介護レポート:2003年7月度
「徘徊が増えてきた」

今月も母の体調は良かったです。しかし、今月は外を1時間以上歩くことが数回ありました。 一般的には、これを徘徊というのだと思います。徘徊というと、目的もなく長時間歩き回るイメージがあったのですが、 母を観察すると、外へ行く目的は母にとっては必ずあります。しかし、その目的は現実的なものと、非現実的なものと混ざり合っています。 母の場合の目的は下記のようなものです。

  • 何が何だか分からなくなったからお母さんのところに行って聞いてくる。
     (お母さんはずっと以前に亡くなっている。)
  • 昔の家(多分、自分が育った北海道室蘭の家)がすぐそばにあるから見てくる。
  • 編み物の毛糸が無くなったから買ってくる。
  • 最近、どんな編み物があるか見てくる。
  • 働き口を探してくる。
  • 結婚相手を探しに行く。
  • からだのために散歩に行ってくる。
  • 今、行っている仕事を断ってくる。(デイサービスを仕事と思っているのです。)
  • お子さんに上げるものを買ってくる。(私の子供へのお土産を気にしているのです。)
以上の目的の中には何らおかしくないものもありますが、困るのは出かけている途中でその目的を忘れ、歩き続けることです。 そして帰り道が分からなくなり、通りすがりの人に、「室蘭の駅はどちらですか?」とか、「(室蘭の)御前水はどちらですか?」とか、 「室裁女(室蘭裁縫女学校)はどちらですか?」とか聞いています。現在の住所は出てこないのです。全ての場合、そのとき介護当番 の妹や女房や私、時間帯によってはヘルパさん(まだそのようなケースはないのですが)が後ろから見え隠れで付いていっています。 大体、そういう場合、母の頭の中は、「他人の言うことを聞かない自分中心モード」になっていますから、 「一緒に帰ろう」と声をかけても全く言うことを聞きません。母に声をかけられた通りすがりの人に目配せして、「あっちと言ってください。」 と母の家の方を指差してもらうのが精一杯です。

今月、一番長かった、2時間以上も歩き回った例を以下に紹介します。
それは今月下旬の午後、私の女房が介護当番のときでした。午後3時頃から落ち着かなくなり、外に出て行きました。 1時間くらい近所を歩き回り、母の家の前まで来ても家に入らず、また歩き回ったようです。1時間くらいしてやっと家に入ったと思ったら 今度は大きな財布を持ってまた出かけました。そして近所の八百屋さんでバナナを買い、財布から千円札を出して払おうとしたら、 お店の人が気を利かせて「小銭があるようですから、130円もらいますね」と言って財布から130円取ってくれました。 母はバナナを買ってからまた歩き始めて、自分の家が分からなくなり、通りすがりの人に「室蘭の駅はどちらですか?」などと聞きました。 そしてまた1時間くらい歩き続けました。その間中、私の女房は後ろから付いて歩いたのですが、話しかけても全く言うことを聞かなかったようです。 しかし、最後には母も疲れてきたようなので、女房は母の先回りをして、母とばったり会ったふりをして、「あら、お買い物ですか? 同じ方向ですから一緒に帰りましょう。」というと母はついてきたようです。

私は午後5時ころ女房と交代するために母の家に着いたのですが、家には誰もいません。多分、外を歩いているのだろうと思い、 心当たりを探しましたが、見つかりません。あきらめて家で待つしかないと思い、家の前まで来ましたら、向こうから母と女房が歩いて来ました。母は片手に袋に入ったバナナと、何故か湯上げタオルにくるんだ大きな財布をしっかり抱えていました。 私は、「買い物に行っていたの?ちょうど会ってよかったね。家へ入ろう。」と言うと「ここで会うとは偶然だね。」と言いながら 家に入っていきました。母も女房も元気だったので安心しました。
1時間くらい歩き回ることは、2人の妹の当番の時にも何回かあったようです。私の場合はまだありません。

このような行動をとるのは、アルハイマー病の特有の症状ですから、仕方がないとして、回数を減らす工夫はないものかと 思案中です。

○母との会話

母は今でも表現力が非常に豊富です。特に食べ物のほめ方には感心します。
以下にいくつかを紹介します。
 
1.「あっ、すっごくおいしい!」
2.「ほー、すごいや。おいしくて、おいしくて!」
3.「あんまりおいしくて、不思議で、不思議で」
4.「これは体にいいだけでなく、元気になってくる。」
5.「これは砂糖を使っているのではなく、自然の甘みだね。体にいいね。」
6.「びっくりした。こんなにおいしのはもう食べられないかも知れない。」
7.「あんまりおいしくて歌を歌いたくなる。」
8.「おいしくておいしくて拍手したくなる。」
9.「あまりのおいしさに黙っていられない。」
10.「ちょっと食べただけで口の中が全部おいしくなる。」
11.「おいしさがお腹から背中へ行き、体中がおいしくなったよ。」
(2003年8月18日)
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