風 誘 讃 花    


    第 13 回  故 郷 の 山   (2016年2月1日)   

   光陰矢のごとし、2016年も1ヶ月が過ぎ、カレンダーが一枚めくられました。このカレンダー、今年から8月11日が

  祝日となっています。7月の海の日に続き、山の日が制定されたのです。

   国土の中央に名だたる山脈が連なり、まさに山国とも言えるこの国に、○○山と呼ばれている山は、いったいどれ

  ほどになるのでしょうか? とあるテレビ番組のクイズに出題された問題です。答えは、16,667 ということでした。

   山の定義としては、高さ低さに関係なく、とにかく ” 山 ”と呼ばれているものを数えた場合の数だそうです。そうだ

  としたら、私が子供の頃頻繁に通った裏山もそのひとつに数えられているのでしょう。もう数えきれないくらい昔、その

  山は折々の季節の花を提供してくれました。

   信州の春は遅くて、4月に入ってようやく蕗の薹が黒い土の下から顔を出すのです。その後は菫、ツツジ、山ユリ

  と続いていって女郎花や桔梗が咲き出す頃に、ちょうどお盆を迎えるのでした。

   そうした山の花々は清楚でどれも好きだったのですが、とりわけ心惹かれるのが秋の終わりを告げる頃に咲き出

  すリンドウ。深い瑠璃色のこの花に出会いたくて、山の奥深く分け入ったものでした。

   今その山を訪ねても、リンドウに辿り着くことは出来ません。人の手が入らなくなって久しい自然の山は鬱蒼として

  いて、足を踏み入れる余地がないのです。

   ときどき幼い頃に出会った花に逢いたくなるときがあります。そんなときは、記憶をたどって水彩画に描いてみるこ

  とにしています。

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