1.役者の出

役者の顔が初めて見えた時。義太夫狂言の場合など竹本(義太夫)を良く聞いていると次に登場する役名を読みあげるので、揚幕(あげまく)が見えなくても間違えたりする事がありません。揚幕が開く「チャリーン」と言う音に続いて掛けましょう。顔をござや扇で隠して登場する事もあります。その時は扇などをハラリと落とす時に掛けましょう。

全部の役者の出に声を掛けるのは粋とはいえません。シンの役者に主に掛けましょう。もし贔屓の役者が出ている場合は端役だろうがかまう事はありません。遠慮なく掛けてあげましょう。

ですが「掛けてはいけない出」というのもあります。
「寺子屋」の源蔵の出、通称「源蔵もどり」。それから「土蜘(つちぐも)」の僧知籌の出です。どうしてかというと源蔵は深い悩みをかかえての出ですし、「土蜘」の僧は本当の正体は土蜘の精だからなんです。
これらの場合、揚幕は全く音がしないように静かに開けられます。

2.見得をする時
見得には普通ツケが入ります。ツケをバタバタバタと細かく打っている途中でも声を掛けられますが、バーッタリ!と打ち上げるまで待ってかけるのはなかなか難しく、そこで声を掛ける事が出来るのはよほど年季の入った「大向う」です。ツケの入る見得はお芝居の中でも一番のやま場にあることが多いのです。
3.引っ込み

花道を役者が引っ込んでいく時、七三でよく「おこつく」(つまずく)事があります。この時も掛け時です。例えば女形には(女武道のような勇ましい役を別にすれば)基本的に見得というものはありません。見得の一種である小さな「極り」(きまり)があるだけですので、花道七三は数少ないチャンスなのです。

立役は花道の引っ込みで大きな見得をする事がよくありますので、一番の掛け時といえます。

4.その他

次のような場合にも比較的声を掛けやすいです。しかしこれらの場合に声を掛ける為には、やはり芝居の筋を良く知っている必要があると思います。

入り口の戸を音をたてて閉める時
芝居の中心人物が、家の中から物思いしながら出てきてピシャンと戸を閉める時。

物語を始める時
「まぁ、ひととおりお聞きなされて下されませ」というようなセリフの後、長セリフに掛かる前。

柝が入った後
特にもうすぐお終いという「柝の頭」。この時にはほとんどの大向うさんが声をかけます。

それから居所代わり(廻り舞台を使った場面転換)で廻り終わって柝が入った時、新しい場面に重要な登場人物が板付きで登場した場合。

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