新エッセイの部屋

 第 15 回(H 18 年 7 月)  紫 陽 花 の 季 節 に 

  7月17日に書いていますが、梅雨明け宣言はまだ出されていません。でも空の青さはもう真夏の到来を告げています。

 この季節の主役は紫陽花と考える私にとっては、紫陽花との辛い別れの時でもあります。

  紫陽花の季節は他の花と比べると驚くほど長く、しかもこの花は七変化と呼ばれるごとく咲き始めから終わりまで次々に

 色を変えるので、様々な想像力を掻き立ててくれる貴重な絵のモデルでもあるのです。

  自然界に存在する種類だけでもすごいのに、園芸用に出回っている花の種類を数えたらもうお手上げです。なにしろ毎年

 新しい品種がお目見えするのですから.。品種改良に携わっている人々の努力に脱帽です。   

 紫陽花の場合は植える土の中に含まれる養分で花色が

影響を受けると聞いたことがあります。酸性分が多ければ

青色に、アルカリ性なら赤色になるというのですが、どうで

しょうか?

 いずれにせよ紫系統の大輪の花を惜しげもなく長い期間

にわたって咲かせてくれる紫陽花を描かない手はありませ

ん。パレットにはコバルトブルー、セルリアンブルー、ウルト

ラマリーンといった代表的な青に隣接してパーマネントバイ

オレット、ローズバイオレット、ブライトバイオレット、コバル

トバイオレットといった夢色が並びます

 今年はいつの頃からかプルシャンブルーが加わりました。たっぷりと水を含んだアルシュ紙の上を、これらの色が滲み

あい混ざり合って新しい一つの世界を生み出してゆく。筆を動かしているのは私ではあるのだけれど、私の想いだけでは

無い何かが背中を押してくれて絵が出来上がってゆくのを感じています。

 もっともっと描きたい、そう思い続けているうちにも季節は確実に移っていって、そろそろ紫陽花に向けた筆を置く時が来

たことを察知した朝、昨日まで紫陽花を描いていた同じ色で朝顔を一輪描きました。一ヶ月間に及び私が愛した青紫の色

は、朝顔の花がそのまま受け継いでくれそうです。

 (紫陽花前線今いずこ)

 紫陽花の開花時期については、桜前線と同じように、南から北へという流れが当てはまるようです。そうであるならば

天気予報のとき桜の開花を知らせる如く、事細かな報道があってもいいかな。曰く 「紫陽花前線」 などと考えるのは、

私が無類の紫陽花好きだからでしょうか。

 開花時期というのはおおむね梅雨時に前後していて九州では5月下旬、近畿、東海、関東南部で6月上旬、北陸から

東北北部にかけては6月下旬から7月下旬まで。北海道では平均7月下旬といったところなのだそうです。ということは、

夏休みの頃、北海道を訪れたら、紫陽花に出会うことができるということでしょうか。

 もっとも、桜と違い、紫陽花の咲く時期は長くて、切り花にしても鉢植えの場合でも随分楽しむことができますから、桜の

時のような追っかけは思い留まりましょう。

 我家のベランダでも赤紫の大輪の花が咲きました。これは昨年の母の日に娘が贈ってくれた鉢花です。贈られた時は

もっと薄い色だったのですが、花を楽しんだ後、切り詰めて一回り大きい鉢に移し替えて1年間ベランダの隅に置いてお

いただけなのに季節が巡ってきたら、ぐんぐん伸びて花芽をつけました。昨年と同じ柔らかい桃色を想像していたもので

すから、たくましい紫陽花が登場したときはびっくり。もともと改造された園芸品種だったのだから、原種の性質が色濃く

出たのかもしれませね。

 娘は長女を出産した一年後に仕事に戻りました。家庭と仕事を両立しているその姿を美しいと感じるときがあります。

{ 本人にはいっていませんが }せめてその想いを絵に託したくて、つい赤紫の紫陽花の作品が増えてしまいました。

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