付け後、暫らくは当たりが安定しないため、
そのまま走行していましたが、最初からミートが異様に低い印象を受けました。

そのまま我慢して、当たりが安定した500km過ぎ辺りから、
データーを取り始めましたがミートタイミングの低さは解消されないままでした。

交換前 0⇒90km/h データー 11.26s
交換後ポン付け 0⇒90 データー 12.15s


なんと、ミート回転数が低すぎる為に、スタート時にパワーバンドを大きく
外してしまい、回転が回復するまでのタイムラグで、交換前より
遅くなってしまいました。

ここから、セッティング地獄が始まります。

まずは、説明書を読み、バネの引き具合による変化と、
ウェイトの位置による変化を織り交ぜながら、
弱い順(ミートが低い順)に組み合わせ並べる事にしました。
コレが解読にかなりの時間を要しました。

そのパターン、3種類のバネで実に27通りです。

実は、今回のバネのオプション、更に上の「レーシング」と言うものが
存在しているのですが、そちらは、更に硬いバネ3種類とウェイトが1セット
付属しています。

これらもあわせると、なんと108通りも組み合わせが出来てしまいます。

解読に苦労した故、公開するか否か悩みましたが、
太っ腹の大サービスです。
私独自の算出方法なので、データーの信憑性は保証いたしかねます。

No バネ色 引き ウェイト
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27

バネ色: バネの色
引き : 支柱から離れる方向=弱
ウェイト : 支柱から離れる方向=重

1が一番弱く(ミート低い)、27が最強(ミート高い)となります。

ちなみにデフォルトは購入時の「1」となっています。

この27種類の中から、大きく何箇所かポイント取りして
ベストなセッティングを探して行きました。

表の黄色い文字の部分が、私が試した組み合わせです。

そして最終的に落ち着いたのが、表中「赤」の文字の組み合わせです。
Noですと16番になります。

交換前 0⇒90km/h データー 11.26s
交換後ポン付け 0⇒90 データー 12.15s
交換後 No16 0⇒90 データー 10.03s

ミートの回転数を、交換前のV100クラッチと同じ程度に合わせました。
あわや、10秒切り目前(駆動系が冷えていれば切るかも)です。

交換前に比べ、1秒以上もタイムが向上しました。

加速感も、以前の「滑っている」と言う感覚から
「しっかり喰い付いている」と言うのが体感できるレベルで、
高額商品でも、後悔しない結果となりました。