保存車の世界

鉄道車両

近江鉄道ミュージアムの保存車

近江鉄道では、2007年の彦根城築城400年祭に合わせて、彦根駅構内の保存車両を整備して「近江鉄道ミュージアム」を開設、グリーンシーズンの土休日に開館しました。引き続き2008年以降も特定日に開館しています。
近江鉄道は、元々古典機関車を多数現役運転していることで有名でしたが、また彦根駅構内には数々の古い車両を留置していることでも知られていました。貴重な自社財産をこのような形で公開して頂けるのは、嬉しい限りです。維持経費は少なくないと思われますが、息長く続けてほしいものです。
ここまでは最初に撮影に行った2008年に記述した部分ですが、それから約10年を経た2017年に、保存車を解体するという発表がありました。いくら貴重な文化遺産だと言っても、民間企業に求める範囲には限界があるようです。(その後、2018年12月にこの施設は閉園となってしまいました)

近江鉄道ミュージアム

全景
近江鉄道ミュージアム全景

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

彦根駅の自由通路から見下ろした近江鉄道ミュージアムです。中央に古典機関車3両を並べています。この3両が主役と言うことでしょう。機関車の横には、出所のよく分からないパンタグラフや車輪が展示されています。会場には右側の出入口から入ります。仮の机に係員がおり、入場券を売ってくれます。
後ろの茶色い建物が資料館。かなり古い貴重な図面なども保存されているほか、ミュージアムショップの体をなしています。

保存車
ロコ1101

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ロコ1100形(1101号)

阪和電気鉄道(現在のJR阪和線の前身)が1930(昭和5)年の開業時に用意した国産の凸型電気機関車。構内入換用に活躍していましたが、戦時中の国鉄買収で国鉄機となり、1951(昭和25)年に近江鉄道に移籍しました。
近江鉄道でも構内入換を主に使用され、記号番号も阪和時代のままです。
(2019年に解体)

保存車
ED143

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ED14形(3号)

国鉄が東海道線電化に合わせて輸入したアメリカ製の箱型電気機関車。
石灰石輸送の開始に強力な電気機関車の必要に迫られていた近江鉄道が1960年代に4両とも国鉄から譲受しました。私鉄の現有電気機関車としては最高出力を誇るそうです。
国鉄時代の形式番号を継承。
(2019年に解体)

保存車
ED144

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ED14形(4号)

保存車の中ではパンタグラフも下げられ、場所的にも端に追いやられていますが、1996年に国鉄時代のブドウ色に塗装変更されている変り種。
同形機ながら側面の窓形状など部分的にバリエーションがあるのが旧形機関車の特徴です。この車両は正面貫通扉が鋼製になっています。
(2019年に解体)

保存車
ED141

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ED14形(1号)

ED14形は全4両が国鉄から近江鉄道入りし、そのすべてが現在近江鉄道ミュージアムに保存されています。これはその1号2号の並びです。1号は正面貫通扉が原形を保っています。
(2019年に解体)

保存車
ED314

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ED31形(4号)

伊那電気鉄道(現在のJR飯田線の一部)が1923(大正12)年に導入した国産電気機関車。当時としては例がない国産大型電気機関車だったそうです。伊那電気鉄道の戦時買収に伴い国鉄に移籍し、1950年代に近江鉄道が譲受しました。
上のED14形とともに国鉄時代の形式番号を名乗っています。
(2019年に東近江市の近江酒造に移転保存)

保存車
モハ501

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 モハ500形(501号)

機関車中心の近江鉄道ミュージアムの端のほうに4両が押込まれている500系電車。1969〜83年の長期間に渡って増備された16m3扉車で、近江鉄道の事実上のオリジナル車としては最終系列。
車歴は多種多様ですが、実際は新造したボディに国鉄の部品を組み合わせたもの。現在の台車は1980年代に交換されたもの。
保存されている2編成のうち1編成は外側に車番が残るためモハ506号+クハ1506号であることが分かります。写真の編成は、ステンレスの飾り板などの特徴からモハ501号+クハ1501号のようです。
(モハ501以外は2012年に解体。モハ501は遊具として残されていたものの2019年に解体)

保存車
トム206

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 トム200形(206号)

入口付近に保存機関車とともに置かれている無蓋貨車。何の変哲もない長物車かと思いましたが、参考文献をめくってみると車籍上元国鉄の無蓋貨車を出自とするトム200形の一員で、最後は鉄製のアオリ戸を撤去されて保線用の控車となっていた車両のようです。(形式番号ともに推定)
(2019年に和歌山県の有田川鉄道公園に移転保存)

保存車
モ245

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 モーターカー

ミュージアムの入口脇に貨物列車を牽引しているような感じで置いてある黄色いモーターカー。側面にはモ245と記号番号が書いてありますが、車籍のない機械だと思われます。
左に見えている茶色い建物は資料館で、建設当時の貴重な図面をはじめ、様々な資料が展示されています。またミュージアムショップにもなっています。

保存車
ワ103

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ワ100形(103号)

入口付近のモーターカーにつながって並べられている貨車の1両。車番が書いてあるものだけを撮影しました。 詳細は不明。

保存車
ワフ8

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ワフ1形(8号)

やはりモーターカーの後ろにつながっている貨車のうちの1両。かなり車体が錆びていますが、ワフ8の文字が見えます。明治時代の木造貨車を戦後に鋼体化したものだそうですが、鋼体化が実際の改造か名義上のものかは不明とのこと。有蓋貨車の一端に車掌室を設けた緩急車は、かつては貨物列車に必ず連結されていたものです。

彦根駅構内の廃車体

廃車体

西武鉄道から譲受してそのまま留置されていると思われる廃車体。西武鉄道からは701系が何両が譲り受けられて両運転台のモハ220形に生まれ変わっていますが、雨樋位置の高いこのモハ801形は今のところ何のタネ車にもなっていないようです。
中間電動車1ユニットが留置中。701系401系との共通性が高いので部品取り用でしょう。

元西武鉄道 モハ801形(808号)
モハ808

撮影:彦根駅(2008.9.23)

廃車体

こちらもほぼ西武鉄道時代のままの状態で留置されている車両。西武から大量に譲受した401系は、近江鉄道の体質改善の切り札として800系電車に改造されて主力として活躍中ですが、この2両ユニットはそのタネ車としてこれから改造されるのか、部品取り用なのか、そのままの状態で留置中です。

元西武鉄道 クモハ401形(420号)
クハ420

撮影:彦根駅(2008.9.23)

留置車

上の写真と同形の西武401系を改造した近江鉄道800系の先頭車1両がそのまま置いてありました。番号からすると新しいので、編成を組む相手の完成を待っている状態なのか、或いは他の理由で留置中なのか、その辺は分かりません。
近江鉄道では自社で正面を交換し、連結面の裾部を欠き取るなどの改造を施して、このような車両に仕上げています。

近江鉄道 モハ800形(811号)
モハ811

撮影:彦根駅(2008.9.23)

過去の車両

保存車
LE13

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 LE-10形(13号)
LE13

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

1986年に八日市ー貴生川間のワンマン化等コスト削減のために導入された富士重工製レールバス。この時期、第三セクター鉄道を中心に導入されたLE-Carと呼ばれる車両で、電化区間への気動車導入事例としては、名古屋鉄道とともに話題となりました。しかし、ピーク時の輸送量不足や耐用年数の問題などから、結果的に電車へ置き換えられました。
全5両導入されたうち1両が保存されています。一旦は廃車になったためか、外の車号文字は取り外されています。
右はロングシートの車内の様子。バス用のワンマン機器などがそのまま残されています。
(2012年に解体されたそうです)
保存車
ED4001

撮影:近江鉄道ミュージアム(2008.9.23)

近江鉄道 ED4000形(4001号)

東武鉄道が昭和初期にイギリスから輸入した箱型電気機関車。左右非対称の正面スタイルが特徴です。
近江鉄道入りは1973年と遅く、やはり石灰石輸送用に活躍しましたが、輸送量の減少で休車になりました。形式番号は東武時代のままで、東武時代から1両のみの存在でした。
(この車両は2008年に東武博物館へ移送されました。)

参考文献
  1. 高田圭(2000)「近江鉄道」(鉄道ピクトリアル00-5増)44-55
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