30 Minutes NetWorking
No.RT24

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BSCI

第24回Integrated IS-IS(2) 階層ルーティング

■ ES-IS

スーパーインター博士

前回から、OSIプロトコルのルーティングプロトコルであるIS-ISの説明をしている。

ハイパーネット助手

Integrated IS-ISですね。

スーパーインター博士

うむ。CLNPを使ったデータ転送の際に使用されるルーティングプロトコルとして、ES-ISIS-ISがある、という説明をしたな。

ハイパーネット助手

ES-ISが「ホスト-ルータ間」、IS-ISが「ルータ-ルータ間」のルーティングプロトコルでしたよね。

IS-ISとES-IS

[FigureRT23-05:IS-ISとES-IS]

スーパーインター博士

よしよし。ちゃんと覚えているな。
さて、このES-IS、IS-ISにドメインとエリアという概念を組み合わせてみると。

ハイパーネット助手

ドメインとエリアを組み合わせる?
ドメインはAS、エリアはOSPFのエリアと同じような論理的なグループだったですよね? 組み合わせる?

スーパーインター博士

うむ、組み合わせるのだ。
つまり、順番に考えていこう。CLNPデータグラムが発生するのはどこだ?

ハイパーネット助手

データグラムが発生する?
データが作られるのは、ホストですよね。

スーパーインター博士

うむ。次に、インターネットワークの場合、そのデータグラムはどこに送られる?

ハイパーネット助手

そのホストのデフォルトゲートウェイとなるルータです。

スーパーインター博士

そう、つまり、ESからISへ。
一番最初に実行されるルーティングプロトコルはES-ISとなる。これがレベル0ルーティングと呼ばれるルーティングだ。

ハイパーネット助手

れべる0るーてぃんぐ。データグラム転送の時に最初に行われるルーティング?
前回、ES-ISはARPみたいなもの、って話がありましたよね。

スーパーインター博士

うむ。ARPもデータグラム転送の前に必ず行われるだろう?
ES-ISは本題ではないが、簡単に説明しておこう。こうなる。

[FigureRT24-01:ES-IS]

ハイパーネット助手

ESHISH…。
こんにちはパケットまたもや登場ですか。

スーパーインター博士

うむ。Helloはあとでもう1つ登場する。
役割的にはES-ISはやっぱりARPに近い。ESHはゲートウェイへのARP要求、ISHはARP応答、かな。

ハイパーネット助手

でも、ISHによりゲートウェイを知ることができるんですね。

スーパーインター博士

あ〜。う〜ん、そうだな。そう考えるとARPよりはCDPやDHCPに近いと言えるな。

ハイパーネット助手

どっちなんですか? ARPなんですか? DHCPなんですか?

スーパーインター博士

ルーティングプロトコルだな。やはり。

ハイパーネット助手

なんですか、そりゃ?
ARPかDHCPどちらに似てるかって話でしょ? そりゃES-ISはルーティングプロトコルですよ?

スーパーインター博士

似てると言えば似てるし、似てないと言えば似てない。そういうものだ。どちらかといえばARPかな、やはり。
実際の役割としてはルーティングプロトコルというよりも、ディスカバリプロトコル、だな。

ハイパーネット助手

でぃすかばり。発見プロトコルですか。
あ〜、なんか納得できるような。

■ 階層ルーティング

スーパーインター博士

さて、ネット君。さきほどの話の続きだ。
データグラムは、ESから発生し、隣接ISへ送られる。次は?

ハイパーネット助手

次?
次はルーティングして、ベストパスのルータに送られます。

スーパーインター博士

うむ、それはそうなのだが。
では、以下のような図の場合は?

2つのエリア

[FigureRT24-02:2つのエリア]

ハイパーネット助手

え〜。
送信元から、近接ISへ行って。で、ルーティングして宛先のあるエリア2へ接続されている隣のISへ行って…。

スーパーインター博士

あ〜、そこまででいい。
つまり、ES-ISの次は同一エリア内のISへ転送するわけだな。

ハイパーネット助手

そうなりますね。

スーパーインター博士

うむ、それがレベル0ルーティングの次、レベル1ルーティングとなる。

レベル0・1ルーティング

[FigureRT24-03:レベル0・1ルーティング]

ハイパーネット助手

れべる1。
レベル0、レベル1、次はレベル2ですか?

スーパーインター博士

そうだな。
先ほどの図で言えば、次はどのISに渡される?

ハイパーネット助手

ESから隣接ISへ。で、宛先のエリアであるエリア2に接続しているISへ行って、次はエリア2のISへ、ですね。

スーパーインター博士

そう、エリア間のルーティング。これがレベル2ルーティングだ。

レベル2ルーティング

[FigureRT24-04:レベル2ルーティング]

ハイパーネット助手

へへぇ。じゃ、レベル3もあるんですか?

スーパーインター博士

ある。その前にレベル2ルーティングの話をもう少し。
さてネット君。レベル2ルーティングはエリア間ルーティング、つまりエリアを接続する。エリアを接続するという話は前回別の言葉で説明したな?

ハイパーネット助手

エリアを接続する?
エリア…。

スーパーインター博士

ネット君。OSPFですべてのエリアを接続するものは?

ハイパーネット助手

エリア0、バックボーンエリアです。
……。あぁ、そうか。レベル2ルーティングはバックボーンってことですね?

スーパーインター博士

そういうことだ。レベル2ルーティングとは、宛先ESの存在するエリアまでバックボーンを形成する、ということだ。
このレベル1とレベル2ルーティングがIS-ISの役割だ。

レベルルーティング

[FigureRT24-05:レベルルーティング]

スーパーインター博士

同一エリア内ならば、ES-IS・レベル1IS-IS・ES-ISでES間を接続する。
異なるエリアならば、ES-IS・レベル1IS-IS・レベル2IS-IS・レベル1IS-IS・ES-ISとなるわけだな。

ハイパーネット助手

ははぁ、エリア内とエリア間、ESとISで階層が出来ている、と。
ちなみにレベル3はどういうルーティングなんです?

スーパーインター博士

レベル3ルーティングはドメイン間ルーティングだ。
OSIプロトコルでのドメインは、ASと同じ意味だ。つまり?

ハイパーネット助手

つまり?
え〜っと、EGPsが必要?

スーパーインター博士

その通り。
ドメイン間のルーティングプロトコルはIS-ISではなく、IDRPというEGPsで行う。

ハイパーネット助手

ってことは。IS-ISはIGPなんですね。

スーパーインター博士

何をいまさら。
…………っと、言ってなかったか?

ハイパーネット助手

全く

スーパーインター博士

あ〜、なんだ。
河童の質流れというじゃないか、ほら。

ハイパーネット助手

ずいぶんとかわいそうな河童ですね。それは。

■ Integrated IS-IS

スーパーインター博士

ゴホン。
ともかく、CLNSでのルーティングは以下の形になる、ということだ。

Level 0ES-ISESとIS間
Level 1IS-IS同一エリア内IS間
Level 2同一ドメイン内異エリアIS間
Level 3IDRP異ドメインIS間

[TableRT24-01:レベルとルーティングプロトコル]

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

さて、ネット君。
IS-ISのさわりを説明してきたが、何か気がついたことはないかね?

ハイパーネット助手

気がついたこと?

スーパーインター博士

うむ。
ES-IS・IS-IS以外のとあるルーティングプロトコルがちょくちょく名前が出てきているのだよ。それは何だ?

ハイパーネット助手

他のルーティングプロトコルの名前が出てきている?
…………。OSPF

スーパーインター博士

うむ。そうだ。
それは何故かというと、IS-ISはリンクステート型ルーティングプロトコルなのだよ。

ハイパーネット助手

リンクステート型? OSPFと同じ?

スーパーインター博士

そうだ。
OSPFと同じSPFアルゴリズムを使ったルーティングプロトコルだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。リンクステートといえばOSPF以外教えてもらってなかったので、他にもあるとは新鮮です。

スーパーインター博士

うむ。IS-ISはトポロジカルデータベース、SPFツリーを使いトポロジの状態を把握する。LSUによるアップデート、フラッディング、ほぼOSPFと同じ機能を持っている。

ハイパーネット助手

なんか、OSPFそっくりというか、そのままというか。

スーパーインター博士

OSPFそっくりというよりも、OSPFがIS-ISの初期型を参考にして作られたから、OSPFがIS-ISに似ているのだよ。

ハイパーネット助手

あ〜、そうなんですか。親子みたいなもんなんですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。もともとIS-ISはDECnet Phase Vをベースとしたルーティングプロトコルだ。
だが、IS-IS自体はOSPFと同じように優秀なルーティングプロトコルである。こうなるとTCP/IPでも使ってみたくならないか?

ハイパーネット助手

まぁ、そう言われればそうかも。

スーパーインター博士

CLNP以外にIPもルーティング対象プロトコルにしたIS-IS。それがIntegrated IS-ISだ。 ▼ link

ハイパーネット助手

いんてぐれーてっど。「統合IS-IS」。

スーパーインター博士

うむ。CLNPとIPを統合して使えるようにしたIS-ISということだな。
なお、IPだけの運用も可能だ。

ハイパーネット助手

ははぁ、それで「統合」なんですね。
EIGRPみたいに、複数のルーティング対象プロトコルを使える、と。

スーパーインター博士

そういうことだ。
もちろん、Integrated IS-ISは最近のIPルーティングプロトコルの必須事項である以下の機能を持っている。

  • VLSM
  • ルート再配布
  • 経路集約
ハイパーネット助手

ということは、プレフィックス長を含むアップデートを行うってことですね。

スーパーインター博士

その通り。

ハイパーネット助手

ははぁ、やっぱりOSPFと似てるんだ。

スーパーインター博士

確かにIS-ISを理解する方法としてOSPFの動作に当てはめて考えてみるのは有効だな。
ただ、もちろんOSPFとIS-ISは全く同一ではない。

ハイパーネット助手

へぇ。どんな所が違うんですか?

スーパーインター博士

それはIntegrated IS-ISの説明をしながら順に話していこう。

■ エリアとIS

スーパーインター博士

さて、ネット君。
複数のエリアを使うIS-ISは、マルチエリアOSPFと似ている。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

そうだ。マルチエリアOSPFでそれぞれのルータが役割をもっていたように、IS-ISでも各ISは役割を持っている。

ハイパーネット助手

役割? ABRとかASBRとか?

スーパーインター博士

うむ、それだ。

名前役割OSPFとの対比
レベル1ルータレベル1ルーティングを行うスタブエリア内Internalルータ
レベル2ルータレベル2ルーティングを行うバックボーンエリア内ルータ
レベル1-2ルータレベル1・レベル2のルーティングを行うABR

[TableRT24-02:ISの役割]

ハイパーネット助手

レベル1・レベル2・レベル1-2?
行うルーティングのレベルによって分けられるんですね?

スーパーインター博士

そうだ。同一エリア内のみのレベル1ルータ。エリア間を接続しバックボーンを形成するレベル2ルータ。その双方の役割を担うレベル1-2ルータだ。
例えば、先ほど使った図を役割で表現するとこうなる。

ISの役割

[FigureRT24-06:ISの役割]

スーパーインター博士

赤の実線はバックボーンだ。

ハイパーネット助手

真ん中のルータはレベル2だけなんですか?
他のはレベル1-2なのに。

スーパーインター博士

中央のルータは、同一エリア内で他のレベル1ルータと隣接していない。なのでレベル2だけになる。
他のレベル1-2ルータはOSPFでいうところのABR、エリアと他のエリアを結ぶルータになる。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

ただし、OSPFのABRと違う点がある。
それはエリア境界はルータ間のリンク上にあるということだ。

ハイパーネット助手

エリアの境目ですか? 確かに図ではルータとルータの間のリンク上にありますね。

スーパーインター博士

うむ。OSPFではABR内にエリア境界がある

OSPFのエリア境界 IS-ISのエリア境界

Left [FigureRT24-06:OSPFのエリア境界]
Right [FigureRT24-07:IS-ISのエリア境界]

ハイパーネット助手

なんで違うんですか?

スーパーインター博士

それはOSIプロトコルのアドレッシングがIPアドレッシングと異なるからだ。

ハイパーネット助手

う。
そうか、IPアドレスとは別のOSIのアドレッシングが存在するんですね?

スーパーインター博士

もちろんだ。
それは次回にして、今回は終わりにしよう。

ハイパーネット助手

了解です。
30分間ネットワーキングでした〜♪

CDP
[Cisco Discovery Protocol]
Cisco専用の近接ルータ、ブリッジ、スイッチの情報を送受信するプロトコル。
これによりCisco製機器同士ならば、デバイスの情報を交換できる。
IDRP
[InterDomain Routing Protocol]
SPFアルゴリズム
[Shortest Path First Algorithm]
最短パス決定法(SPF)を使い、ループのないSPFツリーを作成するアルゴリズム。
あ、いやループのないツリーを作るのはスパニングツリーアルゴリズムか。
ダイクストラのアルゴリズム[Dijkstra's Algorithm]とも呼ばれる。
DECnet Phase V
ディジタルイクイップイメント社[Digitial Equipment]独自の通信機器およびプロトコルのこと。Phase VはDEC独自のプロトコルだけでなく、OSIプロトコルもサポートする。
Integrated IS-IS
もしくはCLNSとIPルーティング双方を行う Dual IS-ISとも呼ばれる。
RFC1195参照。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • IS-ISではルーティングを階層にわけて行う。
    • ES-IS間のレベル0ルーティング(ES-IS)。
    • 同一エリア内のIS間のレベル1ルーティング。
    • 異なるエリアのIS間でバックボーンを形成するレベル2ルーティング。
    • 異なるドメインと接続するレベル3ルーティング(IDRP)。
  • IS-ISはリンクステート型ルーティングプロトコルである。
  • CLNPとIPの双方(またはどちらか)のルーティングが可能なのがIntegrated IS-IS。
  • ルーティングのレベルによりルータの役割が異なる
  • エリアの境界はL1-2ルータ間のリンク上にある

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