風 誘 讃 花 第 9 回 孫 の 忘 れ 物 か ら (2015年10月1日)
車で30分くらいの市内に6才になる孫が住んでいます。時々遊びに訪れますが、先日彼が帰った後の部屋の中で どんぐりの実が1つ落ちていました。来た時に大事そうに握っていた手の中にあったものです。 よく見ればそれはどんぐりの中でも、特に縦長の”まてばしい”の実でした。随分昔、自分の子育てのときに出掛けた 海沿いの公園を思い出しました。今頃の季節には木の下にたくさん落ちていて、拾うのが楽しくてバケツにいっぱい持 ち帰った記憶があります。 { もちろん!子供と一緒にですよ } 絵を描くようになってからも、どんぐりのモチーフは好きでよく描いたものでしたが、まてばしいに限ってはバランスが 難しく、ちょっと避けていたのでした。 孫もまた、若い両親に連れられてあの公園に行ったのかしら・・・そんなことを考えたら、懐かしさも手伝ってすっかり ご無沙汰の海の見える公園に足を伸ばしてみることにしました。 いわば街の外れとも言える臨海工業地帯のど真ん中にポツンとある公園は、どうやらほとんど訪ねる人もいない様 子で佇んでいました。
でも、記憶の中にあったまてばしいの木は健在で、あの頃のようにたくさんの実をつけていました。昔を思い出し ながら公園の中を一周していたら、タカサゴユリが一輪だけ咲いている場所に行き着きました。 「まだ、咲いていたんだ!!」 と嬉しさが込み上げました。この夏、どれだけタカサゴユリを描いたことか。季節 が過ぎて、今年はもう逢えないと思っていただけに、嬉しさもひとしおです。 このユリは繁殖力が旺盛で、種で増えるから育てるのは簡単だとも、広い庭のあるご家庭では雑草のごとく抜か れているという話も聞くのですが、私にしてみればとても魅力的な野の花のわけです。もしどっさり手に入れること が出来たら、どんなに素敵なことか。そこでいいことを思いついたのです。ドライブしてきた車の中には、先日花友 からいただいたタカサゴユリの種が積んでありました。 ここまで言えば察しが付くというものですよね。そうです。すっかり荒れ放題の公園の一角に、タカサゴユリの種を 撒きまくったというわけです。来年、その場所が、ユリの楽園になっていることを妄想しながらですけれど、果たして 巧くいきますかどうかお楽しみに。