新エッセイの部屋

 第 23 回(H19年6月)  ゼラニューム 

  いつもベランダにある花、多分一年中咲いている。多分、といったわけは、それほど当たり前に身近にあるので

 注目度が低いのです。

  だからといって、どうでもいいなんて決して思っていなくて、時々目線の中に入ってきては可愛いなと感じてはいた

 のです。

可愛いと表現するにはためらう10号鉢くらいの大きさのもの

が3つ、我家のベランダにはあります。描きやすいフォルムな

ので、いつか絵の教室に持ち込んでモデルになってもらおうと

思っているうちにどんどん成長して、持ち運ぶにはちょっと大

きすぎるかなと思案中です。

 それより何より私が描かないことにはお手本にはなりません。時々花のほうから 「 どう? 」と誘ってくるのです

が、何しろこの季節です。

 桜が散ったと思いきや藤、そしてツツジが艶やかに香っています。そうかと思うと可憐な白い花々が新緑のサポー

トを得て、どおしようもないくらい素敵に咲いているわけで、 「 だったらいつ描いてくれるのよ! 」

という赤いゼラニウムの文句が聞こえてきたような気がして、思わず 「 そうだね! 」

と声に出して言ってしまいました。

 今日はなにがなんでもカドミゥムレッドを使ってゼラニウムを描こう、そう決心したのでした。久しぶりに終日雨の

予報が出された日の午前。
 
 先ず一番小さなスケッチブックに描いてみました。手応えがあったので、次に大きい紙に描いて作品づくりは佳

境に入ります。

 「 出来た!!」 夕暮れが迫る頃、雨も止み代わりに風が強くなったらしいことを窓ガラス越しに感じながら、

花言葉の本を開いていました。

 並み居る麗しい季節の花を押し退けてまで私に絵を描かせたゼラニウムの花言葉は、なんだったのかを知り

たくなったのです。南アメリカ原産の多年草で日本には江戸末期に渡来したテンジクアオイという異名を持つそ

の花言葉、それは 「 決心 」でありました。 確かに! 強い意志を持つ花だと私も感じたことでした。

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