■ コアとエッジ
さて、再配布の話だが。
どのような場合に再配布が行われるか、という話をしておこう。
1つのルーティングプロトコルでは駄目な理由、ですね。
うむ。いくつか考えられる。
- IGPを変更する。移行途中では再配布が必要
- 新しいIGPを使いたいが、システム上(ルータが対応していないなど)以前のものがどうしても必要
- ベンダの問題。Cisco独自(IGRP・EIGRP)と、他のルーティングプロトコルを併用せざるを得ない場合
まぁ、大雑把に言うと、こんな感じだな。
これらの共通点として。
共通点?
本来使用したいプロトコルが存在するが、それ以外がどうしても必要、という状況だ。
ははぁ。このルーティングプロトコルを使いたいんだけど、他のがどうしても必要って場合ですか。
確かに、3つともそういわれればそうとも言えますね。
だろう? 多い例は、よりよいルーティングプロトコルを使用したいのだが、古いプロトコルが存在するっていう状況だな。さっきの1つ目と2つ目がコレに当てはまる。
移行途中で古いのが残っている。新しいのに変えたいけど、一部のルータが対応してない…。
例えば、RIPだったネットワークをOSPFに変える、とかですか?
EIGRPを使いたいが、Ciscoルータではない一部のルータはOSPFを使う、という場合もある。
この本来使いたい側をコア、もう一方をエッジという。
こあ、えっじ。
コアプロトコル、エッジプロトコル。コアAS、エッジAS、という区別だな。
普通、コア側はEIGRP、OSPF、BGPなどだ。
え〜っと、新しいルーティングプロトコルだからですか?
そうだな。先ほどの項目からすれば、やはりコアは新しいプロトコルや、AS間で使われるプロトコルが入るからな。
ふむふむ。
■ コアプロトコル・OSPFの設定
では、OSPFがコアプロトコルの場合の設定を説明しよう。
- Router(config)#router ospf process-id
- Router(config-router)#redistribute protocol process-id [metric metric-value] [metric-type metric-type] [route-map map-tag] [subnets]
うわ、長い。
ちなみに博士、[ ]ってなんですか?
[ ]で囲まれているものは任意のパラメータということだ。
まずポイントはコアプロトコルのルーティングプロトコル設定モードで実施する、という点が1つ。
最初に、router ospfってやってますね。
うむ。各パラメータは以下の通り。
protocol | エッジプロトコル。connected、bgp、ripなど |
---|---|
process-id | AS番号またはOSPFのプロセスID |
metric-value | シードメトリック。デフォルトは20 |
metric-type | OSPFの外部リンクタイプ。1か2を入れる。デフォルトは2 |
map-tag | ルートマップを使用した場合のタグ |
subnets | サブネットも再配布する場合はこのパラメータを入れる |
[TableRT31-01:OSPF再配布コマンドのパラメータ]
う、う〜ん。
何かね、ネット君。
protocol、process-id、metric-valueはわかりますけど、metric-typeってなんですか?
外部リンクタイプ、1か2って?
おや、OSPFのところで説明してなかったか?
……してないな。
博士〜。
ま、まぁ。ネット君。猿もおだてりゃ木に登るというじゃないか。
猿が木に登ってもめずらしくもなんともないです。
う、うむ。そうだな、確かに。
ともかく、OSPFには外部ルートを通達するLSAが2種類あるのだよ。
LSA Type5にですか。
そうだ。外部タイプ1(E1)と外部タイプ2(E2)の2種類だ。
ASBRが外部ルートをアドバタイズする場合、どちらかを指定する。
どう違うんですか?
AS内にASBRが複数あるならE1、1つならばE2を使う。
違いはこうなっている。
[FigureRT31-01:LSA Type5のE1とE2]
途中のメトリックを加算するかしないか?
そうだ、ASBRが2つ以上ある場合、どちらのASBRを使うか判断するために、E1を使いメトリックを加算していく。
一方、1つならば、どちらにしろそのASBRを使うのでメトリックは加算されない。
でも、上の図だと、E2の場合でも上のパスか、下のパスか判断する必要があるじゃないですか?
その場合は、ASBRへのベストパスを使うわけだ。
どっちにしろ外部AS宛のデフォルトルートになるわけだから、メトリックはあまり関係ない。
う〜ん、そういうものなのかな。
E1ならばシードメトリックを上手く変えれば、使うASBRをASごとに変えることも可能になるわけだしな。
あともう1つ、subnetsキーワード。これがないとサブネットを再配布しない。
サブネットを配布しない?
そうだ。例えば、RIPで10.1.1.0/24というネットワークを使っていた場合、subnetsキーワードがないと、そのネットワークは再配送されない。
へ〜。なんか経路集約っぽいですね。
■ コアプロトコル・EIGRPの設定
もう1つ、コアプロトコルとしてEIGRPを使った場合の設定を説明する。
- Router(config)#router eigrp as-number
- Router(config-router)#redistribute protocol process-id[metric metric-value] [route-map map-tag]
OSPF以外をエッジプロトコルとした場合は上のようになる。
基本的にはOSPFの場合と変わらないな。
OSPF以外を? OSPFの場合違うんですか?
うむ。OSPFをエッジとした場合は以下のようになる。
- Router(config)#router eigrp as-number
- Router(config-router)#redistribute ospf process-id[metric metric-value] [match internal | external 1 | external 2] [route-map map-tag]
まっち?
いんたーなる、えくすたーなる1、えくすたーなる2?
うむ。意味はこうだ。
match | internal | OSPFのASの内部ルートのみを再配布 |
---|---|---|
external 1 | OSPFのASが持つ外部ルート(E1)のみを再配布 | |
external 2 | OSPFのASが持つ外部ルート(E2)のみを再配布 |
[TableRT31-02:EIGRP再配布コマンド・matchパラメータ]
内部のみ? 外部ルートのみ?
どういうことです?
つまり、こういうことだ。
[FigureRT31-02:EIGRP再配布コマンド・matchパラメータ]
あぁ。エッジプロトコルのOSPFが知っている外部ルートをどうするか、っていうことですか。
そういうことだ。internalではなく、external 1 external 2を使えば、OSPF-AS内のルートを知られることなく、OSPF-ASの向こう側と接続できるわけだな。
なるほど。
このmatchのキーワードはBGPをコア、OSPFをエッジとした場合も使用する。
さてさて、ネット君。EIGRPの話を思い出してくれたまえ。
EIGRPの話? どこです?
BSCI第11回だ。
11回っと…。
あ〜、「ルート自動再配送」なんて話をしてますよ。
うむ。EIGRPの再配送ポイント1。
同じAS番号を持つIGRPとは自動的に再配送を行う。
手動設定がいらないんですね。IGRPとEIGRPは仲がいい、と。
うむ、そしてもう1つ。
通常は同じプロトコルスイートのルーティングプロトコル同士でのみ再配送可能なのだ。
えぇ〜っと。ということは、普通、IPX-RIPとOSPFでは再配送できない?
うむ、だがEIGRPでは設計次第でIPX-RIPかAppleTalk RTMPと再配送可能だ。
は〜。さすがマルチルーティングプロトコル。
■ シードメトリックの設定
さて、再配送する場合のシードメトリックだが、redistributeコマンドで一気に行うことも可能だが、個別で設定も出来る。
まず、IGRP、EIGRPがコアプロトコルの場合。
- Router(config)#router eigrp as-number
- Router(config-router)#default-metric bandwidth delay reliability loading mtu
帯域幅、遅延、信頼性、負荷、MTUの値をそれぞれ決めておかなければならない。
あ〜、そうそう。IGRPとEIGRPは5つの値からメトリックを計算するんでしたよね。
そう、K値を使ってメトリックを算出するな。
一方、それ以外のプロトコルの場合は、こうなる。
- Router(config)#router prtocol as-number
- Router(config-router)#default-metric number
そのプロトコルで使われるメトリックにあわせて決定される。
RIPならホップ数、OSPFなら帯域コストなど、だな。
なるほど。
うむ。
今回はこれぐらいにしておこう。
あら? はやいですね。
うむ、次の話は長めになりそうなのでな。
別の回にしてまとめて話そう。ではまた次回。
はい。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- コア
-
[Core]
芯、中心。
- エッジ
-
[Edge]
端、へり。
- BGPをコア
- BGPをコアプロトコルとした場合、matchキーワードがなければ再配布されません。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- メインとして使われる側をコア、もう一方をエッジという。
- コアはOSPF、EIGRPなどが多い。
- OSPFへの再配布には外部タイプ1(E1)、外部タイプ2(E2)の指定が必要。
- OSPFへの再配送でsubnetsキーワードがないと、サブネットを配送しない。
- OSPFをエッジにするばあい、internal、externalの指定が必要。
- EIGRPは自動再配送機能がある。