子宮頸がんの細胞を調べると、しばしばパピローマウイルスの遺伝子が見つかります。パピローマウイルスは皮膚がんの発がんしかけ人物質ですが、どうも子宮頸がんの発がんしかけ人物質でもあるようです。
へルペスー型ウイルスもはっきりしませんが、子宮頸がんの発がんしかけ人物質、発がん促進人物質として働いているのではないかと考えられています。タバコを吸う女性は吸わない女性に比べ、子宮頸がんが約1、6倍多いといいます。
タバコを吸う女性は、性行為に伴ってパピローマウイルス、ヘルペスー型ウイルスに感染するチャンスが多いともいえます。喫煙者の血液や尿の中に、発がん物質のニトロソアミンが多いという事実もあり、またタバコタール中の発がん性芳香族炭化水素、芳香族アミンが血液に吸収されて膣に分泌されている可能性を示すデータもあります。
乳がんの発がんしかけ人物質としては、原子爆弾の放射線がいちばんはっきりしています。
ネズミなどの実験では、乳がんウイルスや化学物質が乳がんの発がんしかけ人物質になることがわかっています。しかし、人間の場合には乳がんの原因となるウイルスや化学物質は見つかっていません。
女性ホルモンが乳がんの発がん促進人物質として働いているらしいことは、経目避妊剤を服用している女性に乳がんの罹患率(りかんりつ)が高い事実からわかっています。
わが国で乳がんが多くなっていることは、食生活の欧米化によって女性の体格が向上したこと、女性ホルモンの産生が多くなって初経が早まり閉経が遅くなっていることなどからもうかがい知ることができます。
肝臓がんの発がんしかけ人物質としては、B型肝炎ウイルスが知られています。B型肝炎ウイルスによって慢性肝炎にかかると、肝臓細胞の遺伝子の中にB型肝炎ウイルスの遣伝子が取り込まれ、「がんの芽の細胞」ができます。さらに、DDT、BHC、pCB、バルビタール、トリハロメタンなどが発がん促進人物質として作用し、肝臓がん細胞ができ上がるのです。
皮膚がんの発がんしかけ人物質としては、紫外線があります。大腸がんの発がん促進人物質としては、胆汁酸があります。しかし、皮膚がんの発がん促進人物質、大腸がんの発がんしかけ人物質がどんなものであるか、また、日本人に多い胃がんの発がんしかけ人物質、発がん促進人物質がなんであるか、その正体は残念ながらわかっていません。
発がん物質を体に入れない
発がんしかけ人物質、発がん促進人物質が正常な細胞をがん細胞に変えていきます。それでは、がん細胞を作らないようにするにはどうしたらよい1かを考えてみましょう。
がん細胞を作らない方法の第一は、発がんしかけ人物質と発がん促進人物質をできるだけ取り込まないことです。そのためにはなにが発がんしかけ人物質であり、なにが発がん促進人物質であるかを知ることです。
たとえば、タバコタールの中には発がんしかけ人物質と発がん促進人物質の両方が含まれています。タバコを吸うことは、同時にこの二つを体内に取り込むことです。事実、タバコを吸っている人の尿中には、細胞の遺伝子に変異を起こす突然変異原物質が排泄されていますし、血液中のリンパ球に染色体の変化が見られます。また、血液中、尿中に発がん物質のニトロソアミンが検出されたとlいう報告もあります。
タバコを吸うと、タバコタールが直接触れる上部気道や上部消化管に作用するだけでなく一タバコの発がんしかけ人物質、発がん促進人物質が血液中に吸収されて遠くの臓器まで運ばれて作用しているのです。喫煙者には、肺がん、喉頭がん、食道がんのほかに、膀胱がん、子富頸がんが多いというデータがあります。