新エッセイの部屋

 第 5 回 ・・・ 右 腕 の 痛 み

  今年に入って右腕全体が筋肉痛のような痛みに見舞われて、そのために創作活動に支障をきたしていることを前回

 お知らせしました。季節が変われば改善するかもという願いは、虚しくも外れて工夫を余儀なくされています。

  勿論あちこちの病院を訪ねてみましたが、どうも速効といえる治療法は見つけることができずに、さらに試行錯誤を続

 けています。もっとも絵をしばらく描かないでいると、痛みも退いていく訳ですから結論は出ているようなものです。すな

 わち右腕を休めなさい、と。ある医院でも次のようなアドバイスをいただいています。

  「もう歳なのだから、インターバルを取って活動することです。」

 そんなぁ・・・・・と思いました。もう歳だなんてあんまりだわ、平均寿命85歳の時代に・・・と。もっとも私は子供の頃から

 運動嫌いだったから、ここに来て体を動かさなかったツケ

が回ってきたのかもしれません。学生時代にもっと勉強して

おくんだったわ、という反省は、運動能力の面でも同様のよ

うです。でも、過去の過ぎたことをあれこれ悔やんでも仕方

がないので、せめてお医者様からアドバイスされたことの

中から自分にできることを実行することにしました。それは

ウォーキングとストレッチ体操です。20〜30分位の目的

地までは歩くことにしました。これは実に楽しいことである

ことにすぐ気付きました。歩くというゆっくりした動作の中

で、出会う花の多いことといったら!!

 こんなに素敵な場所を今まで何を急いで通り過ぎていたのだろうと、いぶかしがることしきりです。
 
 ストレッチ体操のほうも何とか続いています。これで血行が良くなって今まで通り右腕を使うことができたらいいのだけれ

ども。たかだか10グラム程の面相筆を握るだけで痛みを感じるなんて情けないと思ったりしましたけれど、実際描くことに

集中していれば、何時間も右腕を宙に浮かせたままで筆を動かし続ける訳ですから、相応の運動量を強いていたことにな

ります。これからは右腕をもう少し大事にいたわってあげようと思いました。でもなにか良い方法があったら試してみたいと

いう思いもあって、会う人ごとにその話題を向けてみました。すると驚く程多くの人がなにがしかの体の痛みや不自由を感

じているのでした。右腕が痛くて絵を描くことに支障をきたしているなどという悩みは、どうも悩みのうちに入らないかもしれ

ないぞ、と反省してしまう程です。解決方法も様々で珍しいところではハンドパワーの治療を受けているなんていう話も聞

きました。健康器具やサプリメントの宣伝で溢れている現状も、それだけ必要としている人が多いからなのではないでしょ

うか。

季節の花が次々に咲き競う中で、ただ手をこまねいているのは、

確かに辛いことではあります。でも右腕以外は何も支障なく生活

しているのだから、できないことを嘆いてばかりいないで他にでき

ることはないかと探してみたらすぐに見つかりました。いつも読もう

と思って買い込んでいた書籍です。考えてみたらこのところ読書と

呼べるような時間からはすっかりご無沙汰していました。かくして

絵筆を持つ右手に休息、左手に書籍と相成りました。

ここ数ヶ月の間に読んだ本の中で特に面白かったのは小川洋子

さんの「博士の愛した数式」です。題名から想像されるごとく難しい数式がたくさんでてきます。それを数学大嫌いの私が

面白かったと言うものだから家人がいぶかしがることしきりです。勿論難しい数式の行は飛ばし読みです。その頃、介護

に関心があった私にとってこの本は一つの指針を示してくれた本となりました。同時に読み進めていた某有名エッセイスト

の介護本や、某政治家の介護日誌よりもずっと示唆に溢れていました。そしてつい2〜3日前に読み終えた(一気に読み

通したのですが)お医者さんであり作家でもある久坂部羊さんの「破裂」も現代日本の医療、老人問題を考えさせてくれま

した。読書は人の心を豊かにしてくれるというのは本当ですね。でも、やっぱり心おきなく絵を描けるように早くなりたいです。 

この数ヶ月、腕の痛みと付き合いながらかろうじて描いたものです

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