介護レポート:2002年11月度
 「母は私たちが行っていることをすべて理解していた!」


今月、母の調子は心も身体もとても良く、安定していました。元気なせいか、一人で外に出て行ったことも2回程度ありましたが、直ぐに追い かけて大事には至りませんでした。会話もいろいろと楽しくできましたが、その中で木曜日のヘルパーさんとの会話が一番印象に 残りましたので以下に紹介します。

木曜日には朝9時から2時間、中年の女性のヘルパさんが家に来てくれます。そのヘルパさんは非常に熱心に面倒をみてくれる方で、 母に絵を描くことを勧めてくれた方です。最近、母は絵が描けなくなったようなので音楽を一緒に聴いたり、おしゃべりをしてくれ ます。時々その日に母と会話したことをメモに残してくれるのですが、今月も21日に会話した内容をメモに残してくれました。 その日、母は調子が良かったせいかよくしゃべったようです。母は自分の思いを一生懸命ヘルパさんに伝えようとお話しています。 私たち身内にはしゃべったことがないことをしゃべっており、私たちが行っているすべてを理解していることが分かり、涙が出てきました。 参考にそのメモをそのまま以下に載せます。表現的におかしなところやダブっているところがありますが、母なりに一生懸命自分の 心を伝えようとしているのだと思いますので、修正せずにそのまま載せます。

母がヘルパさんに語ったこと
私みたいに幸せものはいない。最高の幸せだ。5人の子供が相談して来てくれる。これは私の想像だけど、口には出さないけど相談してかわりばんこに来てくれる。私が元気かどうか、ちょっとのぞきに来る。年をとるとこんなに心配かける。子供たちがのぞいてくれることで私の心がぱっと元気になる。
私一人になったから皆で相談して、皆が心の中で心配してくれているのが分かる。だから元気そのものでうれしい。心が通じてくる。私がのん気でいられるのは皆がいるから。
ありがたく暮らしているのはそんなにいないと思う。今日も来てくれたと喜んでいる。子供が来ないときは、この人(ヘルパさん)が来てくれる。ありがたく何と言っていいか分からない。
びっくりするくらいのん気な暮らしをしている。子供は皆暇な人はいない。この人が来てくれるときは子供たちは誰ものぞいてくれない。
私は心配することは何もない。こんなに幸せなのは日本中にいない。ありがたい人間だ。こんなにうれしいことをこの人にしゃべりたい。だからいつでも元気。うれしくてだまっていられない。子供たちには口に出して言わないけど。こんなにありがたい人間は世界中探してもいない。最高の幸せ。
皆が陰で心配していてくれる。5人さまさまだ。皆が元気でいるのが一番うれしい。年をとったら寂しい気持ちになると思ったら、心が自然にありがたい気持ちになっている。最高に運のいい人間。全然困っていない。子供たちはいつも私のこと、頭から離れてない。私に安心させとければ良いと子供たちは思っている。
心と身体が元気

息子の私のことも分からず、「あなた様と私はどんな関係でしたっけ?」と言っている母が、上記のような事情をすべて理解していた とは、びっくりし、奇跡的に思いました。人間の能力は我々の想像を超えているのかも知れません。もしかすると潜在意識 ではすべてを理解していて、通常はそれが顕在意識に取り出せないが、それがたまたま調子が良いときに顕在化してきたのではないか、 と感じさせます。誠心誠意の心はどこかで通じていることを信じて、これからも手を抜かず介護していこうと思います。

○母との会話

1.NHKテレビの週間子供ニュースを見て、
「最近はテレビに出る人が変わったね。昔の人はもう年をとったせいか出ていないね。代わりに若い人(子供)が出ているね。」
「これは子供向け番組だから子供が出ているのだよ。」
「そうかい。最近の子供はしっかりしているね。私が子供のときは、親の陰に隠れていたよ。」
 
2.次の会話は何回も行っており、ちょっと心が痛む会話である。
「(幸一は)会社までどの位時間がかかるの?」
「1時間ちょっとだよ。」(私はもう定年になって働いていないと何回言っても覚えていないのである。)
「私は一人で暮らしているから2階は空いているよ。うまく使えないかい?(つまり、引っ越して来ないか、と暗に言っているのである。)」
「奥さんと子供がいるから無理だよ。お母ちゃんが僕の家に来ないかい?」
「嫌だ。ここが一番いいから、絶対に動かないよ。」
(第2版 2002年12月9日)

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