百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 22 回  ス ズ ラ ン   2024年5月1日

   今から5年前、ちょうど今頃の季節でした。購読している朝日新聞の読者投稿欄「声」に二人の女子高生の投稿がありました。

  最初は4月に「桜雪」という名前が目に留まりました。女性の名前に「桜」が付けられるのは、珍しくありません。桜子や美桜は

  良く目にしますが、雪を含んだ名前は初めてでした。「さゆき」とフリガナが付いていました。素敵な名前です。

   その一ヶ月後、ひらがなで「すずらん」という長野の高校生の投稿がありました。「さくら、すみれ、ゆり、らん、と花の名のつい

  た親戚がたくさんいます」とのこと。確かにさくらちゃん、すみれちゃんなど良く耳にしますが、すずらんちゃんは初めて知る女性

  の名前でした。

   今、我が家のベランダでそのスズランが可愛く咲いています。昨年卓球の仲間からいただいた鉢植えのスズランです。25セ

  ンチ四方の四角い鉢に10本ほどのスズランが植えられています。一冬越して可憐な花をつけてくれました。スズランの好きな

  アトリエ作者のために、数年前花屋さんで苗を購入し、畑で育てようとしました。でも、根付かずに畑での栽培は失敗に終わり

  ました。今回、百花でスズランを選んだので少し調べてみました。スズランは北海道を代表する花で、夏の暑さには弱いという

  ことを知りました。炎天下にさらされる畑で育たなかった訳が分かったのです。さらに、全体的に毒があることも。

                                  

   スズランはその清楚なたたずまいから、ヨーロッパでも人気の花で、スウェーデンでは国花となっています。日本原産

 のスズランもあるようですが、私たちが普段目にしているのは、ヨーロッパ原産のドイツスズランだそうです。

   昨年の5月号で、作者が「鈴蘭のこと」と題してトップページで記していますので、その一部を再掲します。

                    「 鈴 蘭 の こ と 」

  ・・・その鈴蘭、ヨーロッパにはこんな話があります。フランスでは5月1日に、家族や親しい人の幸福を願って、鈴蘭を

  贈る習慣があるそうです。これは1561年にシャルル9世という王様が、宮廷の婦人達に贈ったのが始まりとされてい

  ます。一般に広まったのは、1970年代からだそうです。

   また、他の書物の記述では、ヨーロッパのある地方では、6月1日に鈴蘭の花束を贈られると幸せが訪れる、という

  言い伝えがあって、この花束を贈り合う習わしがあるというのです。

   そういえば・・・・と思い出したのは、10年以上も前の記憶でした。夫の定年退職をに伴い、花を追い求めて季節の

  いいときに旅をするようになっていました。その年もライラックや鈴蘭との出会いに期待して、北海道を巡ってきました。

  帰宅すると、両手に納まりそうな四角い箱状の贈り物が届いていたのです。留守番をお願いしておいた娘が受け取り

  ましたが、未開封でした。「何かな?」と開けてみると、それは鈴蘭の花束だったのです。長い間、小さな箱の中に閉じ

  込められていたにもかかわらず、保存状態が良かったからでしょう、みずみずしい状態で旅から帰った私たちを迎えて

  くれたのでした。・・・

                           

   スズランは、小さな鈴に似た花が連なって咲くことから、鈴・蘭と名付けられたようですが、蘭の仲間ではなく、百合の

 仲間とのこと。それゆえか、「谷間の姫百合」という別名があるそうです。私はもう一つの別名「君影草」の方が好きです。

  書き出しで長野の高校生、すずらんさんの名前に注目したと書きましたが、投稿内容も良かったのです。花好きのお母

 さんが、毎日家の花に水を遣るとき、花に話しかけているので、「なぜ?」と聞くと、「話しかけると、きれいな花が咲くから」

 と教えてくれたそうです。我が家のベランダの花たちにもそうしています。スズランは花が終わったら株分けをするつもりです。

                      

                                                      
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