図書紹介:『元気が出る介護術』
- 著者:三好春樹
- 発行所:滑笏g書店、ページ数:185ページ、出版年月:2002年1月11日、定価:700円
著者は、特別擁護老人ホームで老人介護の仕事に携わった後、リハビリテーション大学校に入学、理学療養士(PT)の資格
を取得して、再び特別養護老人ホームで理学療養士としての勤務、その後「生活とリハビリ研究所」を主宰し、セミナー、講演、著作
活動など幅広く活躍中の老人介護の専門家である。
内容は、エッセイ風に書かれた11の話からなり、気楽に読めるが、その一つ一つは著者の実際の現場での老人との関わりの中
で得られた現場主義、現実主義で貫かれており、介護の本質を語っている。具体的には、介護とは何か、介護に携わる家族等の心構え、
患者の特徴、介護の現場で働く理学療養士(PT)/作業療法士(OT)/栄養管理士/寮母などの役割、看護と介護の違いなどが11の話
の中で分かり易く語られている。
私もアルツハイマー病の母親の介護をする身であるが、特に得心がいき、勇気づけられたいくつかの言葉を以下に紹介する。
- 介護とは一人一人の老化、障害、性格、生活習慣に見合った生活作りをすることである。
- 介護は、あきらめから始まる。問題点を良くすることをあきらめるのが、介護出発点なのだ。そのかわり、問題点ではなくて良い点
をみつける。そしてその良い点を生活の中に引き出すための条件作りをするのである。
- 介護は、病気の看護と違って、期限はないのだ。生活を犠牲にするのではなくて、むしろ生活の一部にしてしまう、できたら、
生活の楽しみにしてしまうくらいでなくてはいけない。そうでないと長続きしないからだ。
- 医療や看護は生命を助けることを第一とする。それに対して介護では、どんな生き方に意味があるのか、と問われる世界なのだ。
何が幸せなのかと言いかえてもいい。
- “病院のあたりまえ”で介護をやると、老人は寝たきりになるだけだ。“生活のあたりまえ”が、元気が出る介護の前提なのである。
- よい介護は自分の頭で考えよ
[コメント]
著者は徹底した現場主義を貫いており、その経験から正しくないと思うことは、国の政策であっても歯に衣着せずに批判している。
著者は、「老人介護は創造力と想像力を駆使する面白い仕事だ」と言っている通り、老人介護に真正面から取り組んでおり、読む人
を元気づける。本書は、老人介護に関わるすべての人に役に立つ内容であると思う。
(2002年9月2日)
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