介護レポート:2003年10月度
「札幌の姉が来てくれた!」

今月は父の13回忌の法事を行ったため、札幌の姉が法事と母の介護を兼ねて10月2日に来てくれました。 姉が来たときに母が少しでも姉のことが分かるように事前にアルバムを見せたり、話題にしたりしておきました。しかし、 姉が入ってきたときに「この人誰だか分かる?」と聞いてみると、「分からない」という答えでした。「長女だよ」と本人が言うと 「今、声を聞いて初めて分かった!」とうれしそうに抱きつきました。頭の中にはちゃんと姉の記憶が残っていたのです。

法事は10月5日にいつもの延命寺というお寺で執り行いました。出席者は私たち子供5人とその配偶者、親戚1人そして母の合計11人でした。 お寺は母の家から徒歩10分弱のところにあり、一旦母の家に全員集まってから出かけました。母の移動を車椅子にするか、 車にするか迷ったのですが、車で5分程度だから大丈夫と思い、弟の嫁さん運転の車にしました。ところが、3分程度乗ったところで母は突然、 頭を抱えて、「頭が痛い。このまま乗っていると死んでしまう。直ぐ降ろして」と言い出しました。もう直ぐでしたので、手を握って「もう直ぐだから頑張って 」などと言っているうちにお寺の境内につきました。母は車から降りると境内の植木のそばに座り込んでしまい、動けなくなりました。 弟の嫁さんには折り返し家に戻ってもらい、車椅子を取ってきてもらいました。 しばらく休んだ後、車いすに乗せて何とか仏間に入り着席しました。住職にも母の体調が良くないことを告げて早めに終わらせていただくようにお願いしました。 お経が始まっても母は何のことか分からない様子でしたが、じっとお経の本を見ながら聞いていました。お焼香は車椅子のまま姉が付き添って無事行いました。 住職の法話も終わり、全員ほっとして男連中が母を車椅子ごと庭へ運び出しました。

その後は、三鷹駅南口近くの「桜庵」という料理屋で食事をすることにしていました。予定では母の移動は車にしていましたが、 無理そうなので急遽車椅子に乗せて押していくことにしました。徒歩20分位かかるのですが、押し役には姉が買って出てくれました。 料理屋に全員揃い着席したときには母は非常に疲れた様子でしたが、料理がくると元気になりました。このお店は創作和食が特徴と聞いていましたが、 噂にたがわずとてもおいしかったです。母の口は確かで本物の料理は分かるようで、非常においしそうに全品も残さず食べました。 母を中心にわいわいがやがや楽しい時間を過ごし、13回忌も無事終わりました。

姉は母の介護を1週間行い、帰っていきました。当初姉は2週間母を見ると言ってきかなかったのですが、24時間2週間一人で介護するのは 介護する側も介護される側も疲れてしまいとても無理と思いましたので、妹たちと説得して1週間にしてもらったのです。 東京近辺組はみんなで交代しているから続いているのです。10月8日に姉が札幌に帰り、再び元の介護パターンに戻りました。

9月から目立つようになった母の徘徊は下表から分かるように10月後半から減ってきたように思います。理由は分からないのですが、 考えられる理由の一つは、私たちの対応の仕方が慣れてきたことがあると思います。徘徊が増えてきた当初は、こちらもびっくりして何とか出て行くのを止める方向で 対応していました。しかし、よくよく観察してみるとそんなにびっくりすることではないことが分かってきたので、止めることはやめ、付き添う ことにしたのです。これが母の精神状態に良い影響を与えた可能性はあります。

日付徘徊時間徘徊時間
合計(分)
10/1(水)  
10/2(木)@12:45〜13:05、A16:30〜18:30140
10/3(金)@13:45〜14:05、A20:00〜20:25、B22:00〜22:10、C0:00〜0:0358
10/4(土)@17:00〜17:15、A17:15〜17:3030
10/5(日)@9:45〜10:50、A19:50〜20:2095
10/6(月)@13:25〜13:4520
10/7(火)@12:40〜13:05、A13:25〜13:55、B15:10〜15:3075
10/8(水)@14:30〜15:0030
10/9(木)@15:50〜16:1020
10/10(金)@14:00〜14:40、A18:50〜19:1565
10/11(土)  
10/12(日)@13:20〜13:35、A13:50〜14:0025
10/13(月)@9:55〜10:1015
10/14(火)  
10/15(水)@13:30〜14:3060
10/16(木)  
10/17(金)  
10/18(土)  
10/19(日)@9:05〜9:105
10/20(月)  
10/21(火)@9:00〜9:4545
10/22(水)@20:50〜21:0515
10/23(木)@13:30〜13:50、A9:15〜9:2025
10/24(金)@14:20〜15:1050
10/25(土)  
10/26(日)  
10/27(月)  
10/28(火)  
10/29(水)  
10/30(木)@13:40〜14:15、A14:20〜14:30、B14:40〜15:1075
10/31(金)  

○父の13回忌で食事中の母(2003年10月5日撮影)

○母との会話
母は時々、何かに取り憑かれたような状態になり、他の人の言うことは全く聞かなくなり、介護している人に「自分の家へ帰れ」 などの暴言をはきます。この暴言は、私と弟より妹たちの方が多いと感じていました。その理由が分からなかったのですが、 そのヒントになる会話が三女が介護当番のときに行われたようです。下記は妹(三女)が経験した会話をメモにしてくれたものです。

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10月25日、朝起きた直後、三女に向かって、
「お母さんがいないと家が大変だからもう帰っていいよ。私は一人で大丈夫だから。
安心しながら長い間暮らさせてもらって有難うございました。私のような幸福な者はいないです。 毎日毎日一生懸命になって私のために、嬉しかったでーす。」
と頭を下げたのです。介護をしている皆に向けての感謝の気持ちを表したかったのだと思います。
この言葉から、病気モードに入ったときの、「家に帰ってくれ」と暴言をはく背景には、「自分の家庭 を大切にしなさい」という昔からの信念が言わせている言葉であると確信しました。そして、二人は 涙を浮かべあって抱き合いました。
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(2003年11月9日)

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