30 Minutes NetWorking
No.RT08

30Minutes NetWorking

BSCI

第8回マルチエリアOSPF(1) OSPFルータタイプ

■ OSPFルータの動作

スーパーインター博士

ネット君。
OSPFルータがコンバージェンスに達して、ルーティングテーブルを作成するまでの手順を覚えているかね。

ハイパーネット助手

こんにちはパケットです。

スーパーインター博士

いやもう、そのネーミングが気にいったのはわかったから。
もうちょっと正確に。

ハイパーネット助手

え〜っと。Helloパケットで近接ルータとネイバーになって、DRとBDRを選出して。
DR/BDRと隣接関係になって、データベースを交換する。

スーパーインター博士

うむ。その後は、イベントによるトリガアップデートで、LSUを送受信する。
LSUを受け取った各OSPFルータはどうする?

ハイパーネット助手

LSUを受け取ると、データベースが変更されるわけですから。
新しいルーティングテーブルを再計算する、ですよね。

スーパーインター博士

うむうむ。よろしい。

ハイパーネット助手

えへへ。

[FigureRT08-01:OSPFルーティングプロセス]

■ OSPFの問題点

スーパーインター博士

さて、ここで問題なのは、「再計算」の部分だ。

ハイパーネット助手

問題?
なにか問題があるようには見えませんけど。

スーパーインター博士

リンクステート型ルーティングプロトコルを使用するルータは、高性能である必要がある、と以前話したな。
何故だ?

ハイパーネット助手

坊やだからさ…
なんちって、へへへ。

スーパーインター博士

…。

ハイパーネット助手

やだなぁ、博士。次の台詞は、
「…、我々に正義があるからだっ!!」ですよ。

スーパーインター博士

やかましい。君と話していると話が進まん。
ともかく、データベースとツリー用のメモリが必要なのと、計算にマシンパワーが必要だからだったな。

ハイパーネット助手

あぅ〜。
渾身のギャグが流されてしまった。

スーパーインター博士

あれが「渾身のギャグ」か? もうちょっとエスプリを効かせたまえ。
つまり、この高性能が必要な理由が、ネットワーク内のルータの台数が増えると問題になる

ハイパーネット助手

ルータの台数が増えると問題?
ルータの台数が増えるってことは、それだけデータベースとツリーに大量のメモリが必要になりますよね。

スーパーインター博士

うむ、さらにLSUが増えることによる再計算回数の増大だ。
もちろん、ルーティングテーブルが大きくなることによる弊害も発生する。

ハイパーネット助手

は〜。確かにLSUが増えると、データベースの更新が頻繁になって、ツリーの再計算回数が増えますよね。
そりゃ大変だ。

スーパーインター博士

うむ。これをなんとかしなければならない。さぁ、ネット君どうするかね?
LSUはDRから全ルータへ配布されるな。LSUをブロードキャストパケットと例えて考えてみたまえ。

ハイパーネット助手

LSUをブロードキャストパケット?LSUが増えるってことはブロードキャストパケットが増えるみたいなものと考えると…。
ブロードキャストドメインを分割することが、その場合の対策だけど…。

スーパーインター博士

そうだ。それでいい。
つまり、OSPFのLSUが届く範囲を分割することが対策になる。これをエリアという。

ハイパーネット助手

えりあ…。

■ マルチエリアOSPF

スーパーインター博士

うむ。同一AS内を複数のエリアに論理的に分割する
このように複数のエリアに分割して運用するOSPFをマルチエリアOSPFという。

マルチエリアOSPF

[FigureRT08-02:マルチエリアOSPF]

スーパーインター博士

各エリア内は、今まで説明してきたOSPFの動きそのままだ。

ハイパーネット助手

むむ?
ということは、普通にLSUをフラッディングするってことですか。

スーパーインター博士

そうだ。違いはエリアを分割するルータで現れる。
大雑把に説明すると、エリア内のルーティングアップデートを他エリアへ送らない

ハイパーネット助手

なるほど、ブロードキャストドメインの分割みたいですね。
ブロードキャストを他のドメインへ送らない。

スーパーインター博士

細かい説明は先々説明するとして。
まず覚えることは、ルータの役割だ。

ハイパーネット助手

ルータの役割?
エリアを分割する、とかそういうことですか?

スーパーインター博士

その通り。
マルチエリアOSPFでは3種類のルータが存在する。まず内部ルータ

Internal Router

[FigureRT08-03:Internal Router]

スーパーインター博士

「IN」と書かれたルータだ。
まぁ、名前と場所で大体わかると思う。

ハイパーネット助手

他のエリアと接していないルータですね。
そのエリアの中のルータってことですか。

スーパーインター博士

うむ。
2つ目は、ABR

Area Border Router

[FigureRT08-04:Area Border Router]

ハイパーネット助手

これもなんとなくわかります。
異なるエリアを接続するルータですね。

スーパーインター博士

うむ、その通り。
最後が、ASBR

Autonomous System Boundary Router

[FigureRT08-04:Autonomous System Boundary Router]

スーパーインター博士

ABRとASBRでは「A」と「B」がかぶっているが、違う言葉の略語なので気をつけるよう。
他自律システムとの接続を行うルータのことだ。他のルーティングプロトコルから取得した他AS間の経路情報をOSPFにルート再配送して内部に流す

ハイパーネット助手

他のルーティングプロトコルからの情報を流す?
ってことは、他のASの情報ですからEGPからの情報ですか?

スーパーインター博士

ちょっとややこしいが、ここで言う自律システムとは違うルーティングプロトコルが運用されているネットワーク群のことだ。なので、OSPF以外のルーティングプロトコルの情報を再配送するルータということだな?

ハイパーネット助手

OSPF以外って、RIPとかIGRPとかですか?

スーパーインター博士

うむ。

ハイパーネット助手


他のASからの情報なのに、RIPやIGRPなんですか?

スーパーインター博士

ネット君がいう自律システムは、「同一組織による同一の管理ポリシーに従って運用されているネットワーク群」という意味だ。
この自律システム間の情報は確かにEGPでやりとりする。

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

だが、OSPFでのASは、さっきも言ったが「違うルーティングプロトコルが運用されているネットワーク群」という意味だ。
なので、他ASの情報はRIPやIGRPでも送られてくる。

ハイパーネット助手

ううぅ?

スーパーインター博士

まぁ、そうだな。ASBRは「OSPF以外のルーティングプロトコルで動いているネットワークと接続する」ルータだ、と覚えておきたまえ。

ハイパーネット助手

はぁ。そうなんですか。

■ OSPF LSAタイプ

スーパーインター博士

さて、このルータタイプを説明するにはLSAタイプを説明しなければならない。

ハイパーネット助手

LSAタイプ?
LSUの中に含まれるそれぞれの情報がLSAでしたよね。

スーパーインター博士

うむ。その情報の中身によってタイプに分ける
OSPFでは11種類のLSAタイプが存在する。重要な5種類をまず覚えてもらおう。

Type名前役割送信するルータ
1ルータリンクエリア内のルータの各インタフェースの情報全ルータ
2ネットワークリンクエリア内のルータの一覧情報DR
3集約リンク同AS内の他エリア内ルータへの経路情報。ABR
4ASBR集約リンク同AS内のASBRへの経路情報。ABR
5AS外部リンク他AS内ルータへの経路情報ASBR

[TableRT08-01:LSAタイプ]

スーパーインター博士

順に説明していこう。
まずタイプ1とタイプ2。これはエリア内にのみフラッディングされる。つまりシングルエリアでのLSAだな。

ハイパーネット助手

ん〜っと。
今までの回で説明してきたLSAのことですか?

スーパーインター博士

そうだ。OSPFのアップデートと聞いて普通に考えるアップデート情報だ。
ASBRもしくはABRが他エリアへは送らない

ハイパーネット助手

ははぁ、そうやってLSAの届く範囲を限定しているんですね。
でも、それだと他エリアの情報がはいってこないことになりませんか?

スーパーインター博士

うむ。なのでABR・ASBRが集約して伝える
タイプ3と4がそうだ。

[FigureRT08-05:LSAタイプ3・4]

スーパーインター博士

ポイントは集約ってところだな。
集約して送るため、内部ルータはルーティングテーブルのサイズが大きくならないですむ。

ハイパーネット助手

BSCI第3回で説明してた経路集約ですね。
へへぇ、便利なものですね。

スーパーインター博士

さらに、他エリアに頻繁にトポロジの変更があったとしても、集約した結果が前と変わらないならば、内部ルータにそれを送る必要もないわけだ。

ハイパーネット助手

ははぁ、それで再計算の回数を減少させているわけですね。
そういえば、「エリア内にフラッディング」とありましたが、ABRはDRも兼ねるんですか?

スーパーインター博士

ん? あぁ、そういうわけではない。
もしABRがDROTHERだった場合は、一度そのエリアのDRに送ることによって、そのエリアのDRがフラッディングすることになる。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

ちょっとまとめてみよう。

ルータタイプ役割
内部ルータエリア内部のアップデートと、エリア外の集約アップデートを受け取る。
ABRエリア外のアップデートを集約してエリア内に送る。
ASBRAS外の経路情報を再配送してAS内に伝える

[TableRT08-02:ルータタイプ・役割]

スーパーインター博士

というところだ。
特にABRの役割は重要なので、覚えておくように。

ハイパーネット助手

博士、LSAタイプ5と、ASBRの説明があまりされていませんけど?

スーパーインター博士

そう焦るな、ネット君。
それは先でやるから安心しろ。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

さて、今回はここまでだな。

ハイパーネット助手

いぇっさー。
30分間ネットワーキングでした〜♪

マルチエリアOSPF
[Multiple Area OSPF]
今まで説明してきたOSPFの動き
マルチエリアに対して、シングルエリア[single area]と言います。
内部ルータ
[Internal Router]
インターナルルータとも言います。
ABR
[Area Border Router]
エリア境界ルータ、と訳される。
ASBR
[Autonomous System Boundary Router]
自律システム境界ルータ、と訳される。
EGP
[Exterior Gateway Protocol]
異なるAS間の制御経路プロトコル。
BGP4が代表例。BGP4については先の回で説明します。
ルート再配送
[Route Redistribution]
とあるルーティングプロトコルから取得した情報を、別のルーティングプロトコルで他ルータに情報を送ること。
詳しくは先の回で。
集約
[summary]
サマリ、と表記されている場合もある。
よって、タイプ3とタイプ4は「サマリLSA」と言う場合もあります。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • ネットワーク内にルータの台数が多くなると問題が発生する。
  • ネットワークをエリアに論理的に分割することによって、問題を解消する。
  • エリア内情報(LSAタイプ1・2)はABR・ASBRによってエリア外には送られない。
  • エリア外の情報は、ABR・ASBRが集約してエリア内にフラッディングする。
  • OSPFルータタイプ、LSAタイプは区別できるようにしておこう。

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