PICTORIAL KEY TO THE THOTH TAROT

トート・タロット図解

C∴K∴
Frater M.M.
0=0

MASTER CRIMSON KING

紅王∴野中友博


since 2010/05/26

最終更新日/2016/09/06

更新履歴

2016/09/05/『アテュ』の記述内容を更新。
2016/09/06/『ワンド』、『カップ』、『ソード』『ディスク』の記述内容を更新


序 説


 本稿、『トート・タロット図解』はアレイスター・クロウリーのデザイン、レディー・フリーダ・ハリスの筆によるトート・タロットの実践的使用解説書としての試みである。

 現在、日本語で読めるトート・タロットの解釈書は極めて少ない。アーサー・エドワード・ウェイトのライダー・タロット(ウェイト=スミス・パック)についての解釈書が、翻訳書、和書を含めてかなりの数に上るのに対して、トート・タロット(クロウリー=ハリス・パック)の実践的な占術の手引きとなる物は皆無といって良い。クロウリー自身の著作である『トートの書』は実占の手引き書というよりは、トート・タロットという素材を用いた、魔術的カバラ、タントラ、易、ジェオマンシーや数秘学などの秘教体系をまとめた秘教哲学書と呼んだ方が相応しく、つい近年になって邦訳されたマンガラ・ビルソンの『直観のタロット』はトート・タロットをカレント・ライフ・リーディングというマンガラ自身の特殊なメソッドに用いるための専門書だとも言える。それ以外では、アレキサンドリア木星王編による『タロット秘密解読』に、エテイヤのタローやゴールデン・ドーン・タロット、その他と並列して納められている他、デッキ付属のジェームズ・ワッシャーマンによるブックレット(レディー・フリーダ・ハリスの二つのエッセイとスチュワート・R・キャプランの脚注を含む)がトライアングル出版より翻訳されている程度である。

 トート・タロットはライダー・タロットと並ぶ二十世紀の二大傑作タロットであるわけだが、こと実占においてトートを用いるタロッティストはライダー・ウエイト・タロットとその系列を使用するタロッティストに比べれば圧倒的に少ない。ライダー・タロットとトート・タロットは、共に監修者であったクロウリーとウェイトの所属したゴールデン・ドーン(黄金の夜明け団)の秘教体系を出発点としているが、その秘教体系の発展のさせ方が大きく異なっているため、ウェイト系をマスターしていてもそのまま実占法をトート・タロットに反映させるのは困難である。トートを使いこなすには黄金の夜明け、ゴールデン・ドーンの秘教体系を理解する事は勿論、盛り込まれているエジプト神話やタントラ、ヨーガ、易、土占術や数秘術、魔術的カバラと占星学や錬金術の知識を駆使しなければならない。

 それらをコンパクトにまとめる形でのトート・タロットの実践的使用の手引き書は今日まで作られていない。また、カードの図柄をフルカラーで並記している解説書もないため、学習者は解釈書とカードを交互に参照しながらでなければ学習を進める事が出来ない。本稿ではその利便性を鑑みて、カードの図像と解説を並記するように配慮した。

 本稿の執筆目的は、何よりも筆者自身が実占の場でトート・タロットを使いこなすための遡及的な内省である。本来、トート・タロットに関する考察は、伝統的なマルセイユ・タロットや、ライダー・ウェイト・タロットとその系列のタロットのまとめの後に行う予定であったが、タロッティストとしての現場感覚から必要に駆られて前倒しにした物である。これまで関心を持ちながらもトート・タロットを実占に用いてこなかったタロッティストの方々や、ライダー・ウェイト系列からの移行を検討しているタロッティストにも参考にしていただければ幸いである。

 何故に筆者は実占においてトート・タロットを主要なタロットとして用いる事を考えたかと言えば、ライダー・ウェイト系列の占断に限界を感じ始めたからだ。ライダー・ウェイト系列のタロットは、小アルカナの総絵札化によって大変に占術として意味をとりやすいタロットとなっている。だが、小アルカナが具体的かつ等身大に過ぎる故に、占断において解釈の幅を大きく狭めてしまうという限界に苛立つようになったのだ。

 実践的占断に使用するタロットとして、ライダー・ウェイト系列に対して、トート・タロットは以下の点について優れている。

 第一に、ゴールデン・ドーンの秘教体系の根幹をなしている生命の樹の万物照応に応じたヘブライ文字や占星学記号の配置が、大アルカナ、小アルカナの双方に描き込まれており、生命の樹を整理ツールとして使う黄金の夜明け流のタロット解釈において絶対的に有利である。ウェイトもライダー・タロットの中に、巧に生命の樹の象徴を隠しているが、それは不徹底な物に終わっている。

 第二には、上記の事項に関連するが、小アルカナのスモール・カードを人物を描かない数札でありながら魔術的象徴と秘教的な配置を盛り込み、それぞれのエレメントの根源であるエースのカードを除けばキーワードとなるタイトルが付けられている事である。ウエイト版と比較すれば明らかだが、ウェイト版もその秘教的な前提を持って作画されているにもかかわらず、解釈の幅を狭めてしまった事はあきらかである。生命の樹のセフィラーとスモール・カードの対応が頭に入っていれば、占断の幅は大きく広がる事になる。

 第三に、小アルカナのコートカードの男女比が二対二になって、展開における人物札の扱いがより現代に即した物に出来ると言う事である。伝統的タロット、及びライダー・ウェイト系列において、王、女王、騎士、小姓であったカードは、ゴールデン・ドーンの秘教的タロットによって、王、女王、王子、王女に配置され直された。トートではこれが騎士、女王、王子、王女となる。コートカードはそれぞれがエレメンツの中の更に四つのエレメンツを象徴する。

 今日、ゴールデン・ドーンの秘教体系に基づくゴールデン・ドーン・タロットはイスラエル・リガルディーとロバート・ウォンによって公開されており、その系列に属する新作タロットも続々と作られてはいるが、GD系の秘教体系を最初に公にしたのがこのトート・タロットだったと言える。トート・タロットを精査する事で、ライダー・ウェイト系列のタロットの神髄もまた再認識する事が出来るであろう。

 トート・タロットは単にゴールデン・ドーンの秘教体系を反映させたタロットではない。クロウリーのテレマ思想、及び、守護天使エイワスの啓示による『法の書』の格言に基づき、神人合一のホルスのアイオーンのために新たに創造されたタロットである。ホルスのアイオーンの罪や罰という概念からの解放を前提とした新しいタロットである。故に大アルカナ(アテュ)の中の死神、悪魔、塔、月といったカードも必ずしも凶札ではない。

 もう一つ、ライダー・ウェイト系列を使用してきたタロッティストに補完するとすれば、GDを始めとする魔術結社のタロット解釈は正位置と逆位置をとらない。その代わりに隣接するカードとの相生相克による品位をコンビネーション・リーディングとして用いる。この事については占法の項で詳述する。筆者自身はゴールデン・ドーンの秘教体系によってタロット・リーディングを行うので、ライダー・ウェイト系列のタロットを使うときも逆位置はとらない。生命の樹との照応やイメジャライズの重要性を説くなら尚更逆位置は採用すべきでないというのが筆者のスタンスである。

 いずれにしろ、このトートやライダー・ウェイト系列を含めて、ゴールデン・ドーンの秘教体系に基づくタロットは生命の樹の万物照応を基礎においている。故に生命の樹と魔術的カバラの研究は至上命題である。黄金の夜明け流の生命の樹の照応法を記す。


黄金の夜明け団教理による生命の樹


 トート・タロットにおいてはコクマー=ティファレトの小径(Path)にある「皇帝」と、ネツァク=イエゾドを結ぶ小径にある「星」が入れ替わる。

 それぞれの球(セフィラー)にはケテルから順に四枚の小アルカナの数札が対応する他、ケテルには全てのアティユ(大アルカナ)、コクマーには全ての騎士と全てのワンド、ビナーには全ての女王と全てのカップ、ティファレトには全ての王子と全てのソード、マルクとには全ての王女と全てのディスクが対応する。

1.アテュ

2.ワンド

3.カップ

4.ソード

5.ディスク

6.メソッド

後 記

(付・参考文献一覧)


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