青いバラ、それは英語では不可能の代名詞とされているとか?
青いバラを作り上げることはノーベル賞ものだとか? そんな話題を小耳にはさむたび、どうやら青いバラの出現は
それだけ難しく、また待望されているのだな、と想像されます。
それで実際にはどうかというと、大手企業が遺伝子操作でそれらしきものを作り上げたそうですし、育成家の女性
によるブルーへブンと命名された銀色がかった水色のバラも話題を呼んでいるようです。
そうした努力は素晴らしいと思うけれど、このバラの季節に
街を歩いて見かけるさまざまなバラの花を見ていると、今ある
ものだけで充分です!と断言したくなります。
これだけ賞賛される存在でありながら、更にデルフィニウム
や紫陽花の特許でもある青も欲しいなんて、バラだって望ん
でいないのではないでしょうか?だいたいバラにはそもそも
青い色素が無いというではありませんか。そんなことを言い
ながら、実際に花屋さんの店頭に青いバラが並んだなどとい
うニュースが飛び込んできたら、真っ先に駆けつけるかもしれ
ませんけれど・・・。
今年のバラはあなたにどんな物語を語りかけたでしょうか。私にとってこの季節は、花の水彩画教室に集う皆様と
一緒にバラを楽しんだ一ヶ月間でした。
どこにあってもバラの花に変わりはないのですが、この頃どうしても花屋さんの店頭でおすまししているバラとは違
うバラ、つまりは各家庭の庭で育ったようなあっちこっちを向いた枝が太陽の光を浴びて奔放に育ったバラを描きた
くてたまらなくなってしまいました。それで鉢植えのバラを買い求めては、絵のモデルになってもらいます。そんな話を
水彩画教室でしたところ、講座に参加するときに自宅のバラを持ってくる人が増えました。おかげで、みずみずしい
それらの花をお手本にして描く機会に恵まれ、今年はさまざまなバラの表情を描くことができました。
ある時などは、持ち込まれたバラで机が埋まり、パーティ会場さながらの雰囲気の中で、その香りに包まれながら
水彩画講師として至福の時を味わせていただきました。
今では四季を通じてその姿を楽しむことができる
バラ。この花の魅力を数え上げれば、きりがありま
せんけれど、なんといっても第一の魅力は色の豊
かさではないでしょうか。青以外のあらゆる色が揃
うと言われるほどの豊富な花色、その色の魔術に
かかってしまったらしばらくは翻弄されるしかありま
せん。そして、中心に向かって渦を巻く求心的な花
姿、まさに花の女王と呼んでいいのではないかと、
思われる美しい姿を際立たせているのが、端正な
葉です。
バラを愛でる人の数は多くても、ではこの花を描いてみましょう、と言うと躊躇するのは描くには難しすぎると感じる
からのようです
じつは描くのに難しくない花なんて無いのです。
デッサンを繰り返すことでその花の美しさを再発見するという点では、皆一緒です。均整のとれたバラは、花のモチ
ーフとしてふさわしい素材であると私は考えています。
この一ヶ月間のあいだに花の水彩画教室に通う一人一人のスケッチブックには何枚ものバラの絵が描かれました。
どうやら家に持ち帰った絵を玄関や居間に飾って楽しんでいる人たちもいるようですから、もしお訪ねになった家に
バラの絵が飾ってあったならその絵の感想を一言、言ってあげてくださいね。