三ラウンド・システム 竹蓋幸生

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はじめに システムの構造 システム使用の効果 システムの拡張

システムの構造

システムの具体的な目標
 実用のコミュニケーション能力といっても、それだけでは抽象的であまり明確な目標にならない。そこで、我々は客観的な目標として、我が国の多くの企業がそのスコアを何らかの形で使用していると言われる「TOEICのスコア」で800〜900、米国の多くの大学・大学院が外国人学生の留学に際して要求すると言われる「TOEFL-PBTのスコア」で580〜600程度をクリアすることを実用のコミュニケーション能力と考えることとした。

 もちろんこの目標レベルの達成は、TOEICやTOEFLの試験対策をした結果ではなく、語彙力を除き、大学生、社会人がそれぞれに必要と考えるジャンルの英語の学習を3Rに基づいて学習した結果で評価されなくてはならないと考えた。


システム科学の考え方
 TOEICで800〜900、TOEFLで580〜600の取得と言っても、それは「言うは易く、行うに難い」ことである。なぜならば、世界最低に近いと言われる現状の平均スコアも500(TOEFL-PBT)前後で決して高くないが、出発点とも言える今日の大学生の平均スコアはそれよりもはるかに低く、360前後だからである。

 そこでその到達の困難な目標にどのように到達させるかであるが、まずは人間の持っている大きな学習力(潜在力)を余すところなく引き出すことが必要と考えた。それにはまず、教材とする言語素材の収集に際して、学習者の「ニーズ」と「興味」に合ったものを選ぶよう留意した。ニーズや興味は学習への「動機づけ」に大きな力となるからである。(注:「火事場の馬鹿力」、「好きこそものの上手なれ」)

 しかし、ここにも大きな問題がある。それは、学習者の「ニーズ」と「興味」にあった教材を選定すると、それがどのレベルの学習者にも、伝統的指導法ではとても扱えない、難しすぎる素材になってしまうことである。そこで、我々はシステム科学の手法を導入して、難しい素材を何とかして易しく学ばせることはできないかと考えた。ここではシステム化すべき要素として、学習心理学の知見が考えられたわけであるが、我々はこれまでバラバラにその導入が試みられてきた「古典的学習理論」、「オペラント学習理論」、それに「認知理論」の知見、さらには「分散学習」の考え方を、「システム科学」の考え方の導入により、ひとつのシステム(3R)にまとめて活用できる構造を作り出すことにしたのである。

 一般に、システムとは「要素の最適な組み合わせにより、目標をもっとも効果的に達成できるよう構築されるもの」であるが、このような条件を満たすために

1) 妥当な目標を設定する
2) 総合的視野に立って、目標達成に必要な要素を抜けなく収集する
(要素とは、必ずしも、それだけで目標の達成に役立つものとは限らない)
3) 収集した要素を適切に組み合わせる
4) 効果を倍増する方策を導入する
5) 副作用を抑制する方策を導入する

こと等が必要になる。

 とくに教育(学習)システムの場合は、最終目標達成の過程で

1) 学習が容易にできる
2) 学習結果がよく定着する
3) 他技能への高い転移がある
4) 学習効率が高い
5) 学習結果が総合力として実用になる
6) 学習後にさらなる学習意欲が高まる

等の下位目標の達成も求められる。そのことが最終目標の達成、効果、効率の飛躍的な向上につながるからである。外国語の学習にはあまり時間をかけられないので、とくに効率の高さは非常に重要な要因である。


三ラウンド・システムの構造
 上記のような考え方で構築された3Rの構造上の骨格は図−1に示したようなものである。

図−1 三ラウンド・システムの「骨格」と各種情報を与えるタイミング
図−1 三ラウンド・システムの「骨格」と各種情報を与えるタイミング

 3Rに基づいて図−1の方式で指導する場合、教材は3回に分けて学習されるが、長さで分割するのではなく、各回の学習目標を変えて、つまり「学習の深さ」を段々に深めていく形で全体が繰り返し学習される。

 そうすることにより各回の学習作業(タスク)に相互関係を持たせることが可能になり、各回の学習時に感じる難易度を格段に下げることが可能になるからである。

 しかも、一つの素材の3回の学習を連続的にではなく、他の教材の学習をはさんで、断続的にすることにより「分散学習」の効果も期待でき、学習結果の定着が強まることになる。

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