HOME > アラカルト > 久遠の空 > タブレット交換
久遠の空 −1枚の写真に寄せて−
「昭和」という響きがもう既に懐かしい過去のものであるかのようになってしまった今、「昭和」というのはすべてがレトロであり、レトロというのは「昭和」であるかのように語られることが多くなりました。しかし、「昭和」というのは64年もの長い年月をさすもので、とても昭和レトロの一言でくくられるものではありません。特に私たち昭和生まれの人間にとっては、昭和の各年代はそれぞれ全く別の時代であったはずです。
そこで、そういった昭和のある一コマを切り取った写真をご紹介するコーナーを作ってみました。
タブレット交換(1978年)
撮影:国母駅(1978.12.30)
EF15形電気機関車の牽引する貨物列車のタブレット交換風景です。
場所は身延線の国母駅。甲府を出た身延線が大きく回り込んだ先の甲府市街地の南端に位置します。
今、甲府方面からやってきた貨物列車の機関助士が、この駅を通過する際、タブレット授柱から新たなタブレットを受け取った瞬間です。このタブレットを持っていることが、次の交換駅までの単線区間に他の列車がいない証明になります。単線区間を安全に運行できるのです。
当時、日本のローカル線にはまだこのような人力による保安システムが普通に運用されていました。駅を通過しながらタブレットを受け取るために、機関士、運転士には助士が必要でしたし、列車運行中には駅員が常駐し、隣接の交換駅との間で電話と閉塞機によって列車の行き来を連絡しあっていました。
ちなみに、タブレットの大きなワッパは、飽くまでも授受するための持ち手のようなものであり、肝心の通票は、根元の部分(写真で言えば機関助士が手にしている部分)のケースに収められた直径10cmの小さな真鍮の円盤です。
Copyright "Age25". All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.