○母の心の悲痛な叫び
母は精神的に落ち込んだときに、さらに落ち込んで行き、何を言っても受け付けなくなることがあります。
まるで、母の意識がブラックホールに吸い込まれて、脳の中の記憶回路と全くつながらなくなった
ような感じがします。そのようなときに母は次のような独り言をつぶやいています。
「何が何だか分からなくなった。自分がどうしてここにいるのか、何のために生きているのか、ここがどこか。
ただ生きているだけなら死んだのと同じだ。誰に聞いてもただ笑っているだけで教えてくれない。」
このような状態に落ち込んだときには、どんなに説明して上げても、慰めて上げても、全く無駄です。
非常に可哀想で辛いのですが、じっと見守っているしかありません。しかし、そのような状態から引っ張り出す
準備として、母が関心を持ちそうな、母の自叙伝、母の画集、家族の年表、作業中の編物などを何となく
母のそばに置いておきます。
そうすると30分位経った頃から少しずつ精神的に上向きになり、目に入ったものに
目をやります。そのタイミングを捉えて、関心を持ったものをネタに話し掛けます。例えば、「私の人生」
という母の自叙伝に関心を持った場合、最初の1ページ目から写真を中心に説明してあげます。最初はいくら
説明しても「分からない」の連発ですが、そのうちに何かひとつ思い出します。例えば、父親の写真
のときに「お父さんはビール好きだった?」と聞いてみます。そうすると「好きだった」と答えたとします。
ひとつ思い出すとそれがきっかけで意識と記憶回路のつながりが広がっていきます。もちろん、アルツハイマー病
ですから、いつもの状態以上にはなりませんが、少なくともブラックホールに吸い込まれたような状態
からは抜け出してきます。今のところは以上のやり方が成功しています。
○肉野菜炒めを楽しそうに作っている母
(2003年12月22日撮影)
私が隣にいて材料を手渡ししたり、指示を一つ一つ出しています。
(2003年12月22日 第2版2004年1月13日)
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