妖奇譚 其の壱 もののけたちの住む街

                                                            2.闇の世界

街は昼の世界から闇の世界へ様相を変えていきます…。


■TSUTAYAビル20:30

氷牙:しばらく眼下のスクランブル交差点をぼうっと眺めた(実は真剣に街を歩く女性を物色中)後、パソコンを開く。編集長の言っていた”世田谷で起きたという母子変死事件”についてネットで調べる。
GM:ネット世界は情報量が多い。自分の必要とする情報が正しく入手できるか技能判定をしてください。<コンピューター>技能を使っていいよ。
氷牙:<コンピュータ>技能レベルは12。判定は3Dで…12。ギリギリ成功かな。

GM:得られた情報は。

相田 祥子(あいだ しょうこ)(23歳)は未婚の母で、長男の海渡(かいと)(3歳)と二人で、世田谷区三軒茶屋のアパートで暮らしていた。3ヶ月ほど前、海渡が食べ物をのどに詰まられて窒息死した。しかし、体に複数のあざがあり、虐待を受けていた疑いがある。近所の住人も母親の怒鳴り声と子供の泣き声を頻繁に耳にしていたという。祥子は、その事件以後、極度の食欲不振に陥り、先週、自宅の居間で餓死しているところをアパートの大家に発見された。死後1ヶ月ほど経っていて死体はミイラ化していた。母子変死事件といったが、警察では両件とも事故の扱いだ。
事件に関する基本的な情報はこんなところだ。都会生活の寂しい死。氷牙の記事のテーマ「都会の闇」、その一部であることには間違いないが、編集長が変死といった理由は他にあった。三軒茶屋近辺で、極度の食欲不振による餓死事故が相田 祥子を筆頭に合計3名発見されていることが分かった。

GM:まぁ、この情報がなんなのかは後のお楽しみって事で…。
氷牙:ふーん。事件の概要は分った。人間の世界では怪事件の部類に属するのだろうが、闇の世界ではありうる話だと思う。打ち明けるが、オレは人間界からすると闇の世界の住人ってことになるんだろう。
GM:お?少しづつ正体を明かし始めた?
氷牙:ふふふ。

GM:そんなこと言ってる間に、既に約束の時間の10分前になっていた。氷牙の座っている席からはちょうど3階に向かうエスカレーターが見える。
氷牙:おっと、約束の時間が近づいている。パソコンをケースにしまってカフェラッテを一気に飲み干してから、布で包んだ棒を持ってエスカレーターで4階へ向かう…。邦画ビデオコーナーを一回りして22:00になるのを見計らって、ロマンポルノビデオコーナーの隙間にパソコンケースを隠し、棒から布を剥がしつつ一気にアダルトビデオコーナーの仕切りを通り抜けた。

GM:いよいよ戦闘態勢に入ったって感じだね。
氷牙:そろそろクライマックスでしょ♪

裏コメント:チャットセッションと違って掲示板セッションは時間的なゆとりがあるので、普段でははしょりがちな通常行動シーンもじっくりプレイできますね。


■TSUTAYAビル22:00

GM:氷牙が布の包みから取り出したものは日本刀であった。こんなものを持って店内をうろついていれば当然不審者扱いされるであろう。しかし、氷牙の姿は店の防犯カメラには映ってはいなかった。彼自身が映らないように意識すれば、決して写ることはないのだ。
氷牙:かっこいー!
GM:日常から隔離された18禁ののれんの向こう側は、人がすれ違える程度の狭い通路の両サイドの棚に、如何わしいパッケージとタイトルのビデオやDVDが並ぶ異様な空間であった。通路は突き当たっては折り返すというS字カーブを繰り返す構造で、好みの趣向ごとに分類されている。
氷牙:ずい分詳しいね。
GM:下見に行ってきたからね!
氷牙:うお!

GM:店内には数人の客がいるが、皆今晩のおかずの選定に必死で、日本刀を持った男の侵入には気づいていない様子だ。氷牙が2つ目の突き当りを曲がろうとしたとき、店内に薄紫色の靄が立ち込め、これを合図に物色中の男共の態度に変化が起きた。

2つのパッケージを眺め、どちらにしようか悩んでいた男は、2つとも手にしてその場を去り、奥の新作コーナーへ向かおうとしていた男は急に向きを変え、出口へ向かう。コーナーの一番奥にある販売レジの店員も休憩時間なのか、その場を離れ、出口へと向かった。そう、アダルトコーナーにいた人間は、皆、外へ出て行ってしまったのだ。ロックミュージシャンのような長髪パーマに皮ズボンを穿いた男(口には禁煙パイポ)を最後に誰ひとり居なくなった。

いや、居た。女子高生もののコーナーに小太りの男が一人、そいつは月明かりの眩しい夜にもかかわらず、レインコートを着て、周りの状況をまったく気にせずに物色している。


■同時刻、18禁アダルトビデオコーナーのれん前

GM:次々とのれんをくぐって男たちが出てくる。その様子を見て、白いセーラー服の女子高生があきれた顔をしている。
たまき(NPC):世の中には、さみしい男性がこーんなにいるのねぇ。
GM:最後にロッカー風の中年男が出てくる。
たまき:ジミーさん、おつかれ。じゃあ、後はあたしが見とくから。
GM:たまきは赤い首輪に金色の鈴を着けた白い猫に姿を変え、ジミーさんと呼ばれた男の腕に一度ぴょんと乗り、更にその後ろのビデオの棚の上に跳び乗った。

GM:さて、解説です。この薄紫色の靄はジミーさんの人払いの妖術です(今回GMの都合で自動成功にしています)。妖術名は【場流散(バルサン)】といいます。レベル10で持続時間は10分です。どんなに暴れても人間は入ってきません(意識の外ってことでしょうか)。ちなみにこの靄は人間には見えません。
氷牙:【場流散(バルサン)】ってのはいいね♪

GM:ちなみに、ジミーさんは元ガンズのスラッシュのイメージでよろしく。
氷牙:名前しか知りません…。
GM:リプレイを読んでくれている方たちにはわかる。
氷牙:あっそう。

裏コメント:だんだん現実世界から”闇の世界”に遊離し始めましたね〜。



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