30 Minutes NetWorking
No.RT23

30Minutes NetWorking

BSCI

第23回Integrated IS-IS(1) OSIプロトコル

■ OSI

スーパーインター博士

さて、今回からもルーティングプロトコルの話だ。

ハイパーネット助手

OSPF、EIGRP、BGP4、と続いて4つ目ですね。

スーパーインター博士

うむ。これにRIPv1、RIPv2、IGRPを含めれば現行のルーティングプロトコルのほぼすべてが出揃ったことになる。

ハイパーネット助手

ははぁ。
で、今回のは…いんてぐれーてっどいずいずですか?

スーパーインター博士

インテグレーテッドはいいが、後ろはアイエス・アイエスアイエストゥアイエスと読んでくれ。

ハイパーネット助手

あいえす・あいえす、ですね。
で、Integrated、ってあれですよね、ISDNの「I」ですよね。

スーパーインター博士

そうだ。「統合」という意味になる。

ハイパーネット助手

「統合IS-IS」? 何を「統合」してるんです?

スーパーインター博士

ふむ。それを説明するには、OSIの話からしなければならん。

ハイパーネット助手

OSI? 3分間第5回のOSI参照モデルですか?

スーパーインター博士

まぁ、OSI参照モデルのOSIなのだが。
OSI参照モデルとは何だね、ネット君?

ハイパーネット助手

う〜ん。いまさらOSI参照モデルの説明をさせられるとは思いませんでしたよ。
OSI参照モデルとは異ベンダー間の相互接続を行うためのモデルですよね。

スーパーインター博士

そうだ。OSI[Open System Interconnection]開放型システム間接続、異なるシステムを接続するためのモデルだ。すべてのベンダはこのモデルを基盤にすることにより、オープンな接続を可能とする。

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

それでだ、ネット君。ISO御大がわざわざ作って概念のモデルだけというのは片手落ちという気がせんかね?

ハイパーネット助手

え?
そういわれれば、そうですけど。概念以外ってことは、他に具体的なものがあるってことですか?

スーパーインター博士

うむ。OSIプロトコル・スイートが存在する。

ハイパーネット助手

おーえすあいぷろとこる・すいーと?
OSIにプロトコルがあるんですか?

■ OSIプロトコル

スーパーインター博士

ある。
もちろん、OSIの名前を持つのでわかるとおり、異ベンダ間を接続する標準プロトコルとして開発されたものだ。

ハイパーネット助手

は、ははぁ。
それはTCP/IPプロトコルスイートとは別物なんですね。

スーパーインター博士

もちろん、まったくの別物だ。
細かい説明は省くが、以下のようなスタックになっている。

OSI参照モデルOSIプロトコル
レイヤ7:アプリケーション層VTP・MHS・FTAM・CMIP
レイヤ6:プレゼンテーション層プレゼンテーションサービス/プレゼンテーションプロトコル
レイヤ5:セション層セッションサービス/セッションプロトコル
レイヤ4:トランスポート層TP
レイヤ3:ネットワーク層CMNS/CONP・CLNS/CLNP
ES-IS・IS-IS
レイヤ2:データリンク層IEEE802.2・802.3・802.5
FDDI・X.25
レイヤ1:物理層

[TableRT23-01:OSIプロトコル・スイート]

ハイパーネット助手

はわわわわ。

スーパーインター博士

どうした、ネット君。

ハイパーネット助手

まったく知らなければ、想像もつかないような英略語が大量に…

スーパーインター博士

そうだな。いままではすべてTCP/IPプロトコル・スイートでの話だったからな。
まったく別のプロトコル体系の話になる。

ハイパーネット助手

で、ですよね。こりゃまいっちゃうな。

スーパーインター博士

ネット君がまいっているのはいつもの事だが、さすがにOSIプロトコルを詳細に説明するつもりはない。

ハイパーネット助手

あ、そうなんですか。そりゃほっとします。

スーパーインター博士

だが、そのいくつかはもちろん説明する。
まず、OSIプロトコルを説明する前に、OSIプロトコル独特の用語を知ってもらう必要がある。

ハイパーネット助手

独特の用語。

スーパーインター博士

まず、「ドメイン」「エリア」
簡単に言えば、ドメインとはASだ。

ハイパーネット助手

自律システム。
共通の管理ポリシーで運用されるネットワーク」でしたよね。それをOSIプロトコルではドメインという、と。

スーパーインター博士

うむ。そのドメインはエリアで分割される。エリアは論理的なグループだ。

ハイパーネット助手

なんか、OSPFのエリアみたいですね。

スーパーインター博士

そうだな、OSPFのエリアで考えるのが一番簡単かもな。
このエリアは「バックボーン」で相互接続される。

ハイパーネット助手

バックボーン。OSPFのエリア0ですね。

スーパーインター博士

違う。
OSPFのエリア0、つまりバックボーンエリアと、OSIプロトコルでのバックボーンは異なる。

OSPFのバックボーン(エリア)

[FigureRT23-01:OSPFのバックボーン(エリア)]

スーパーインター博士

すべてのエリアを相互接続するエリア。これがOSPFのバックボーンエリアだ。
だが、OSIプロトコルでのバックボーンは。

OSIのバックボーン

[FigureRT23-02:OSIのバックボーン]

スーパーインター博士

赤のルータと赤のリンクが示す、エリアを相互接続するラインとでもいうべきものだ。特定のエリアを指すものではない。

ハイパーネット助手

は〜、すべてのエリアを接続するエリア、ではなく。すべてのエリアを接続するルートって感じですかね。

スーパーインター博士

そうだ。まさしく「背骨」だな。
それと、ESIS

ハイパーネット助手

いーえすとあいえす?
さっきのプロトコル・スタックに出てきた「ES-IS」「IS-IS」のESとISですか?

スーパーインター博士

うむ。ESはルーティング機能をもたないノードをあらわす。つまりESはホストマシンだ。
一方、ISはルーティング機器、つまりルータを指す。

ESとIS

[FigureRT23-03:ESとIS]

ハイパーネット助手

「ホスト」と「ルータ」をESとISって言うんですね。了解です。

■ OSIレイヤ3プロトコル

スーパーインター博士

異ベンダー間の相互接続を行うために重要なのは、TCP/IPでIPが重要な役割を果たしているのでわかるとおり、レイヤ3のプロトコルだ。

ハイパーネット助手

インターネットワーク。ネットワーク間接続ですね。

スーパーインター博士

OSIプロトコルでは、レイヤ3は2つのサービスがそれを行う。
CMNSCLNSだ。

ハイパーネット助手

こねくしょん-もーど、と、こねくしょんれす?
コネクション型とコネクションレス型?

スーパーインター博士

そうだ。
順番にいこう、CMNSはコネクション型サービスを上位レイヤに提供する

ハイパーネット助手

レイヤ3でコネクション型って、いまいち想像がつきませんけど。
レイヤ4でコネクション型ってならわかるんですけど。

スーパーインター博士

何故だ? 例えばPPPはレイヤ2プロトコルだが、コネクション型だぞ?
PPPの上位がコネクションレス型のIPであったとしても、PPPはレイヤ2でコネクション型サービスを行う。それと同じだ。

ハイパーネット助手

うぅ〜ん。なんとなくわかるようなわからないような。

スーパーインター博士

PPPはエンドノードでコネクションを確立してから、データ交換をする。CMNSはレイヤ3だからエンドシステムでコネクションを確立してから、データ交換をする。TP4はエンドアプリケーションでコネクションを確立してから、データ交換をする。OSIモデルとカプセル化を忘れるな。

レイヤ間接続

[FigureRT23-04:レイヤ間接続]

ハイパーネット助手

レイヤの独立、ですか。わかったような。

スーパーインター博士

よしよし。
CMNSはCONPというプロトコルを使って、レイヤ3でデータを転送する。

ハイパーネット助手

うぅ? サービスとプロトコル?

スーパーインター博士

TCP/IPでは「コネクションレス型インターネットワークデータ転送サービス」を上位レイヤに提供するのために「IP」を使う。
それと同じように、CMNSというサービスを上位レイヤに提供するために、CONPがある、と思えばいい。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

もう一方のCLNSはコネクションレス型サービスを上位レイヤに提供する
CLNSはCLNPを使ってレイヤ3でデータを転送する。

ハイパーネット助手

レイヤ3のコネクションレス型プロトコル。IPみたいなものですね。

スーパーインター博士

そうだ。CLNPはIPと同じと覚えておくといい。
ベストエフォート型配信を行う、エラー訂正はレイヤ4で行う、などなど。

ハイパーネット助手

ははぁ。確かにIPと同じですねぇ。

■ ルーティング

スーパーインター博士

さてさて。レイヤ3の最重要の機能といえば、ルーティングだが。
CMNSとCLNSでは、ルーティングの仕様が異なる。

ハイパーネット助手

へ? サービスによってルーティングが違うのですか?

スーパーインター博士

そうだ。CMNS、つまりCONPを使ったデータ転送の場合。
CONPはX.25PLPが基礎となっており、ルーティングはX.25の機能を使う

ハイパーネット助手

えっくすにじゅうご。
たしか、フレームリレーの元になった規格でしたよね。

スーパーインター博士

そうだ。X.25とフレームリレーについてはいずれ話そう。
本題は、CLNS/CLNPでのルーティングだ。

ハイパーネット助手

IPと同じようなプロトコルの場合、ですね。

スーパーインター博士

うむ。IPと同様にルーティングプロトコルを使用する
ここで使用するのが、IS-ISES-ISの2つのルーティングプロトコルだ。

ハイパーネット助手

あぁ、やっとでてきましたね。IS-IS。いんたーめでぃえいとしすてむ、とぅ、いんたーめでぃえいとしすてむ。
ISはルータだから、ルータ to ルータ?

スーパーインター博士

そう、ルータからルータへ、まさしくルーティングプロトコルだろう?

ハイパーネット助手

じゃあ、ES-ISは、ホスト to ルータ?

スーパーインター博士

その通り。IS-ISはルータ間で、ES-ISはホストとルータ間のルーティングプロトコルだ。

IS-ISとES-IS

[FigureRT23-05:IS-ISとES-IS]

ハイパーネット助手

IS-ISはわかります。
ES-ISはなんですか? ホストとルータ間のルーティングプロトコルってどういう意味です?

スーパーインター博士

うぅむ、そうだな。
ES-ISが何かというと。ネット君、上の図のようなバス型トポロジの場合、ルータからホストへデータを転送するには何が必要だ?

ハイパーネット助手

え? イーサネットですか?

スーパーインター博士

いやまぁ、確かにイーサネットは必要なのだが。
ブロードキャストマルチアクセスネットワーク下で、任意のホストへデータを届けたい。使うプロトコルは?

ハイパーネット助手

任意のホストへデータを届ける? イーサネットで?
それって普通に送れば届きません?

スーパーインター博士

ブロードキャストマルチアクセスネットワークだぞ。
任意のホストに届けるためには、そのホストを特定するものが必要だろう? それはなんだ?

ハイパーネット助手

イーサネットならMACアドレスです。

スーパーインター博士

うむ。では、そのMACアドレスを知るには?

ハイパーネット助手

ARPですよね。

スーパーインター博士

よしよし、ARPにより任意のホストへ届けることが可能になる。
つまり、ARPとは任意のホストへ届けるための「経路」を作るプロトコルであると考えられないか?

[FigureRT23-06:ARPの役割]

ハイパーネット助手

宛先への経路ができる…。
そういう風に考えればルーティングプロトコルっぽいかもなぁ。

スーパーインター博士

うむ。これがES-ISの役割だ。つまりES-ISはTCP/IPでいうとARPに相当するプロトコルだ、ということだな。
実際にはルーティングプロトコルとはやはり違うがな。

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

ちょっとレイヤ3についてをまとめてみよう。

種類プロトコルサービスルーティング
コネクション型CONPCMNSX.25PLP
コネクションレス型CLNPCLNSIS-IS (ルータ間)
ES-IS (ホスト-ルータ間)

[TableRT23-02:OSIプロトコルのサービスとルーティング]

スーパーインター博士

こうなる。
今後説明していくのは、コネクションレス型の説明だ。

ハイパーネット助手

やはりIPと同じ役割だからですか?

スーパーインター博士

うむ。Integrated IS-ISの説明だからな。

ハイパーネット助手

そうだ、博士。
まだIntegrated、何が「統合」なのか説明してもらってないです。

スーパーインター博士

それはまた次回にしておこう。

ハイパーネット助手

うぅぅ。はぐらかされた。
30分間ネットワーキングでした〜♪

ISDN
[Integrated Services Digital Network]
統合サービス・ディジタル網。
OSI
[Open System Interconnection]
ES
[End System]
IS
[Intermediate System]
Intermediateは「中間」の意味。
CMNS
[Connection-Mode Network Service]
コネクション型ネットワークサービス。
CLNS
[ConnectionLess Network Service]
コネクションレス型ネットワークサービス。
TP4
[Transport Protocol class4]
OSIプロトコルのレイヤ4プロトコル。コネクション型。
CONP
[Connection-Oriented Network Protocol]
CLNP
[ConnectionLess Network Protocol]
X.25 PLP
[X.25 Packet Layer Protocol]
X.25は公衆データ網におけるDTE(端末)とDCE(網終端)間のインターフェイスに関する ITU-T 標準。
レイヤ1〜3について規定している。X.25PLPはレイヤ3。
X.25は現在ではあまり使われていない。
IS-IS
[Intermediate System to Intermediate System]
ES-IS
[End System to Intermediate System]
X.25の機能
つまり、CONP/CMNSとはX.25が持つ機能やサービスをそのままレイヤ4以上に提供するためのプロトコル/サービスです。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • ISOが作成したOSIにはモデルとプロトコルがある。
  • OSIプロトコルは異ベンダ間を接続するための標準プロトコル。
  • OSIプロトコルでは「ES」はホスト、「IS」はルータをしめす。
  • IPと同様のコネクションレス型のサービスを提供するのがCLNS、プロトコルがCLNPである。
  • CLNP/CLNSではルータ間を接続するIS-IS、ホスト-ルータ間を接続するES-ISの2つのルーティングプロトコルを使用する。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp